第71話 楽園崩壊
結局、最終ミッションも単純なタワーディフェンスであった。最後の防衛箇所は『禁断の果実』が生る樹であった。リリス曰くレプリカとのことだか。
『エデンの園』のダンジョンマスターはぬいとまっくよは追放する気なのだろう。姿を表すこともない。そのため2匹は苦労をする事なく『禁断の果実』が生る樹の防衛に成功する。しかしミッションは終わっていない。襲撃してきたモンスターの内1匹だけをまっくよの『小常闇』により眠らせている状況である。このモンスターを倒したらミッションクリアとなり『禁断の果実』を得ることで、このダンジョンから追放されるだろう。
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しかしそれを分かっているぬいとまっくよは計画のため敢えてミッションをクリアしないまま、リリスから教えてもらった情報を元に考えた計画を実行する。
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ぬいは、各エリアにばら蒔いておいた胞子に命令を飛ばす。それによりダンジョン内に一斉に『菌ノ庫』が生える。そして生えてきた『菌ノ庫』は命令に従い場所に応じた種類の茸を繁殖させる。
ぬいとまっくよが計画を立てているとき、リリスはこう言っていた。
【ダンジョンは魔力を使って稼働しています。というよりもダンジョンの核を動かすのに魔力が必要です。ダンジョンの修復などの作業は、とてもダンジョンマスターの魔力だけでは足りないので、そういった非常事態に備え各ダンジョンがそれぞれの方法で魔力を確保しています。入場してくる探索者などから魔力を徴収するのが一番オーソドックスですね】
つまりは『エデンの園』が蓄えている魔力を使いきらせれば、ダンジョンは修復されないと考えられる。そして『菌ノ庫』が繁殖させる茸にはそれを行うのに適した茸が存在する。それが『魔力喰らい』である。
ぬいの『茸師』を使い今回生えてきている『菌ノ庫』は『魔力喰らい』を異常に繁殖させれる個体ばかりである。そのため、ぬいの命令からすぐにダンジョン内は『魔力喰らい』とそれを指揮する『菌ノ庫』で埋め尽くされる。
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ダンジョンマスターは、異常繁殖した『魔力喰らい』を何とかしたいだろう。しかしダンジョンを修復する機能は現在使えない。これもリリスから教わったことである
【ダンジョンの機能により、ダンジョン外の生物を殺すことは出来ません】
修復するということは、現在地面や林檎の樹に生え散らかしている茸を殺すことになる。
ではモンスターを出撃させ、茸狩りをさせれば良いかと言えばそれも難しい。何故なら『エデンの園』はそもそも強いモンスターは出ない用に設計されている。低ランクのモンスターが『菌ノ庫』が指揮する『魔力喰らい』の群れに飛び込んだとして宿主にされて終わりである。
そのためダンジョンマスターが取れる手段は限られてくる。
【我の、我の楽園に不埒なモノを持ち込んだのはお前らか。これは許される――】
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【ことで...は、ぐぅ...】
その1つが元凶である2匹を排除する事であった。しかし安全な策は眠らされていたモンスターを殺し、ぬいたちをミッションクリアとし何らかの手段で『禁断の果実』を採取させ追放することであっただろう。
しかしダンジョンが茸に埋め尽くされるという異常事態に狡猾な蛇も思わず、本来の自分を見失った。時間の掛かる方法ではなく、手っ取り早く解決できる方法を選択してしまったのだ。
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その末路がこれであった
―――――――――――――――
蒼唯から情報を受け取った星蘭は直ぐに記者会見を開き、『能力上昇林檎』の危険性について発表した。
「直ぐにでも『エデンの園』を封鎖し、『能力上昇林檎』を食べてしまった人たちの状態を確認すべきです」
「その解析結果は信頼できるんでしょうか? 探索者協会などの発表では『能力上昇林檎』は『鑑定』などが通りにくいとの事でしたが」
「信頼はできます。これを解析したのはあの『蒼の錬金術師』である齋藤蒼唯さんですので」
「なんと、それは――」
蒼唯の名前に記者たちが食いついた瞬間、会場内の携帯電話が一斉に鳴り出す。記者たちがそれぞれ電話に出てしまうため会見は一時的に中断する。
何か緊急事態が発生したのかと星蘭も困惑している中、電話を終えた記者が手を上げる。
「どうぞ」
「月刊ダンジョンの新井です。現在『エデンの園』において、大量の茸がダンジョン内を埋め尽くしているとの一報が入っていますが、これについて小鳥遊さんは何かご存知でしょうか」
「...はぁ? えーと、茸?」
「はい、茸がダンジョンを占拠しているとの事です。先ほど一刻も早く『エデンの園』を封鎖すべきとの発言から考えますと、小鳥遊さんも何か関与しているのでは無いんですか?」
「いや、ほんとに知りませんよ! 茸? きのこ...あ!」
「何か心当たりがあるんですね! 答えてください!」
記者会見中に突如起こった異常事態によって星蘭の記者会見は予定よりも倍以上長引くこととなるのだった。
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