第70話 報告

 蒼唯は林檎の解析結果を星蘭に報告した。ただ、蒼唯が知っている『エデンの園』の情報を全て話すとリリスという有識者の存在から説明しなくてはいけないため、今回は林檎に付与されている『成長阻害』と『思考誘導』のみの報告である。


蒼唯:「ということで、確かに能力上昇はあったですけど、それに見合うアイテムとは思えんですね」


星蘭:「そっか。やっぱり裏があったか...それにしてもこの『能力上昇林檎』は『鑑定』が通りにくくて能力上昇以外の効能が判明してなかったんだけど、解析できたんだ」


蒼唯:「そうだったですか。まあ調子が良かったです」


 星蘭が蒼唯に解析を依頼するなど何かあるとは思っていたが、そういう理由だったようだ。

 蒼唯の解析方法は一般的なスキルを用いたモノではなく、『錬金術』を使って性能や付与されたスキルから探る方法のためもしかしたら出来るかも知れないと考えたらしい。『着せ替え部屋』バフもあった蒼唯は、特に解析しにくさは感じなかったが、普段の蒼唯なら難しかったかもしれない。


星蘭:「うん、分かった。この情報を元に色々と動いてみる。本当にありがとう!」


蒼唯:「気にしないでくれです」


 少し慌てた様子の星蘭とのメッセージを終えた蒼唯。この情報を星蘭がどのように活用するか分からないが『エデンの園』の入場規制が開始される可能性もある。となるとタイミング的にはギリギリだったかもしれない。


「ぬいとまっくよは今、どのくらい進んでいるですかね?」

【そうですね。話に聞く難易度だと御二方の実力なら楽に進めているとは思いますが】

「...ぬいが拾い食いしてないかは心配ですけど、まっくよがいるですし大丈夫ですよね」

【あの程度の林檎なら御二方の『食トレ』で無効化できるとは思いますが】

「まあそれはそうかもですけど」


 少し前に自身のダンジョンを消滅寸前まで食べられた過去のあるリリスは、『食トレ』の凄さを実感している。彼女は逆に拾い食いした結果、また訳の分からないスキルが生える可能性を危惧しているくらいであった。

 

―――――――――――――――


 リリスは、ぬいたちの拾い食いによるトンデモ強化を心配している頃、2匹は『エデンの園』を悠々と攻略していた。

 『エデンの園』のミッションはテーマダンジョンとしてはかなり単純なモノで『能力上昇林檎』などの果実が生っている樹を、襲撃してくるモンスターから守るタワーディフェンス的なモノである。モンスターが樹に到達した時点でミッション失敗でダンジョンから強制帰還されるシステムであるが、モンスター自体弱めに設定されており、このダンジョンの裏を知っていれば、報酬を受け取らせたいのだと分かる難易度になっていた。


ぬいぬいよわいよわい!」

まくだね~」

ぬいまいたぬいいこ!」


 ただタワーディフェンスというミッションの性質上、2匹という人数はかなり不利である。いくら2匹が強くともまっくよの『小常闇』が無ければ難しかったかもしれない。

 しかし襲撃役のモンスターたちが、出現した直後に次々と眠っていく様子はシュールである。


まくまくいつはやすの~」

ぬいさいご!」

まっくそっか~」


 相性の良さもありつつ、2匹は計画通り仕込みをしつつダンジョンの奥へ進んでいくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る