第67話 教えてリリス先生
ぬいとまっくよにも『エデンの園』の説明をする。ぬいが頑張れば林檎の樹に茸を生やして枯らすことは出来るように思える。しかし懸念事項がある。ダンジョンはリセットを繰り返すらしい。ダンジョンボスを倒しても復活するのと同じである。
つまり枯らしたとしてもまた生えてくるのでは意味がない。永久に枯らす、若しくはそれに準ずる方法がなければ実行できないだろう。
とはいえダンジョン素人の蒼唯と『ぬいぐるみ』2匹で考えても良い答えは出ない。
「うーんです。何処かにダンジョンに詳しい人が入れば...」
「ぬーい」
「まく..まく!」
そんな中、一番交遊関係が狭い筈のまっくよが心当たりのある人物を思い付く。
「ま~く!」
その人物を呼び出すまっくよ。3人の目の前には妖艶な美女が立っていた。その美女はぬいも見覚えがあった。先日まっくよが食い荒らしたダンジョンの主。『夢魔姫』リリスであった。
【あら? 貴女が私を呼び出したのかしら? 可愛いお嬢さん?】
「いや、違うです。呼んだのはそっちです」
【そっち...え、あ、まっくよ様! もしや、またお菓子代わりの夢をこ所望ですか?】
「まく~、まく!」
蒼唯から視線を外し、まっくよが目には入った瞬間、態度が一変するリリス。彼女をまっくよが呼び出すのは今回が初めてではない。『悪夢の国』の一件以降、夢を食べれるようになったまっくよは、リリスを呼び出しお菓子代わりに夢を出させていたのだ。
しかし今回はそれとは無関係である。
【え、聞きたいことでございますか。勿論でございます。まっくよ様のご質問であれば何なりと】
「まくまく」
【はぁ、そちらのお嬢さんが...えーと、失礼ですがまっくよ様とのご関係は...】
まっくよとの関係を聞かれた蒼唯は、少し返答を考えた。リリスのまっくよへの態度が普通ではなかったためだ。しかしここで誤魔化しても変わらないのど素直に答えることにした。
「まっくよですか。私のペットですね」
【......これはこれは! 知らなかったとはいえ大変ご無礼な態度を取ってしまい、誠に申し訳ありませんでした! まっくよ様には日頃からお世話になっております。私、『夢魔姫』リリスと申します。以後お見知り置きを】
「そうですか。私は蒼唯です。聞きたいことがあるです」
【蒼唯様ですか。このリリスに何でもお聞きくださいませ!】
やはり態度が豹変するリリス。蒼唯の機嫌1つでリリスの生死が決まるのだから当たり前だが。
そんなリリスにざっくりとした状況を聞いてみると、かなり渋い顔をされる。
【ご推測の通り、ただダンジョン内の樹を枯らしても意味は無いですね。ダンジョンの心臓部である核を潰さなければ、ダンジョンマスターでさえ復活します】
「やっぱりですか」
【しかも『エデンの園』ですよね。あの性悪林檎を食べた者は思考が歪められていきます。あれの中毒者になったら『エデンの園』での暮らしを望むように洗脳されますね】
何不自由なく、何の疑問ももたずアダムとイブが暮らしていたように、中毒状態の探索者は何も不思議に思わずダンジョン内で暮らすことになるとリリスは語る。
「それはダンジョンをクリアしても駄目です?」
【そうなります。そこら辺はダンジョンによって異なりますが、『エデンの園』のダンジョンマスターは性悪な蛇ですので】
「そうですか。となると核を探す必要があるです?」
【『エデンの園』の核ならば心当たりがございます。あのダンジョンをクリアした際の報酬は『禁断の果実』のレプリカとなっておりますが、おそらく本物の『禁断の果実』もダンジョン内にあると思われます。その果実の実る樹が核であると思われます】
「じゃあとりあえず、そこにぬいが茸を生やせば早いですかね。出来れば『エデンの園』が壊滅して、ぬいがその林檎の性質を引き継いだ茸を生やせるようになると良いですね。私的にはですが」
「ぬい!」
そんな物騒な計画を立てる蒼唯。一応知り合いが困っていたため立てた計画だが、今では林檎の樹は茸で枯れるのかという好奇心と、『能力上昇林檎』の素材的な面での興味がそれを上回っていた。
「でも『流星』も攻略するっていってたですから、失敗したらにするです」
「ぬいぬい!」
「まく!」
そんな事を話す3人を尻目にリリスは一人言を呟く。
【それにしてもあの蛇も災難ね。この人たちに目をつけられるなんて...はぁー】
その呟きは聴覚が良いぬいとまっくよには聞こえていたが、敢えてスルーされるのだった。
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