第65話 変わる業界
蒼唯はぬいたちと一緒にとある番組をテレビを視聴していた。その番組は『従魔競技会』。知り合いのペットが出場しているため珍しく探索者関連の番組を視聴していた。
【おーと、こはく選手のカウンターパンチを避け続けていた『
【作戦としては良かったんですがね。ヒットアンドアウェイはこはく選手のカウンター戦術にマッチしてましたが、やはりこはく選手の防御が固すぎました】
【ここで! レフェリーストップ!! これにより『バトルトーナメント』優勝は、こはく選手に決まったーー!】
【初戦から決勝まで全て一撃で決めています。装備に注目が行きがちですが、こはく選手の技術も光ってます】
【歴代タイ記録の3種目制覇を達成したのは『従魔競技会』初出場であり、大会の記録的にも初の従魔以外からの参加となったこはく選手! 誰がこの結果を予想したでしょうか!】
実況席ではアナウンサーと思われる人物が興奮気味に、こはくを称えていた。
「ぬいぬい!」
「まくまく!」
「そうですね。ぬいとまっくよは、こはくの活躍を予想してたですね」
それを見て更に興奮した様子のぬいたち。この前仲良くなったばかりとは思えないほど、熱心に応援していたので喜びも一際だろう。
蒼唯としては、時間が足りなかったせいもあり、装備が納得するもので無かったのが心残りである。
「もう少し時間があれば可愛さにも拘れたですけど、今回は性能を重視してしまったです。唯一、デザインに拘れたのは『
「ぬい!」
「まく~」
「まあ仕方ないです。怪獣大運動会にか弱いこはくが出るなら、性能が十分の装備があるのは前提ですし。まあ何にしろ怪我がなくて良かったです」
壊れ性能のアイテムばかり造っている蒼唯だが、戦闘は素人。自分のアイテムがどれ程の相手に通用するのか、実際に目で見て確かめることは少ないので、心配していたのだ。
テレビに元気良さそうに喜んでいるこはくが映し出される。これを見れば、心配は要らないだろう。
「さてとです。私は製作に戻るです。ぬいたちもテレビはほどほどにするですよ」
「ぬいー」
「まく~」
蒼唯は作業部屋に戻っていくのだった。
―――――――――――――――
『従魔競技会』の優勝インタビューで、こはくが使っていた装備は『蒼の錬金術師』である蒼唯が製作したモノであることが発覚した。その前から多くの人物が察してはいたが、インタビューにより世間がそれを認知した。
ジョブを得ているとはいえ、普通の犬が『従魔競技会』を蹂躙されるほどの装備品が凄いのか、伝説の錬金術師と呼ばれる蒼唯の装備品を使いこなす、こはくが凄いのか。
どちらにせよ、こはくの活躍は、小型、中型を冷遇気味であった『テイマー』業界が変化する切欠になるだろう。相応の装備品を揃えれば、大型従魔にも対抗できてしまうことが証明されたのだ。従魔の多様化は進むだろう。
「まあ蒼唯なら、大型従魔用の装備品とかも造っちゃいそうだよね」
「アオっちなら出来ますね。大きすぎる作品は可愛さに欠けるってあんまり受けてくれないですけど」
「そうなんだ。相変わらず謎基準だな」
「おっきくて可愛いなら良さそうですけどね」
小型従魔くらいなら既製品を可愛くアレンジすることも可能だが、大型従魔の装備品は、種類も乏しく大きすぎる弊害でアレンジも難しい。蒼唯に頼んでも渋りそうな案件である。
「となるとこれから大型従魔は可哀想な感じが続くね」
「半分はお宅の犬様のせいですけどね」
「ええー」
時代の寵児が可愛らしさを好むのだから、可愛いモノが優遇されるのは仕方ないのである。
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