第61話 従魔競技会
テイムされているモンスターやダンジョン的にアイテム扱いの『ぬいぐるみ』になく、こはく等の通常の動物にある特徴として、人と同様にジョブを授かれる点が上げられる。しかしその種類は人に比べて明らかに少ない。
ペットとしてダンジョンに連れられてくる内、一番人気は犬である。そのため犬が取得するジョブの研究は比較的進んでいる。
索敵に優れたの『盲導犬』や支援、回復を行える『セラピードッグ』などは当たりの部類である。戦闘職の『警察犬』や『闘犬』などは生物的にか弱いため微妙である。
そんな中、こはくのジョブは『忠犬』。主と慕う者の能力値を上昇させる、生粋のバッファーである。ソロの探索者としてかなりの実力を誇る坪のペットとしてぴったりのジョブと言える。
実際、坪の能力は、こはくをダンジョンに連れ歩くようになってからの方が高い。その分無理をしなくなったので実績は下がっているが。
「そう言えば、輝夜が会いたがってたですよ? また一緒に探索したいって言ってたです」
「うーん、少し難しいかな。まあ機会があったら行きたいけど、何せ『流星』に入っちゃったからね」
「そうですね」
蒼唯たちが小さい頃からの知り合いである坪は、蒼唯が唯一ジョブを授かりにだけ行った、ダンジョン探索にも実は付いてきてくれていた。
彼自身ダンジョン探索は好きなため、輝夜が『流星』に入る前はよく一緒にダンジョンに潜っていたものである。
「あ、そういえばなんだけど、蒼唯は『従魔競技会』って知ってる?」
「知らないです」
「そうか。説明すると――」
『従魔競技会』とは『テイマー』系ジョブの探索者が、自身の従魔を様々な競技で競わせる大会である。探索者ではない人たちにとって、モンスターを生で見る機会は珍しいため、かなり人気の高い大会となっている。
「そんなのがあるですね」
「そうなんだよね。その大会に今回、こはくが呼ばれちゃってさ」
「こはくがですか? 怪獣大運動会にか弱い犬が一匹で出るです?」
「断ろうかなとも考えたんだけど、こはくがやる気になっちゃっててね」
「分かるです。やる気に満ちた目で見られるとやらせてあげたくなっちゃうです」
2人が視線を落とすと、いつの間に仲良くなったのか、ペット3匹でくっつき合ってる光景が目に入る。
「ぬい~」
「まく~」
「わふ~」
癒し空間が出来上がっている。
癒された蒼唯は、この空間を守るためにもとある決心をする。
「じゃあ、私がサポートするです」
「サポート?」
「『従魔競技会』用のアイテムでも造るです」
「それはありがたいけど...」
「競技の内容とかあれば教えて欲しいです」
「分かったけど、無理しないでね」
蒼唯という最強のサポーターを知らぬまに味方につけたこはくであった。
―――――――――――――――
ペットをダンジョンに連れていった探索者の中で、稀有な成功例である坪とこはく。彼らを『従魔競技会』に呼び会をより盛り上げようという思惑はあっただろう。しかしそれと同時に坪とこはくという成功例は『テイマー』系統の価値を下げかねない存在である。
そのため出る杭を打っておこうという思惑が多少なりともあることは、否定できない。それは坪も気が付いており、断ることを検討していた。
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自分を心配して断ろうとする主人を見て、恥をかかせる訳にはいかないと、こはくはやる気を見せた。
その『忠犬』っぷりにぬいとまっくよも感嘆する。2匹をびびらせるほどの嫉妬心は伊達ではないのだ。
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しかし、ぬいたちの自慢の主人が味方に付いている。それならば何とでもなるだろうと2匹は考えており、蒼唯の真価を知らないこはくは、まだ半信半疑であった。
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