第37話 定期メンテ

 まっくよによる『小常闇』睡眠を始めてからというもの、蒼唯の頭の冴えは格段に上昇したように感じる。『錬金術』を長時間行うとどうしても疲労するのたが、それを毎回、全回復出来ている実感がある。


「さて、そろそろ私も検診を再開するです! まっくよ、ベアーくんの様子はどんな感じです?」

「まく~」


 今日の仕事は、沙羅の『ぬいぐるみ』の定期メンテナンスである。まっくよのお陰で、『ぬいぐるみ』も定期的に寝た方が良いことが発覚したので、沙羅の『ぬいぐるみ』のベアーくんも定期的に寝かせようという話になったのだ。

 そして寝ている間に蒼唯が『錬金術』で問題がないか調べるのだが、ベアーくんは『食トレ』をかなり頑張っている様子で少し消化不全を起こしているようであった。


「今回は私が消化をサポートしてあげてです。あとは『食トレ』を強化しとくです」

「まく~」


 ぬいは蒼唯と暮らしているため、食べ過ぎても蒼唯が面倒を見れるが、ベアーくんはそうではないので『食トレ』を強化するのが良いだろう。こうすることベアーくんの自己強化は進むだろう。


「『食トレ』でかなり余剰が生まれてるですけど...まあ私が関与することでもないです」


 蒼唯が『ぬいぐるみ』を造った際は無かった、余剰が『食トレ』の効果により生まれている。蒼唯が『錬金術』を使えば様々なスキルをベアーくんに授けることが出来るだろう。

 ただ蒼唯は探索者が欲するスキルを知らないし、ベアーくんの醍醐味は、『共鳴する魂』により持ち主の思いに応じて動く所にある。そのためすぐに、沙羅が習得して欲しいと思ったスキルを習得することだろう。

 現に元々、ベアーくんには無かった機能が既に幾つか備わっているのだ。


「こんなもんですね...さてメッセージの返信でもするです」

「まく~」


 どんな成長を遂げるか蒼唯も分からないのである。


―――――――――――――――


 蒼唯のメンテナンスから戻ってきたベアーくんはめちゃくちゃ元気になっていた。

 

「やっぱり睡眠は大事だね!」

「ベー!」

「声もいつもより元気そう!」


 活力が漲っている感じである。

 ベアーくんには元々鳴き声を発する機能は無かったのだが、探索をし出してすぐに鳴き声を発するようになっていた。


「じゃあベアーくん、今日もよろしくね」

「べぁ~」

「じゃあ『視線誘導』発動!」

  

 

 沙羅のジョブは『魔法使い』であり、蒼唯から購入した『視線誘導』付与の指輪は、遠距離職の沙羅にとってかなり有用なスキルである。本来は味方にも作用するスキルのため、連携が難しくなりソロ専用スキルなどと言われているが、魔力で繋がっているためベアーくんが沙羅を見失うことがない点も有用度を上げている。そんなこと蒼唯は一切考えていないため結果オーライだか。


 接近戦が優秀なベアーくんと敵から察知されずに遠距離攻撃を繰り返す沙羅。この2人のコンビネーションは抜群である。


「べぁーーー!」

「おお、また一撃。やっぱり今日は調子良いね」


 2人で完結しすぎて他が入り込む隙間がない点と、ベアーくんが強すぎて沙羅が探索者の常識を学ぶ機会が訪れないのが少し心配所ではあるが、今のところ快進撃が止まらない2人であった。

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