第35話 爆睡ぬいぐるみ
犬型『ぬいぐるみ』である、ぬいと猫型『ぬいぐるみ』である、まっくよが仲良くできるか当初心配していた蒼唯だったが、兄弟のように仲睦まじくしていた。
「本当によく寝てるです」
「ぬい~」
「まく~」
現在は2人仲良く『小常闇』によるお昼寝中であった。これは蒼唯も誤算だったのだが、『ぬいぐるみ』は身体の構造上睡眠を必要としない。より正確に言うならば睡眠が出来ない身体となっている
しかし、ぬいたちには『無垢な魂』を組み込んでいるため、その魂を休ませることが難しい身体構造をしていることになる。
しかし、まっくよの『小常闇』はそういった身体構造を無視して強制的に眠らせてくる。初めての体験で睡眠の虜になったぬいは、度々まっくよに『小常闇』をおねだりするようになった。
やはり常に稼働しっぱなしでは、性能を落とすのは魂も同様であったらしく、睡眠後ではぬいの『無垢な魂』の学習スピードが大幅に上昇することが確認できた。
「とはいえ数日で添い寝するくらい仲良くなるとは思わなかったです」
「ぬい~」
「まく~」
「まあ仲良いのは良いことです!」
そんな爆睡中の2匹を見守りながらも蒼唯は、今朝注文があった商品の製造と送られてきたアイテム類の修理、強化を行っていた。そろそろ夏休みシーズンに突入する関係で蒼唯も色々と忙しいのだ。
夏休みは大規模なレイドが組まれることが多く、その準備の関係で蒼唯の所にも注文が多く寄せられている。
「...よし、雁木さんの『時空鞄』の強化は終了です。かなり可愛さアップしたです。さて次は――」
強化は兎も角、修理まで蒼唯の所にくるのは、蒼唯が自分の商品には最後まで責任を持つという、考えのもと修理をほぼ無償で引き受けている他にも、蒼唯が造ったモノは特殊すぎて他の人には直せないという要因もある。
「あ、そういえば柊さんからよく分からないメッセージも来てたですね。それの返信もしないとです。それにしても昼を終わらせる方法は無いかって何のなぞなぞですかね?」
柊から謎の質問に頭を悩ませる蒼唯であった。
―――――――――――――――
蒼唯に送ったメッセージの返答を確認すると「昼寝です?」という文章とともに、ペットが昼寝している画像を添付してきていた。
「なぞなぞじゃないんだけどな...」
柊の所には蒼唯を紹介して欲しい旨の連絡や、各国の崩壊した都市の再建計画の主導をして欲しい旨の連絡が日に数百件のペースで送られてきていた。
しかし柊としては『死毒都市』の際に『逆様の槌』という貴重なアイテムを譲られた恩がある。実際には蒼唯にとってはさほど貴重でも無いアイテムであったが、それを知らない柊にとっては多大な恩かある状態であるため、頼るのに抵抗があった。
「泣きつくとほぼ100%解決してくれるアオっちが悪いなこれは。こっち側でしてあげれることも少ないしな」
基本頼られる側の位置にいる柊にとって、頼りっぱなしなのは精神衛生上よろしくない。そのため素材やアイテムを送っているが、そんなものでは賄いきれない程、既に頼りっぱなしなのだ。
おそらく今回の『常陽都市』の件も詳しく話せば解決に尽力してくれるかもしれないが、蒼唯一人に頼りきりなのも不健全である。
今回は頼らない判断を下す柊。
「それにしてもこの子たちよく寝てるぜ」
柊は蒼唯の高性能『ぬいぐるみ』が寝れない構造であることを知らない。知識としてドール系モンスターやリビングアーマなどが眠らないことは知っていても、ほぼ生物と同様の挙動を示す『ぬいぐるみ』たちが寝ている写真を見て無意識的に納得してしまったのだ。
そのため、ぬいとまっくよの爆睡写真が『常陽都市』再建の可能性を秘めていることに気がつかないのである。それが普通なのだが。
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