まっくよ編
第34話 真黒夜
死毒都市という日本で最大規模のダンジョン被害に遭った都市が『聖都』となる事件は、世界中に拡散され大いに注目を集めた。それもその筈である。ダンジョンブレイクにより崩壊した都市は世界中に存在するのだ。自国の崩壊した都市も復興して欲しいと願う者は大勢いるし、それに尽力している者も同様なのだ。
特に死毒都市は、太陽の化身である
そもそもダンジョンブレイクが発生する地域は、元々ダンジョン都市として潤っていた地域である。そんな都市が崩壊すれば被害は甚大である。
[『聖女』を我が国に呼べないのか? 呪われた都市を浄化して貰いたいのだが]
[彼女は日本どころか世界中から『聖女』と崇められる存在です。簡単に呼ぶことは叶わないでしょう。もし呼ぶのなら今回、陰の立役者と呼ばれている商人に話を通すと良いかもしれません]
[商人?]
[『聖女』のサポートを完璧にこなしたとのことです。彼が調達したアイテムのお陰で成功したと『聖女』自身が語っているほどです]
[ならば...そのアイテムの作成者を引き抜けないのか?]
[アイテムの作成者ですか...その者は秘密主義者らしく、政府や協会にも正体が明かされていないとか]
[なんと、日本には、まだそんな人材が隠れているのか]
今回の件によって蒼唯への注目度が徐々に高まっていくこととなる。
――――――――――――――
蒼唯は悩んでいた。
「まっくろ、まっくま...まっくよ! まっくよに決めたです!」
「それは何かの呪文?」
「呪文じゃなくて名付けです」
遊びに来ていた輝夜がぶつぶつと呪文のような呟きを聞き不気味がる。
「名付けって...前にアイテムの名前は製造すると勝手に決まるです...とか言ってなかった?」
「個別に名前をつけてるんです」
「それって何か意味あるの?」
「...輝夜ってペットを種族名で呼ぶタイプです? 引くです」
「そんなわけ無くない!」
「じゃあ名前をつける意味とか聞くなです。愛着が湧くようにわざわざつけてるですから」
「その言い方も結構酷いよ」
「そうです?」
そうは言いつつも『ぬいぐるみ』にぬいと名付け可愛がる蒼唯である。
「...それで、さっきの呪文は何に名付けようとしたの?」
「この前、柊さんに不良品あげたらお礼に色々な素材を貰ったですからそれ使って『ぬいぐるみ』の2匹目を造ってたです」
「へー」
巷で話題となった『ぬいぐるみ少女』その黒幕が蒼唯であることは知っていた輝夜だが、『ぬいぐるみ少女』が持つ『ぬいぐるみ』や蒼唯が野放しにしているぬいのような存在がポンポンと産み出されては、大変だと思う。蒼唯が『ぬいぐるみ』の製造に本気となればダンジョンか『ぬいぐるみ』だらけのファンシーなモノとなるだろう。
ただそんな輝夜の心配が届いたのか、今回蒼唯が開発したのはダンジョン探索用ではない。蒼唯は真っ黒な猫のぬいぐるみを誇らしげに掲げた。
「この子の名前は『まっくよ』に決めたです」
「まっくよ?」
「真っ黒な夜、略してまっくよです」
「名前で略すとかあるんだ」
「この子には私の睡眠のサポートをして貰う予定です。使えるスキルは標準装備の『食トレ』以外には1つだけです」
「1つ?」
「はいです。『
「はっ!」
「『小常闇』の元スキルの『常闇』は何か物騒だったですから、『常闇』から物騒な要素を抜いて、睡眠に有益な要素をてんこ盛りにしたスキルが『小常闇』です」
「『常闇』ってあの? 『常陽』の対になるって言われてるスキル? それを睡眠特化に改造したの?」
夜を失わせる『常陽』の対となる昼を失わせる『常闇』。確かに快眠スキルとしてのポテンシャルは高そうである。こんな物騒なスキルを使って寝ようとは普通の感性を持っていれば思わないだろう。
加減を間違えれば永眠しかねないのだから。
「ぬいは私の趣味活のサポート専門ですし、これから造るとしたら私生活のサポートをして貰おうと思ってたです。ちょうど良くまっくよが完成して良かったです!」
「最近、蒼唯が何でもありになってきてるな~。元からか...」
一番、蒼唯の凄さを身近で見てきた筈の輝夜でさえ未だに衝撃が止まらないのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます