第12話 ダンジョン配信

 最近は何度もネットで調べれば分かる時代になったと言われている。文章で分からずとも配信サイト等に動き付きの解説が載っており、それを見れば大抵の事は理解できる世の中である。

 その配信業界で今、最も人気なのがダンジョン配信である。元々配信業界の最大手だった所は、コンプライアンスの関係で、残酷な描写が多いダンジョン配信は流せない事が多かった。そこに目を付けた次点の企業がダンジョン配信や探索者などによる配信専門のサイトを開設したところ、爆発的な人気を獲得したのだ。


 その配信サイトでは生産職による製作過程を撮った動画なども多く投稿されている。レシピを提示しスキルを使いどんどんと造っていくその様は、3分クッキングを彷彿とさせる。

 ただ、それを見て生産職のスキルの使い方が学べるかと問われれば無理だろう。この動画で学べるのは精々、レシピと編集技術程度だろう。


「成る程です。今のはスキルのタイミングが早すぎたですから、付与された効果が弱まってるですね」


 しかし例外もある。蒼唯は本職である『錬金術』以外の動画などもよく視聴する。その結果、様々な知見を得る。その多くは動画の投稿主が意図しない方向のモノである。


「...『鍛冶』は強弱、角度、間隔が大切そうです。本質は『錬金術』と同じですね」


 蒼唯に限った話ではなく生産職で名が知られている者は、スキルの使い方を試行錯誤し、素材や環境によって使い方を変えられる。ただ漠然とスキルを使っている者たちには思い付かない芸当である。

 勘違いしがちたが、蒼唯はかなりの理論派なのだ。


「えーと次の動画は...『魔力回復薬造り』ですか。確かに『錬金術』だとぐにゅーって感じだったですね」


 インプットだけ。アウトプットする際は途端に感覚派になってしまう。典型的な教え下手な蒼唯であった。


―――――――――――――――


 『黄昏』がレイドを行うことを発表した。『黄昏』の中でも精鋭を集めたレイドメンバーがフルに出動して臨むレイドである。60層の階層ボスのレイドで結果を残した『流星』の影響もあるのだろう。

 今回のレイドの標的は、75層の階層ボス『終末帝エンドロード』は、死を司るとされる『死者の大魔導師エルダーリッチ』の上位種である。

 アンデッドやゴーストを呼び出し、集団的に戦うことを得意としつつ、単騎でもとんでもなく強力な『即死魔法』をバンバン放ってくる厄介さであり、想定される被害の大きさから避けられていたレイドである。


「遂に『黄昏』が75層のボスに挑むらしい」

「他の国だともう80層まで到達してるところもあるんでしょ。頑張って欲しい」

「今回の『黄昏』は気合いが違う。突破は確定的だろう」


 そんなレイドに挑むためか、世間の反響は大きく注目度も高い。世間の声はその殆どが好意的であり、これまでの実績から『黄昏』が失敗すると予想した者は誰もいなかった。誰もが『終末帝』を討伐し笑顔で凱旋する『黄昏』メンバーたちを想像していた。


 しかしそんな世間の予想を裏切り、『黄昏』の『終末帝』討伐レイドは失敗する。中核メンバーの死亡により撤退を余儀なくされることとなる。


 


 

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