第11話 勧誘
日本の探索者ギルドで長年トップを走っているギルド『黄昏』。このギルドは完全なる実力主義を貫いている。実力が有る者は優遇され、無い者は冷遇される。その上、勧誘活動や引き抜きにも力を入れている。一時期、無理な引き抜きが問題となったこともあるが今なお、それらは続けられている。
そんな『黄昏』に蒼唯の存在が見付かればどうなるか。直ぐ様、勧誘が行われるだろう。考えにくいことだが蒼唯がそれを承諾すれば、これまでのように蒼唯の商品を手に入れることは出来なくなるだろう。特に『黄昏』は他のギルドと協力することを良しとしない傾向にある。
最悪の場合、しつこい勧誘で蒼唯がこの業界から去ってしまうことも考えられる。それを危惧している者たちは『黄昏』から探りを入れられても口を噤む。
しかし彼らは知らない。蒼唯の探索者への興味の無さを。
木嶋:「はじめまして。私、『黄昏』でスカウトを担当しています木嶋と申します」
蒼唯:「はじめましてです。私は蒼唯というです。ここではお客様の注文に沿って商品を造らせていただくです。詳細はこのページの下部のURLから飛んで見て貰えると助かるです」
木嶋:「...注文をしに来たのではありません。『黄昏』のスカウトとして来たのです生産職の加入試験を近々行う予定ですので、是非蒼唯さまにもご参加いただきたく思いメッセージを送らせて頂きました」
蒼唯:「このメッセージは注文及び、商品に関する質問を受け付けるモノとなっているです。それ以外のご用件でしたら送らないで頂きたいです」
木嶋:「...現在、『錬金術師』の勧誘を強化せよとの達しが掛かっており所属できる可能性は低くありません。これほどのチャンスは中々ないんてすよ?」
蒼唯:「よく分かりませんが結構です」
【蒼唯さんにブロックされました。今後、蒼唯さんにメッセージを送信できません】
フリーの生産職というのは珍しいのか、ごく稀に勧誘を受ける。そういったときの対応は変わらない。プライベート用のSNSで冗談交じりに勧誘してくる星蘭などもいるが、そういった例外を除き即ブロックが基本だ。
「...そういえば『黄昏』ってどこかで聞いた気が...気のせいですね」
蒼唯は趣味活を誰かの下についてやろうとは思わないのだ。
―――――――――――――――
『黄昏』のギルド本部の一室。イライラしている上司に1人の男が声を掛ける。
「木嶋さん、何をイラついてるんですか?」
「...田中。別にイライラなどしてない。ただブラックリストに1人追加しているだけだ」
「ブラックリスト! そいつもかなりやらかしましたね」
スカウト部門の者たちは、効率的にスカウト出来るように様々なリストを作成しているが、その中でも勧誘禁止を言い渡された者はブラックリストに入る。一度ブラックリストに入った者が再度スカウトされたことはこのスカウト部門が設立されてから一度も無い。それほどブラックリスト入りとは重い処置なのである。
「それで何でブラックリスト入りしたんですそいつ?」
「...お前がスカウトされる立場だとして、『黄昏』のスカウトだと言っている者を数回のやり取りでブロックするか?」
「ぶはっ! 木嶋さん、ブロックされたんですか! あの木嶋さんが?」
スカウトの木嶋と言えばこの業界では有名である。特に無名な新人の発掘に関しては右に出る者はいない程である。偽者だと疑ったとしても判断が早すぎる。
「あの方の勧誘は不可能ですね。時間の無駄なのでブラックリストに入れています」
「だからイライラしてるんですね?」
「はぁー、だからイライラはしていません。久し振りにピンっとくる方だっただけに残念なだけです。イライラしているように見えたのなら、自分に対する苛立ちです」
スカウトとして実績のある木嶋からしても、これほど早く見きりを付けられるとは思わなかったのだ。
「そこまで木嶋さんが推すならブラックリストじゃ無くてもいいんじゃ無いんですか?」
「私は『黄昏』の強引な勧誘は好きでは無いんですよ。君ならこの意味が分かりますよね」
「...聞かなかったことにしまーす」
こうして蒼唯の知らないところで、話は動いていくのだった。
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