第10話 魔銃
蒼唯は裁縫等が得意のため、売りたい商品は大抵そういったモノであるのだが、星蘭にしても柊にしても蒼唯の得意分野とは異なる商品を注文してくる傾向にある。
刹那:「...在庫が切れそう。...追加を買いたい」
蒼唯:「分かりましたです。『魔銃』の手入れは大丈夫です?」
刹那:「...少し使い込みすぎたかも。...点検お願い」
久し振りに連絡してきた
刹那はギルドに所属せずソロとして活動する探索者であり、使用するのは『魔銃』と呼ばれる魔力を動力源として効果を付与された弾を打ち出す武器である。遠距離攻撃として魔法があるこの世界で『魔銃』は、コストパフォーマンスが悪く好まれて使われる武器ではない。後衛のサポート系のジョブ持ちが最低限の火力を得るために使うサブ武器的な立ち位置の武器なのだ。
そんな武器をメインとして活躍する刹那はそれだけ異様な存在である。
蒼唯:「そういえば最近、新しい強化方法を習得したんです。『魔銃』の強化もするです?」
刹那:「...成功率は?」
蒼唯:「欲張らなければ9割くらいです。かなり無理すれば強化率は高まるですけど、5割くらいです」
刹那:「...なら無理して。...最近、威力不足が気になり始めた」
蒼唯:「分かったです。ちょっと念入りに強化してみるです。強化してほしい要素とかも送ってくれです」
刹那とは、柊の仲介で『魔銃』の修理を依頼されて以来の関係である。その前から柊に『魔銃』の弾の効果付与を行っていたが、直接やり取りを始めたのはその時からである。
何となく刹那から発せられるボッチのオーラにシンパシーを感じている蒼唯は、刹那に対してはサービス旺盛なのだ。
蒼唯:「威弾を改良すれば相乗効果が期待できるです。了解したです。早速取り掛かってみるです」
そのため他の客のときは発する武器屋じゃ無いんだぞオーラを、刹那のときは発しない蒼唯なのであった。
―――――――――――――――
蒼唯の元から帰ってきた愛銃の試し撃ちを終えた刹那は、笑みを浮かべる。
「...流石だ」
苦楽を共にしてきた愛銃であり、これまで刹那がソロとしてやってこれた所以でもあるのだが、如何せん中層のドロップ品であるため、弾で補うのも限界を感じており、他の銃への移行も考えていたところなのだが、今回の大幅強化でその心配はしなくて良くなった。
「...威力や耐久力の強化を加えて、特に弱体化は感じないな」
蒼唯曰く必要の無い部分を諸々、弱体化したらしい。しかし気を付けて欲しい所で一番最初に言われた事項が、『魔銃』で直接敵を殴る場合、全くダメージが入らないという、中々の必要のなさ加減であることが伺えた。
更に注文していた弾も新作が色々と追加されていた。中には禍々しい色をした弾もあった。説明欄には『地獄龍』の呪いが込められた弾との説明がある。
「...モンスターが呪われる? ...どうなるんだ?」
蒼唯が刹那にシンパシーを感じるように、刹那も蒼唯にシンパシーを感じていた。それはボッチオーラとか言う失礼なモノではなく、研究者気質というか色々と試してみたくなる性格的な話である。
つまり普通なら驚き使用を躊躇するような蒼唯の試作品でも、刹那は躊躇わず使ってしまうのであった。
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