第6話 同級生

 蒼唯が通う高校は学生の探索者活動に理解のある学校である。授業にも選択科目としてダンジョンの知識を学べる授業が存在し、現役で活躍する探索者が講師として来ることもあるらしい。

 そんな学校のためか探索者志望の生徒が多く入学してくる。その中には学生のうちから頭角を表すような者も存在する。


「蒼唯! おはよー」

「おはよーです輝夜かぐや。昨日までずっと休んでたですけど大丈夫ですか?」

「探索者活動で遠征してただけだよ。流石に疲れたから大事を取って昨日まで休んでたんだ」

「大変です」

「『地獄龍』レイドでさぁ――」


 神楽坂輝夜。高校1年生ながら日本でも有数の戦闘系ギルド『流星』に所属する若手のホープであるらしい。蒼唯はそういった探索者業界には一切興味が無いため、そういった知識はかなり乏しい。テンションが上がった輝夜の探索者トークを聞いてるため最低限知ってる程度である。


「というか『地獄龍』討伐って『流星』が行ってたですね」

「何で蒼唯が知らないのさ! ギルマスから聞いてないの?」

「そこまでは聞いてないです。何か最近、やけに『地獄龍』の素材が出回ってるなとは思ってたです」

「蒼唯ももう少し探索者業界に興味を持っても良いと思うよ私は」

「基本的に受注生産なので、市場調査とかしないですね」


 そのため少数の固定客を抱えて細々と活動しているとも言える。趣味の活動なので気にしないのたが


 探索者として学生のうちから活躍している輝夜は憧れの対象である。将来、探索者になりたい者たちからすればすでにトップクラスのギルドに加入してる勝ち組であり、あわよくば輝夜のコネで『流星』に、それが難しくとも関係のあるギルドに所属したいと考える者もいるため、輝夜の周りには常に人がいる。


「『地獄龍』討伐の配信見てたよ! 神楽坂さんも映ってたね!」

「ほんとほんと、流石高校1年生で『流星』のレイドメンバーに選ばれるなんて凄すぎ!」

「はは、ありがとー」


 反対に探索者業界に一切興味を示さない蒼唯と他のクラスメートでは話が合わないことが多く、孤高の存在と化している。言うなればボッチである。


「『逆鱗』を触媒にすると呪具ばっかりになるですし...」


 休み時間に1人で絵を描いたり本を読んだりしている生徒、それと一緒であるのだ。


―――――――――――――――


 輝夜は周囲からよく天才だと誉められる。しかし自身が天才でないことを一番理解しているのも輝夜自身であった。

 探索者としての才能は普通よりある。それは中1の時、蒼唯と一緒にダンジョンに足を踏み入れたときから分かっている。しかし高校生ながら『流星』に所属できそれなりに活躍できているのは、才能とは別の要因なのだ。


【輝夜の装備を強化してみたいです】

【ポーションってやつを造ってみたです】


 その性能が普通とは異なると知ったのは『流星』のギルドマスター星蘭と出会った頃である。簡単な話、学生として徐々に成長していく期間を装備とアイテムでスキップした結果が今。

 事情を知る者は輝夜の才能と努力の結果だと言うが、本来であれば輝夜が開花するのはもう少し後になっていただろう。才能はあったが天才ではなかった。本当の天才とは蒼唯のような者を言うのだ。


「まあ蒼唯は自覚なんてこれっぽっちもしてないんだけど」

「...うん? 何か言ったです?」

「ううん、何でもないよ」


 自覚したところで蒼唯は変わらないだろうという確信もある。それこそ自分と蒼唯の差なのかもしれない。





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