第5話 地獄龍装備

 『地獄龍の逆鱗』を手に入れ、それを使い趣味活を謳歌している蒼唯の元に星蘭からメッセージが届く。


星蘭:「地獄龍の素材を使った装備造りに興味ない?」


 前にも似たようなメッセージが来たことがあった。


蒼唯:「前も言いましたけど私は『錬金術師』です。既存の物と素材を錬成で組み合わせて装備品の強化とかは出来るんですけど、素材から剣を造ったりとかは出来ないです」


星蘭:「わ、分かってるよ。でもアオって時空鞄とかは1から造ってるし...」


蒼唯:「そういう小さいモノなら造れるですけど、素人に刀匠の真似事は厳しいです」


星蘭:「じゃあやっぱり既製品との掛け合わせしかない?」


 『地獄龍の逆鱗』で色々と遊んで見て分かったが、この素材は下手に扱えば扱っている者が呪われかねない。星蘭も呪いが原因で加工ができず困っているのだろう。


蒼唯:「もしあれなら私が造った手袋送りますよ?」


星蘭:「手袋?」


蒼唯:「今、『地獄龍の逆鱗』で色々と遊んでるですけど、それ使うときにはめてる手袋です。効果は『呪われず』と『技術力向上』くらいしか無いですけど」


星蘭:「え、アオのところに『逆鱗』あるの? もしかして柊から?」


蒼唯:「はい、柊さんからです」


星蘭:「なるほど。だからか...」


蒼唯:「柊さんがどうかしたです?」


 蒼唯の常連さん同士はかなりの確率で知り合いであることが多い。お客さんが増えましたと星蘭に報告すると大抵知っていたりするのだ。


星蘭:「ううん、なんでもないの。それで申し訳ないんだけどその手袋売ってくれる?」


蒼唯:「別にあげるですよ? こんなのすぐ造れるですし」


星蘭:「アオの作品にはちゃんとお金を払いたいの。だめ?」


蒼唯:「だめじゃないです。ありがとうございますです。装備者を呪わなくする『呪わず』加工とか耐性の強化とかの簡単な作業なら手伝えるですから」


 星蘭は昔から蒼唯をプロとして扱ってくれる。趣味でやってる意識が強い蒼唯は、そういう扱いを受けると照れてしまう。

 ただ星蘭の気遣いは素直に嬉しく思うのだ。


―――――――――――――――

 

 蒼唯から届けられた手袋を『流星』お抱えの鍛冶職の者に渡し『地獄龍』装備を造らせる。鍛冶職人曰く、手袋の『技術力向上』の効果ぎ凄すぎて、『地獄龍』装備以降も使い続けたいとの回答が来た。


「確かにいつもより圧倒的に出来映えは良いわね」

「そのようです。ただやはり『地獄龍』の呪いが強力で、既存の呪耐性アイテムは貫通してしまうため、装備できそうな者はそれこそあの手袋をはめるしか無さそうです」

「それに関してはアオが『呪わず』加工? ってのをしてくれるみたい」

「『呪わず』加工ですか? 聞き馴染みは無いですが、察するに装備者を呪わないようにするということですね」

「アオが言うには敵への呪いや装備自体の呪耐性はそのまま、装備者だけ呪わないようにする加工みたい」


 長いこと探索者としてダンジョン攻略をしている星蘭としても蒼唯以外からは聞いたことのない『呪わず』加工。というか蒼唯しか出来ないと思われる処置や加工が多いと感じるのは気のせいでは無いだろう。


「そんな都合の良い加工があるんですか?」

「アオにとっては当たり前みたいだよ。簡単な作業なら任せてって言ってたし」

「さ、さすが『蒼の錬金術師』です」


 蒼唯の底知れない技量に圧倒されるしかない2人であった。

 



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