第5話 巨乳、褐色、悪魔っ娘ゲットだぜぇぇぇ!!!

「――見返りに人間、お前の命を貰うわ」


「なっ、命……だと」

「当然でしょう。我が名はアスタロッテ。かつて、千の魔物を率い、幾万の人間を、軍隊を、国家を、無数に擦り潰した大悪魔」


 淫靡に、そして狂悪に笑うアスタロッテ。


 魔力とかはよく分からないが、その全身から溢れ出る力の本流に、目の前の女が尋常ならざる存在だということだけは確信ができた……格好は痴女だが。


「お前のようなゴミ屑の命一つで、大悪魔たるこの私に一つ命を下せるなんて光栄でしょ? 封印を解いてもらったせめてもの礼よ。その幸運にむせび泣くがいいわ」


「こいつ、無茶苦茶言いやがって」


 封印を解いてもらった礼に、命を寄越せ

ば何か一つ言うことを聞いてやるだと? 全く礼になってねえじゃねえか!


「さぁ、どうする? 悩んでいる時間はもうないわよ? その犬たちに四肢を食いちぎられる様を私に笑われながら死ぬか。何か一つだけ願いを叶えて、私に吸い尽くされるか。どちらかを――」


「吸い尽くしてください!!!!!」


「はやっ! 少しは悩みなさいよ。死ぬのよ? 別の助かる方法を探して、頭回転させたりしないの?」

「吸い尽くすとか、エロい言い方するからだろ! むしろ心から歓迎しかけたわ!」


 腹上死。それこそ真に男の本懐なり。


「ふっ、まぁいいわ。では、願いを言いなさい。この悪魔、アスタロッテの名に懸けて、人異の契約を――」


「だったら、アスタロッテ、お前に命じる! 俺が死ぬまで、お前は俺に絶対服従! 忠実な犬、奴隷になりやがれーーーーっ!」


 俺の宣言にアスタロッテは一瞬だけ目を見開き、次に腹を抱えて笑いだす。


「あはは、何それ、願いを叶えたら死ぬって言ってるのに、馬鹿な人間ね。いいわ、その願い――悪魔アスタロッテの名に懸けて叶えましょう」


 アスタロッテが右手を振りかざす。

 すると、その手からあふれ出した紫色の〝力〟が地面に魔法陣のようなものを描き、俺とアスタロッテを囲む。

 

 熱い。何か、凄まじい力が身体に流れ込んでくるのが分かる。


 ――繋がり。


 アスタロッテの身体とは触れ合ってすらいないのに、彼女と身体が重なるような感覚。

 心に触れているような、触れられているような……感じるのは魂の広がり。


「これが契約……?」

「そ、悪くない感覚でしょ? ま、冥途の土産だと思いなさい。で、ご主人様、私に下す最初で最後の命令を教えて下さるかしら?」


 主人をゴミのような目で見ながら、アスタロッテが言葉だけは丁寧に挑発してくる。


「まずは、その犬どもを追い払えーーーっ!」


 俺が命令を下した瞬間、アスタロッテの身体から禍々まがまがしい深紫のオーラがあふれ出す。

 その力の本流に身体ごと吹き飛ばされそうになりながら、俺は今生最後の言葉を耳にする。


「お安い御用よ、ご主人様。そして、さようならご主人様」



        ◆


「うふふ、馬鹿な男……俺が死ぬまで奴隷になれって、自分がすぐ死ぬって分かっているのに、何の意味があるのかしら」


 人異の契約は確かに結ばれた。

 だがその契約は、この馬鹿な人間の死と共に破棄された。

 目の前に転がるのは、ついさっきまでご主人様だった者。

 でも今はただの肉の塊。


「さ、鮮度が落ちる前に生気を頂こうかしら……」


 十年ぶりの食事だ。思わず落ちそうになる涎を指で拭う。

 さぁ、いざ……と、死体に手を伸ばした次の瞬間―─死んだ男の身体が光に包まれ、むくりと起き上がった。


「――へ、なんで?」


 想定外の光景に、思わず呆けた声が出る。


「うおっしゃーーーー、やっぱり成功した! イケると思ったんだよ! さすが俺、頭脳派、天才的な機転!」


「え、あれ? へ、何で?」


「たしかアスタロッテとか言ったな、このけしからん駄肉悪魔め。さっきの契約守ってもらうぞ。俺はこの通り生きてる。だから契約通り〝お前は俺が死ぬまで、忠実なる俺のしもべ〟だ! 分かったな!」


 思考が追い付かない。だから何でよ? 


「ふふ、ふはははは、完璧なる不平等条約締結! 巨乳、褐色、悪魔っ娘ゲットだぜぇぇぇ!!!」


 とガッツポーズで叫んでいる〝ご主人様〟を横目に、大悪魔たる私、アスタロッテは、


「なんでなーーーーーーーーーーーん!?」


 絶叫を上げるのだった。




 ────────────────


 ここまでが物語の導入になるのですが、いかがだったでしょうか?


『命を捧げて悪魔と契約する』

 昔からよくある設定ですが、じゃあ命が複数あったらどうなのよ?

 というワンアイデアから広がったお話です。


「導入が面白かった」「キャラが良い」「続きが気になる」――などと感じていただけたら、☆☆☆とかフォローして頂けたらありがたいです。


 レビューなんて書いてくれたら作者とっても喜びます!

 書かなくても☆評価は入れられるので是非! 


 ☆の評価は、この小説のトップページで『レビュー』を選ぶか、最新話の次のページで出来ます。


 ぶっちゃけてしまうと、作品が続くも続かないも、読者様の応援次第というのが書き手の正直な想いだったりしますので。

 応援よろしくお願いします。


 ついでに宣伝ですが、

 前作の『TS百合に俺はなる!』『転生して女児向けアイドルアニメの女王になったのに、主人公キャラが猛追してくるんだけど!?』の方も良ければ読んでやってください。

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