第23話 理想のお姉さんって感じだ……最初に自爆してきた人だけど
「では、邪竜ヴリトラの討伐の依頼を受けて頂けるとのことですね。でしたらヤマダツクモさん、まずは冒険者登録をお願いいたします」
と、ギルドのお姉さんが笑顔で対応してくれる。
初っ端自爆してきた
濡れ羽色の綺麗なショートボブ。
真面目そうな瞳を飾るのは、色気のある泣きぼくろ。
スレンダーな身体を包む制服。タイトなスカートが生み出す絶対領域が素晴らしい。
危険な冒険に出る俺を、陰ながら応援し心を寄せてくれる綺麗なギルドのお姉さん……いい。実にイイ。
そんな夢のためには、まず冒険者登録で凄い結果を出して、周囲からザワザワされるイベントが必須だよな。
「さあ、冒険者登録には何が必要なんだい? 魔道具によるレベル測定かな? それとも魔力計測? ステータスやスキルが記された冒険者カードの作成かな?」
〝ボクは新世界の神になる〟的なポーズで、ギルドのお姉さんの返事を待つ俺。
「え? 必要なのは氏名等の個人情報と、人異の契約相手が居るならその名前と種族くらいですかね」
「え? それだけ?」
「はい、それだけです。というかレベル? ステータスとかスキルって何ですか?」
「マジで……? この世界、レベルとかスキルとか、ステータスオープンとか無いの?」
俺の夢が……。
冒険者ギルドで能力測定やって、魔法の多重属性持ちとか、レアスキルが判明して周囲から羨望の眼差しを受ける――という俺の夢が……。
「えっと……ツクモさんにとってショックな事があったようですが、どうか気を落とさないで下さい。皆、ツクモさんには期待しているんですよ」
「ほんと?」
「もちろんですよ。歴史上誰も成せなかった人類の悲願、悪魔族との人異の契約を成し遂げたんですから。……その、私も個人的に……本当はお仕事上こういうのは駄目なんですが……ツクモさんのこと応援していますので……」
「お。おぉぉぉぉ、ギルドのお姉さん!!!」
「ギルドのお姉さんではなく、どうぞネッサとお呼びください」
「ネッサさん!」
そうか、そうだよな!
レベルとかステータスが無いのはガッカリだったけど、すでに俺はアスタロッテという大悪魔を使役しているわけだし、なんか勇者扱いされちゃっているわけだし?
ギルドのお姉さんのフラグが立つ条件は、十分すぎるくらい達成してるってことだよな!
「分かりました、ネッサさん。あなたの期待に応えるためにも、エトラスの街の人々を苦しめる邪悪な竜を、この勇者ツクモが必ず討伐してみせましょう!」
「ツクモ、さっきリリアって娘にも同じこと言ってなかった?」
「だまれ、この悪魔め! 余計なことを言って、ネッサさんに立ったフラグがぶち折れたらどうしてくれるんだ」
そんな俺とロッテの掛け合いすら、微笑んで見守ってくれていたネッサさん(優しい)が、「では、そろそろ」と冒険者登録の書類を手渡してくれる。
「こちらの書類に必要事項を書いて頂ければ、すぐに冒険者として活動することができますよ」
ネッサさん良い人だな。
最初に自爆してきた人だけど……創星教さえ絡まなければ優しくて、理想のお姉さんって感じだ……最初に自爆してきた人だけど。
……。
…………。
創星教さえ絡んでなければ…………?
ふと、冒険者登録の書類を確認すると――
「やっぱり、こっそり入信希望書が混ざってんじゃねえか!!!」
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