第21話 シャンパンタワー入れちゃうぞぉぉぉ!
「では、伝説の勇者ツクモ様のご降臨を祝して、かんぱーーーーーいっ!」
街の顔役らしき爺さんが乾杯の音頭を取る。
あれよあれよという間に、街の中央広場では俺の歓迎会が開かれていた。
「はい、ツクモさま。一杯どうぞ」
「あ、はいどうも」
クルリが地元の名産だというエールを注いでくれる。
こっちの世界だと16歳から成人だというので、俺が酒を飲んでも問題ないらしい。
「ちょっと、ツクモ。大丈夫なのコレ? なんかめちゃくちゃ歓迎されてるけど……私、宗教団体からの歓迎ほど怖いものは無いんじゃないかと思うんだけど」
「分かってる。分かってるから、あまりでかい声で言うな」
あくまでエトラスの街から歓迎されているという
――この街は創星教の信者が多いと。
実際、さっきまで街中の人間に追われたし、今挨拶した顔役の爺さんは『絨毯爆撃じゃぁぁぁ!』って一番ハッスルしてた張本人だし。
というわけで、壁に耳あり障子に目ありじゃないけど言動には気を付けよう。
英雄扱いが、ほんの一つ選択肢を間違っただけで、また異教徒扱いで追い立てられる可能性は……十分過ぎるくらいある。絶対ある。
「ちょっと、ロッテさん。ツクモ様に余計なことを言わないで下さい。クルリたちは、純粋に、心から、勇者であるツクモ様を歓迎しているのですから。ねー、ツクモ様」
しな
可愛い。柔らかい。なんかいい匂いがする。
けど、このちっちゃいシスターに手を出すのは危険だよなぁ。
一旦手を出したら、翌日には既成事実を盾に宗教の沼に引きづりこまれること請け合いだ。
「指一本触れらたら命が危ない悪魔奴隷に、指一本触れたら宗教的偶像にされそうな美少女狂信者か……」
ハーレム作りたいとは言ったけど、なんか思ってたのと違う。
とにかく、意思をしっかり持とう。
「どんなにちやほやされても、
◇
――それから二時間後。
「おらぁぁぁぁ、酒持ってこーーーい。俺様は、伝説の勇者ツクモ様じゃーーーい!」
ヒャッハー。楽しいぜぇぇぇ。
美味い飯、旨い酒、隣には可愛いシスター。
他にも、街の女の子たちがちやほやしてくれるし。
「ねえ、ねえ、ツクモ。私、このメニューに載ってるシャンパンタワーっていうの見てみたいわ!」
結局イイ感じに酔っぱらってるロッテも、赤い顔で空中にふわふわしながらメニューを俺に見せつけてくる。
でも、袖をくいくい引っ張るな。
布越しでもピリッとするから。ちょっと痛いから。
「ほお、これはこれは……お高そうなメニューだな。でも……入れちゃうか。勇者ツクモ、シャンパンタワー入れちゃうぞぉぉぉ!!!」
「やったぁぁぁ。ご主人様さいこぉぉ!」
「きゃぁぁぁ、ツクモ様男前ぇぇぇぇ!」
「すてきぃぃ」
うーん、確か街の広場で宴会してた気がしたけど……いつの間に移動してきたんだろうな。
覚えてないけど、まぁいいか。
綺麗なお姉さんが沢山居るし。ここは天国? いや、キャバクラというやつか。
「人生初だなぁ。異世界にもキャバクラってあるのか」
あんなところで高い金払って何が楽しいのかとか思ったけど、これは楽しい。
王様気分。最高。
「キャバクラは最高だぜぇぇぇぇ!!!」
◇
――チュン、チュン、チュン。
「痛てててて。頭、いってえええ」
ベッドから身体を起こす。
いつの間にか宿に戻って来ていたらしい。ロッテは……寝袋に入って空中に浮きながら寝てる。器用なやつだな。
ふと、嫌な予感がしてベッドの隣を見る――が、誰も居ない。
「ふう、良かった。飲み過ぎて記憶が無くなって、ベッドの隣に知らない女が……なんてベタな展開はなかったか……」
と、テーブルの上に一枚の紙が置いてあることに気付く。
何だこれ? 昨日、宿に荷物を置いた時には無かったような気がするけど……。
「えっと、領収書? 額は……いち、じゅう、ひゃく、せん…………」
見たことのない桁数だ。
「──ベタはベタでも、
◇
「えっとー、俺の記憶が確かならば、クルリさん。宿代も宴会代も全部無料って言ってなかったっけ?」
朝、冒険者ギルドに併設された食堂で、俺はクルリに詰め寄る。
テーブルに置かれているのは超高額のキャバクラ領収書。
確認したところ、街の衛兵の年収に相当する額らしい。
もちろん、俺たちはそんな金は持っていない。
「確かに勇者様を歓迎する宴は無料と言いましたが、勝手に始められた二次会まで奢るとは言っておりませんよ~」
「いい笑顔で一見筋が通っているように聞こえるけど、二次会の店案内してくれたの、確かクルリだったよな?」
「え~そうでしたっけ? いい店ないかと聞かれたので知人のお店を紹介はしましたけど〜」
「けど、あれだけ勇者様から金は取らないって言ってたお前の紹介だから、そこは、アレだよ。無料だろうな~って人間思っちゃうじゃない?」
「二次会まで奢るとは言っておりませんよ~」
こいつも壊れたレコードみたいに、クソ。
「だから可哀そうだと思って借金を肩代わりしてあげたじゃないですか」
「借金って言うなよ。金の貸し借りは、人と人とを繋ぐ絆だろ?」
「ちなみに利息は十日で一割です」
「聖職者の台詞じゃねえ!」
ウシジマくんの利息設定じゃねえか!
お前ら近い将来、過払い金の返済で大変になるから覚悟しておけよ!
「というのも可哀そうですから、一つ仕事をしてくれたらこの借金はチャラにしてあげましょう」
「……すっげぇ怪しいんだけど」
「いえいえ、簡単なアンケートみたいなものですから」
「アンケートの下に入信希望書を隠してサインさせようって腹じゃないよな?」
「…………」
「…………」
「いえいえ、簡単なアンケートみたいなものですから」
「壊れたレコード!?」
────────────────
どうも定期湧きの☆☆☆くれくれ詐欺です。
宗教勧誘系地雷シスターって……何だよその属性。
自分でもそう思います。
でも、破滅願望というか……手を出したら絶対にアカンっていう女の子に弱いんですよね私。
というわけで、新たな美少女クルリちゃんが登場したことですし、気の迷いで☆☆☆とかフォローで応援して頂けたら嬉しいです。
小説トップページの『レビュー』を選ぶと、☆☆☆を入れるページに飛べます。
もっと多くの方に作品を読んで貰いたいので、是非よろしくお願いします!
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