第13話 だから、ゴメンってぇぇぇぇ!!!
――というわけで、ゴーダとかいう糞ゴリラを追うために、俺たちはエトラスの街に向かうこととなったのだが、
「街に行くのはいいとして、ロッテ、お前人間の街に入れるのか? 魔王軍幹部とか言ってたよな。魔王ってことは人間と争ってたりするんじゃねえの?」
ロッテは見るからに悪魔だし、羽生えてるし、さすがに変装でどうにかなる範囲は超えているように思える。
「確かに人間と魔族は戦争中よ。十年間封印されてたから、今の状況はよく分からないけれど、でも十年前は戦況が拮抗していたし、あれからたった十年で戦争が終結してるとは思えないわ」
「マジかよ。じゃあ、お前人類の敵じゃん。人間の街には入れねえのか……」
「そんなことないわよ。私が人間の街に入ることは問題ないと思う。ただし、ツクモと一緒ならって条件付きだけどね」
「俺と一緒ならって、どういう?」
「人間には〝人異の契約〟の力があるって言ったでしょ」
「なるほどそうか、ロッテは俺と人異の契約を結んでるんだから、『こいつは俺の使い魔だぜ』って言えば、問題なく街に入れるのか!」
そこまで聞いたロッテが、ただしと一言付け加える。
「さすがに私ほどの高位種族と契約している人間は相当珍しいと思う。とはいえ、歴史上あり得ない話じゃない」
ロッテの説明では、人間の使い魔といえば一般的には低級の魔獣がお決まりらしい。
ただし、歴史をさかのぼると稀に高位の魔獣、精霊、竜族なんかと人異の契約を結んだ人間も居なかったわけじゃないとか。
「過去に高位種族を使役した人間は、もれなく偉業を成し遂げ、人々から英雄と呼ばれ尊敬を集めていたみたいね」
偉業、英雄、尊敬か。
かつての俺からすると、祖父の弟の嫁の息子の親友の中島くらいに縁遠かった言葉だ。
だが、《残機99》のチート能力と大悪魔アスタロッテを従える今の俺なら、その英雄様にすでに手が掛かっていると言っても過言ではないだろう。
「なるほど、じゃあ俺は堂々と『俺はこの大悪魔ロッテちゃんのマスターだぜ!』と言えば良いわけだ」
「そういうことだけど、ロッテちゃんは止めて。はぁ……ってか何で私が、こんな男の
絶望感満載の顔で
だが俺はそんなロッテには目もくれず、今から始まる壮大なスペクタクルの妄想へと意識が羽ばたいていた。
人類と魔王が戦っている世界だって言うなら、冒険者ギルドとか傭兵団とか、そういうのが絶対あるよな。
そこで俺様、かっちょよく冒険者デビューのイベント発生ってわけだ。
人間は全員ビーストテイマーのこの世界。
街にはゴブリンだとかオーク、犬っぽい魔物なんかと契約した有象無象が
そんな中で大悪魔アスタロッテと契約した俺様が颯爽と現れる。
話題騒然、驚天動地。
英雄扱い間違いなしだ。
ギルドのお姉さんから『初心者なのにこのステータスは!?』みたいに一目置かれちゃったり。
初めての冒険でいきなり高難易度クエストをクリアしたり。
ギルドマスターから特別な扱いされて、王宮に呼ばれちゃったり。
そして、ギルドのお姉さんとか、新人冒険者の女の子とか、お姫様からフラグ立ちまくり。
『また俺、何かしちゃいました?』とか言って、熱い視線を送られちゃったりするわけだ。
テンション上がってきたぁぁぁぁ。
これぞまさしく異世界ファンタジーのお約束。熱いぜ王道!
――と、そんな妄想をしながら、ロッテの案内でエトラスの街に向かって街道を歩く俺たち。
歩く、歩く、歩く――――延々と歩く。
もう少し歩くと街道に出るから、運が良ければ乗合馬車に拾ってもらえたりするらしいが……うん、正直暇。
モンスターの一匹でも出て来るかと思いきや、何にも出てこないので平和しかない。
というのも、ロッテが強すぎて野生の魔物が近寄ってこないということらしい。
ドラ〇エの聖水みたいな奴である。悪魔のクセに。
暇つぶしに、ちょっとロッテでもいじめてみるか。
「つーか、お前魔王軍の幹部なんだろ? いくら友達居ないからって、さすがに十年間、誰も助けに来てくれなかったのは酷くね?」
「……私、友達居ないどころか、呪毒のせいでとことん
「…………なんかゴメン」
納得の理由がそこにはあった。
「だって同僚の皆がカードゲームやってたりするの楽しそうだな~とか見てると、必ず即座にお開きになるの!」
「そりゃぁそうですよね、だってカード取ろうとして指と指が触れただけでも死に兼ねないんですからねぇ! それ以前に、私が触った時点ですべてのカードが毒ですよ。ジョーカーですよ」
目が怖い。
一気に
「なんか……聞いちゃいけないこと聞いたみたいで……なんかごめん」
「しまいには新卒で入ってきたばかりの部下にも、裏で『えんがちょ』とか陰口叩かれて……」
「だから、ゴメンってぇぇぇぇ!!!」
魔王軍の新卒とか、カードゲームやってるとか、気になることが盛り盛りではあったが、これ以上ロッテの過去話を掘り下げるのはさすがに可哀そうなので止めた。
あと、これ以上聞いたら、たぶん俺も泣く。
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