第10話
「いや、感心しているんだよ、その年で政治について良く知っていると」
そっち?もう、びっくりしたわ。
「いえ、出過ぎたことを致しました、ご無礼を何卒お許しくださいませ」
私はそういうとまたお辞儀をした。
話すことが思いつかないならお辞儀をした方が時間の節約になるって赤の女王も言っていたものね。
「母上もそう思いますよね?」
皇帝がそういうと警備の者たちがモーゼの十戒のワンシーンの如く左右に分かれてゾフィー皇太后が現れた。
マジでやめて、めんどくさいことになりそうだから嫌なのよ。
「女性が政治に口出しは無用です」
やっぱりそう言うと思ったわよ。
自分が行って築き上げてきた政治体制を変えたくないだろうし、実際皇太后政治なんだから私の話なんて気に食わないわよね。
「ですが、私もあなたの話しに関心がないわけではありません、プロイセンの話は特に」
あら、なんか思ってたのとは違う。
「プロイセンは武器の製造増加させてますし、皇帝陛下との見合いの断りも表向きは宗教の違いですがハプスブルクに飲み込まれたくなかったというのが正直なところでしょうねプロイセンはオーストリアに成り代わろうとしてますもの」
「なぜあなたがそんなことを知っているのです!!」
「あ……そうですわね……うちの、そう父の話はよくご存知でしょう、その風変わりだと言うことは、それはでも表向きですわ、実際には低い身分から高い身分まで様々な国の世界を見ることで今、世の中がどうなっているか情報収集をしているわけです、生の声を聞くわけですから外交官の上っ面だけの報告書とは精度が違うというわけです、私も野生児のように思われるでしょうし、実際その一面もあるわけですが様々な身分のものの話から見えてくる部分を捨て置かずに聞いている、それが知識になっているのです」
私がそう言い放つと皇帝も皇太后も黙ってしまった。
「もちろん、若い私の浅はかな考えなど、取るに足らないことですから、様々な難局を乗り超えられた皇太后陛下のお考えは何一つ異論もございませんし、反論しているわけではないのです、ただ世界は常に変わっていくもので、生き残るには変えていかなければ泥船のように沈み崩壊するしかないと言うこともあるかもしれないと言う事です」
「なら、あなたは理想論ではなく現実的にどうしたら良いか策はあるのですか?」
「たとえばですが全ての人から一つの方針が気に入られることはないでしょう、食べ物の好みのように、ですからいくつかの方針をハプスブルクの中で示せばいいのです、相反する方針を」
「そんなことをしたら矛盾を指摘されて信頼されなくなるに決まってます」
「一人の人間がそれをすればそうでしょうね、でも別の人間がそれぞれの指針を出したらどうでしょうか?」
「それぞれの指針?」
「皇太后様が貴族側の今までの封建スタイルを、へレーネが皇后になり新しい動きのスタイルを指針として出すのです、デメリットは皇太后派と皇后派に分かれてしまうことですが、相殺されるでしょうし目眩しにはなるでしょう、そして皇帝陛下は良いとこ取りをしてさばいていく」
二人は私の話を聞いて何やら考え込んでしまっている。
気まずい無言に耐えかねるので
「両陛下、大変申し訳ございません、田舎娘の戯言と思ってお聞き流しいただき失礼を御容赦くださいませ、そろそろ戻りませんと母が心配しますので、これにて下がらせていただきたいと願います」
と申し上げた。
「そうでしたね一緒に帰りましょう」
いやです、って言いたいけどそんなことは出来ないでしょうから身に余る光栄でございますと優雅にお辞儀をして馬車に乗ることとなった。
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