高さ99メートルのジェットコースター

ソコニ

第1話

私は興奮と自信に満ち溢れていた。


世界のジェットコースターに乗りつくした私にとってもこのコースターは私のお気に入りであり、すべてのルートを熟知していた。


怖いと思うことなく、周りの人にはこういったものだ。


「ほら、あの急カーブの先には絶対的なスリルが待ってるんだよ!最高だから絶対に試してみて!怖いなんてことは絶対にないから。」


私は友人に声をかけながら、ジェットコースターの魅力を語った。


だが、その日は違った。この夜は予想外のことが私を待ち受けていた。



ジェットコースターに乗っていると、甲高い叫び声と共に風が耳を切り裂く。鮮やかな夜景が目の前に広がり、胸が高鳴る。私はスリルを求めていた。


コースターが頂点に達し、一瞬の重力の浸透感が全身を包む。息を飲み込みながら、下り坂へと急降下する。その時、耳に異音が聞こえた。


「チャリンチャリン」という何かが落ちる音だ。誰かがコインを落としたのだろうか?しかし、こんな高い位置からコインが落ちるはずはない。


私は周囲を見渡したが、真っ暗闇に包まれて何も分からない。コースターの速度がますます加速し、鋭角なカーブに差し掛かる。


すると、急に背後から何か冷たいものが首筋を伝って這い上がるような感覚が広がった。恐怖に襲われ、私は悲鳴を上げながら目を閉じた。


目を開けると、ジェットコースターは停止していた。暗闇の中で、私は辺りを探した。しかし、近くには誰もいない。周りに人の気配もなく、ただ一人取り残されたような錯覚に陥った。


どうやってここから抜け出せばいいのだろう?


頂点は99メートルの高さがある。


薄暗い景色の中に遠い町の光が、目の前に広がるはずだった。


しかし、どこまでいってもそれが見えない。


不気味な音が再び鳴り響く。「チャリンチャリン」と、さっきよりも大きな音がする。


私は身をすくめたまま、その音に耳を傾ける。音はますます近づいていくような気配がする。私の目の前で何かが落ちてくる――それは……コインではない。何やら形の分からない物体だ。


興味と恐怖が入り混じった感情に支配されながら、私はその物体に手を伸ばした。その瞬間、私の指先が冷たさに触れた。


何か腐った肉のような感触が伝わり、私の手から奇妙な粘液が広がった。


恐怖が頂点に達し、私は叫び声を上げた。すると、周囲には悲鳴が響き渡った。光が戻り、ジェットコースターの乗客たちが一斉に叫んでいるのだ。


再び頂点までジェットコースターが上り、急降下の瞬間に差し掛かった。すると、異常なスピードでコースターが暴走し始めた。


私は恐怖で声も出せず、ただ絶望の中で叫び続けるしかなかった。景色が一瞬にしてぼやけ、私の体は無数のGフォースにさらされる。



目を開けた時、私は見知らぬ場所にいた。暗闇に包まれた部屋で、冷たい風が鳴り響いている。


足元には何か固いものが触れ、手で探ってみると、それはジェットコースターの一部だった。私は戦慄しながら後ろを振り返った。


影が立ち上がり、ゆっくりと姿を現した。彼らは歪んだ笑みを浮かべ、私に近づいてくる。私の身体は恐怖で凍りつき、逃げることもできない。


私を取り囲み、冷たい手で私の肌に触れる。私の叫び声が空中に響き渡るが、それは絶望の叫び声として返ってくるだけだった。


彼らの恐ろしい笑い声が響き、私の意識は次第に闇に飲み込まれていく。


光が見えた。ジェットコースターのコースがおかしいことに気付く。


「発車場がない。終着点もない。」


ジェットコースターにはループするラインしか見えない。


ジェットコースターの永遠のループに私は閉じ込められてしまった。絶望的な状況の中、私は何度も同じ光景を見ることになった。


孤独と絶望に包まれながら、私はただただループを繰り返すジェットコースターに身を委ねた。遠くで「チャリンチャリン」という音が響く。それは永遠のループの象徴であり、私の絶望を表現しているように感じられた。


私の悲鳴が果てしなく響く中、魂は狂気と絶望の中で永遠に彷徨い続けるのだった。

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高さ99メートルのジェットコースター ソコニ @mi33x

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