第2話 本当に仲間になりたそうな目で見ているのか

(広大な草原にて)


ウルテナ:くっ・・・また戦闘か。


スライム:スラスラスラスラ!


ウルテナ:所詮、弱小モンスターに変わりない!くたばれ!せやッ


スライム:うぎゃぁぁぁぁぁ


ウルテナ:よし、これでそろそろレベルが・・・


(なんと、スライムが起き上がった)


スライム:うぐっ。いてててて。


ウルテナ:なに!?まだやるってのか!?


スライム:きらきらきらきら~☆


ウルテナ:な、なんだその目は・・・。


スライム:仲間になりたそうな目で、あなたを見ています・・・。


ウルテナ:仲間に・・・なりたいのか?


(喜んでる様子で)


スライム:うんうん!きらきらきら~☆


ウルテナ:ほう・・・まぁ、まだ仲間がいない俺には好都合かもしれないな。


スライム:でしょでしょ!きらきらきら~☆


ウルテナ:やめろ、その目。


スライム:きらきらきら~☆


ウルテナ:う、うーむ。


スライム:きらきらきら~☆


ウルテナ:・・・よし。決めた。


スライム:ということは!


ウルテナ:お前が敵ではないことを俺に証明しろ。


スライム:え?


ウルテナ:お前が味方であることを俺に証明するんだよ。


スライム:え、いやだって。こんなにきらきらした目であなたを見つめているんですよ?これではダメなのですか?


ウルテナ:当たり前だ。そんなので何の根拠になる

スライム:えー!


ウルテナ:仲間になりたいんだろう?。だったら敵ではないくらい簡単に言えるはずだ。


スライム:・・・敵ではないことを証明できれば、仲間になれるんですか?


ウルテナ:あぁ。構わない。


スライム:分かりました

・・・では言いましょう。私はもう既にあなたに敵意はありません。勿論、最初は攻撃を仕掛けましたが、それは敵意があったからです。今の私は攻撃するつもりなど全くありません。その証拠に、今も力で解決しようとしていないじゃないですか。


ウルテナ:ほう。


スライム:ふふふ。どうでしょう。これで仲間として認めて頂けませんか。


ウルテナ:聞きたいことがあるんだが。いいか?


スライム:はい。何でもどうぞ。


ウルテナ:敵意があったから攻撃した。ということは、お前の言う敵意ってのは攻撃をするかしないかで変わるということか?


スライム:え?あぁ、はい。そうだと思うんですけど。


ウルテナ:なるほど。つまり、お前が俺を攻撃したとき、それは敵意があると言うことになる。


スライム:はい。そうなりますね。


ウルテナ:仮にお前が、仲間になったとしよう。ある戦闘で、お前は混乱してしまいました。混乱したお前は、俺を攻撃してしまった。この時、お前には敵意があるということだな?


スライム:え、えぇ!?それは違います!混乱した場合はただの間違いであって、仕方のないことです!


ウルテナ:あれ?おかしいな?敵意は攻撃するかしないかで変わると言っていたじゃないか。


スライム:待ってくださいよ!そもそも、起こりうるか分からないことを前提に話されても困ります!混乱するか分からないじゃないですか!


ウルテナ:ならお前は、混乱しないと言い切るんだな。


スライム:可能性は低いでしょ!


ウルテナ:なんだ?混乱しない根拠でもあるのか?混乱耐性のアビリティでもついてるのか?


スライム:いや・・・ついてないですけど。


ウルテナ:そりゃそうだ。序盤のスライムがそんなに優秀なわけがない。ならダメだ。混乱しないことを説明できればまだ評価に値したんだがなぁ。それだと、敵意がないことが完全に証明できない。


スライム:そ、そんな・・・。


ウルテナ:仲間になって、俺に近づき、すきをついて首をはねるなんてこともあり得るからなぁ。あぁこわいこわい。


スライム:そんなことしませんよ!


ウルテナ:なら、証明しろ。


スライム:う・・・。分かりましたよ。


ウルテナ:さぁ、言え。


スライム:では言いましょう。私はあなたに好意があります。好きだという気持ちです。


ウルテナ:好意があるのか。


スライム:はい。私はあなたと戦いを交えて感じました。あなたは人類の希望。数多くの責任や思いを背負っています。その大きな責任を私も請け負い、勇者の助けになりたいと思っています。


スライム:仮にもし、私が混乱してしまいあなたを攻撃してしまったとしても、それは敵意があるからではなく、好意があるからです。好きの表れだといっても良いでしょう。


ウルテナ:敵意ではなく好意による現象だと言いたいのか。なるほど。


スライム:その通りです。世間では喧嘩するほど仲が良いなんて言葉も存在します。こうして口論を繰り返すことも好意の表れなのではないですか?


ウルテナ:ふむ。なるほどな。面白い。


スライム:なので、私はあなたの仲間になりたいと心から思っています。敵意はありません。


ウルテナ:・・・。


スライム:どうでしょう勇者様。これで納得して頂けたでしょうか。


ウルテナ:なぁ、スライム。


スライム:はい。なんでしょう。


ウルテナ:お前に好意があることは十分に分かった。


スライム:・・・!!ありがとうございます!


ウルテナ:だが、お前は。好意があることを証明しただけだ。


スライム:・・・え?


ウルテナ:好意があることを証明しただけで、敵意がないことは証明できていないな。


スライム:えぇ!?そんな!こんなに好きっていう感情をふかーく説明して思いを伝えたのに!?なんで!意味が分からない!恥かいただけじゃん!


ウルテナ:あのな、敵意があるということは、裏切る可能性だってあるんだ。俺は別に、裏切った仲間が改心して、また仲間になるようなそんな熱い展開は求めていない。


ウルテナ:俺はさっさと魔王を倒して、余生を過ごしたいんだ。だから敵意がないことを証明してほしいのになんだお前は。好きだ好きだのうるさい奴だな。


スライム:はぁ!?あなたほんとに最低なクズですね!姫様にも嫌われてるんじゃないんですか!?


ウルテナ:あぁ嫌われている。殺すといわれたからな。


スライム:なんなんですかホントに!ホントに!なんでそんなにひねくれるんですか!素直になってくださいよ!


ウルテナ:・・・俺だってな、素直になりたいって思ってるよ。


スライム:・・・え?


ウルテナ:素直だったらこんなことしてないだろうな。お前を快く仲間に迎え入れ、こんなに時間をかけてないだろうよ。


スライム:そ、そうですよ!だから素直に


ウルテナ:素直だったから勇者になってんだろ!こんな目にあってんだろ!なんで俺が勝手に勇者に選ばれて、勝手に人類の思い背負って、命かけて魔王を倒さなきゃいけないんだよ!

勇者になんてなりたくなかった。生き様を勝手に決められて、俺の人生はなんだ。最初からなかったのか!?魔王を倒せなかったら俺は死ぬし、倒せないまま戻っても、人類は俺に対してくそ野郎なんていうだろうな!


スライム:・・・勇者。


ウルテナ:何もしないでのんびりと暮らしやがってよ!なんの責任も背負ってないくせに言うことだけはいっちょ前だよ。頑張れだの、人類の希望だとか。何もしてないくせに。

だから、問いただしてるんだよ・・・本当なのか嘘なのか。これが俺の精一杯の抵抗なんだよ・・・。


スライム:・・・ごめんなさい、勇者。軽率な発言をして申し訳ないです。


ウルテナ:今の、勇者が抱えてる辛い悩みって感じしたでしょ。


スライム:は?え?じゃあ今のは・・・


ウルテナ:あぁ。だいたい嘘だな。


スライム:はぁ!?もうほんとに意味が分からない!なんでこんな奴が勇者なの!?


ウルテナ:知らん。こればかりは俺もわからん。


スライム:もういいです!こんなわけのわからない勇者の仲間になんてなりません!せいぜい一人頑張ってください。さよなら!


ウルテナ:おい、スライム。


スライム:なんですか。もう仲間になる気なんてありませんよ。


ウルテナ:そんなことわかってる。


スライム:じゃあ、なんですか。


ウルテナ:経験値になってくれ。


スライム:え!?


ウルテナ:頂くぞ。


スライム:やだやだやだやだ!絶対やだ!逃げる!!


ウルテナ:まて!逃がさないぞ!スライム―――――!

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