第5話 1年生 4月 学校編4 佐々木翔馬

 気づいたら長時間話していたらしく、他の試合も終わり帰らなければならない時間になっていた。


「そろそろ帰らなきゃいけないな」


「そういえば、俺に話しかけてきたのはなんだったの?」


 話に夢中になり、当初の目的を忘れるとこだった。


「そうだ!忘れてた。もし佐々木くんが進学先が決まってなかったらと思って話しかけたんだ」


「なに?」


「俺と一緒にバスケしない?」


「え…」


「俺さ、地元の星稜(せいりょう)高校に行くつもりなんだ」


「星稜って偏差値高くてスポーツも有名なとこだよね。」


 星稜高校は日本で有名な高校で卒業生の多くがここに入学して良かったと言われるほど。特に勉強面では先生の授業が面白く、多くの生徒が満足し、部活動では充実した設備が整えられている。また、バレーやサッカーの専用グラウンドがあったり、大きな学食もある。

 そして1番の魅力は学費が安く、選考基準が学力面だけではないということ。


「あの学校は成績だけじゃなく、課外活動面でも判断してくれる。要するに、佐々木くんのバスケに対する思いを面接で話せば学校の人も受け入れたいって思うよ」


「そっか。去年、オープンキャンパスに行ったけど確かに生徒みんなが充実してるように見えたよ」


 佐々木くんは前向きに検討してくれた。けれど、ここであることに気づく。


「でも星稜ってバスケ部あったっけ?」


 そう。実は星稜にはバスケ部がない。星稜高校はまだ創立して間もなく、たくさんの部活や生徒がいる中でバスケ部がない。



 去年までは



「実はさ、今年バスケ部が出来たんだ」


「そうなの!?」


「バスケ部設立したのは俺の先輩なんだ」


「中学の先輩?」


「うん。先輩が星稜に進学するって言って俺が先輩とバスケがしたくてお願いしたんだ。バスケ部創ってくださいって」


「……黒瀬くんって話してて思ったけど意外とぶっ飛んでるよね笑」


「それはいろんな人から言われる笑」


 先輩は高校で何かしら部活をやるつもりだったが、オープンキャンパスに行ってもやりたいと思える部活がなかったらしい。

 そこで俺がバスケ部創ってまたやらないかと相談した。そしたら先輩はやる気になってすぐに行動へと移した。他の学校の知り合いやスカウト的なことをして人を集めた。そして、入学が決まった次の日に部活設立の話をするために学校へと行った。


「…..先輩も割とぶっ飛んでるね笑」


「それは俺も予想外だった笑。けれど先輩のおかげで星稜高校にバスケ部あるぜ」


 佐々木くんはしばらく考えて話してくれた。


「これはもう運命としか言いようがないよ。俺でよければ一緒に頂点を目指させてくれ」


 俺たちは一緒に星稜高校に入学すること今の目標にして連絡先を交換した。

 途中まで一緒に帰り、俺たちは約束した。


「あくまで目標は優勝だからな」


「分かってるよ。俺は君を利用してでも強くなる。そして、プロを目指す」


 そう約束して俺たちは別れる。

 別れてしばらくして、後ろから佐々木くんが叫んだ。


「俺が1番になるからな!またな!優夜!」


 そう言われて俺も後ろを振り返り叫ぶ。


「ああ!またな!翔馬!」

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