第5話

そして、数日が過ぎた。

相変わらず、正木チームが携わる気象予報課の仕事は忙しい。

六月の台風が過ぎ去った後も、今だに異常気象が続いている状態である。そんな中で正木は、毎日気象予報を発表するため、時間に追われながら予測を組み立てる。相変わらず傲慢な牛田部長に、横やりを入れられながらの作業が続く。閉口しながらも幾多の資料や過去の気象データ、さらにはインテルサットから送られてくる諸情報を、詳細に調べ解析しながらの気象予測の組み立てが行われる。正木の指示に、的確に作業をこなす部下の献身もあってか、予測精度が格段に上がっていた。

そんな正木チームの発表する気象情報の正確さや的確さに、気象予報部門の役員の評価も着実に高くなっていた。

それも、そうである。

テレビ局に寄せられる、視聴者の感謝の言葉が後を絶たなかったからだ。

「毎日発表される天気予報が、大変役立っており感謝の言葉しかありません。大変なお仕事ですが、身体をご自愛し発表し続けてください。有難うございます。感謝、感謝です」

そんな中で、蚊帳の外のような存在感が漂う牛田部長が、背中を丸め自席にしがみつくように座る姿があった。

気象予報部門の長たる牛田に、声を掛ける役員が皆無なのである。

牛田が蚊の鳴くような声で、呻くように漏らす。

このままでいたら、俺の存在感が薄れるばかりか、役員による評価が落ち、しいては気象予報担当責任者の地位も危うくなる。そんなことになったら、俺はお払い箱になるではないか。

うむむむ・・・

そこには前向きな思案など、何処にもなかった。

そんな状況下で、正木らの高まる評価を横取りしようと企む牛田部長の姑息な振る舞いが、彼らの緻密な作業を妨害しようと、あの手この手でなされるに至ったが、それでも懸命に耐え、精魂を注ぎ込み気象予報に取り組む、正木らの姿がそこにあった。

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「気象予報官正木裕太」サブタイトル「異常気象」 高山長治 @masa5555

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