第6話 Don’t Worry Baby(ドン・ウォリー・ベイビー)
大学も4年生になれば、否が応でも就職のことが大学でも家庭でも話題になってくる。海はあまり乗り気ではなかったが、就職課のガイダンスや企業側からのインター ン説明会に顔を出した。
特に興味のある職種もなかったが、親から学費を出してもらっ てる手前、翔太が薦める商社と広告代理店、インターネットメディア関連の会社の説明会へ行くことにした。
雪乃に言われるがまま、長い髪を切り潮で赤茶けた髪を黒く染めた。そして、案外イケると雪乃に言われた黒い上下のスーツと革靴を買ってもらった。まあ一見すると普通の就活生に見えなくもない外見にはなった。
海は昔からそつがないタイプで、大学の就職課でのセミナーや資料、インターネッ トからの情報取集で自己分析やエントリーシートの書き方、面接時の質疑応答などの大まかなことは理解し、準備は済ませた。
ただし殊更に自分自身をよく見せようとしたり、自分の考えとは合わないことをエン トリーシートに書いたり、面接で発言したりすることはしたくなかった。 同じ就活生と比べれば極端に少なかったが、10社には応募書類を送った。その中で、5社から面接日の連絡が届いていた。海にはそれが多いのか、少ないのかさえ分かっていなかった。
このところ就活のせいで海出る時間は少なくなったが、海は早起きをして明け方の 海に入るのが日課になった。
ひんやりとした空気、潮の匂い、紫色の空が次第に明る くなって朝陽の先端が水平線に浮かぶと波がそれを祝福するように輝きはじめる。そ んな瞬間に自分が生きていることを海は実感できた。
モリケンは昨夜の酒が残っていても、毎朝の海のライディングを見守っていた。JPSA(日 本プロサーフィン連盟)の大会でもコンスタントに上位に食い込むようになっていた
海にさりげなくアドバイスやヒントを与えてくれた。
夏美さんは海から上がってシャワーを浴びて、着替えを済ませたタイミングで、カフェの仕込みで忙しい時間帯にもかかわらず、熱いコナコーヒーを海のために入れてくれた。
人の心使いや優しさが自宅にいるよりも心地よかった。また、同時に就活生という 宙ぶらりんな自分の心に魚の小骨が引っかかったようなもどかしさも感じていた。
高校を卒業した凪沙は世田谷にある美術大学の日本画科に通っていた。海は日本画のことが良く分かってなかった、テレビの『お宝探偵団』で見かける掛軸とか屏風に 描くような絵のようなモノだと思っていた。
しかし、凪沙の描く絵はどちらかと言えばフランス印象派のような透明感のある、具 象画より抽象画に近い作品が多かった。 また、高校からの「アヌエヌエ」でのアルバイトも続けていて、今では夏美さんが海 外に買付けや東京の展示会で留守にする時は夏美さんの代わりにカフェと雑貨店を切 りもりを任されるようになっていた。
それから、中学の頃から作り続けている曲の数も百曲近くにもなっていた。バンドを組んでいた海の親友、岩淵陵がそれを聞きつけて、例の図々しさで凪沙に何度も作曲を頼んでいたらしく、いままでに 4、5曲くらい書いてあげているようだった。 陵は、大学の軽音楽部に入って『Flaming Torches(フラミングトーチズ)』とい うドラム、キーボード、パーカッション、ベース、ギターの 人組バンドを作ってい た。陵はギターとボーカル、ベースはシュウヘイ、パーカッションはケンちゃん、キー ボードとボーカルは唯一の女の子でアーヤン、そしてドラムはプロテインばっか飲んでるテツがメンバーだった。演奏する曲は凪沙に作ってもらったようなオリジナル曲 と 年代のアメリカ西海岸のロックカバー(何故かメンバー皆んなが好きだった)が半々 という感じで、学園祭やライブハウスでも時々演奏していた。
時間があると陵は『Backyards』の海のところに来たり、『マヌエヌエ』の凪沙に曲 のアレンジや歌詞のアドバイスを相談しに頻繁に顔を出した。
夏にはまだ早い 月のこと、ランチタイムが終わり『マヌエヌエ』で最もゆったり とした時間が流れる午後3時過ぎにふらりと陵が店に現れた。
「こんちわ〜。夏美さん、相変わらずお綺麗で!」
「またまた、陵くん、お世辞ばっかり。人妻はもう懲りたんじゃないの? あっ、アタシもう人妻じゃなかった。」そう言って、夏美さんは舌をちょっとだけ出した。凪 沙はそんな夏美さんの仕草がカワイイなと思った。
「凪沙ちゃんもますますキュートになって、海が羨ましいよ。」
「陵くん、いつものカフェラテでいい?」凪沙は陵の言葉をスルーして言った。
「あのさ、凪沙ちゃん。今日はビッグニュース持ってきたんだ。来週の土曜日、夜空 いてる? 俺たち『Flaming Torches』さ、ついにそこの『surfers(サーファーズ)』でライブやることになったんだ、スゴイでしょ?」
「へえ〜、やったね。モリケンのコネじゃないでしょ?アイツ、好きだからねえ、開店当時からの常連だし。 ナギちゃん、店は気にしなくていいから、海くんと行って 来なよ!」 夏美さんにそう言われて、「うん、じゃあ、海くんに聞いてみる。」と凪沙は答えた。
すぐに海にメールで、陵のライブのことを伝えると、もちろん行くに決まってるでしょ! と返事が来た。
陵は凪沙にチケットを 枚渡して、最近買ったギターの話とか、ドイツに行った陸が 多分もうドイツ人の彼女ができてるはずだとか、海のリクルートスーツは見ものだっ たとか、油を売って帰って行った。
次の週末土曜日の夕方、凪沙と海は『マヌエヌエ』で待ち合わせて、『surfers』に 行くことにした。
「楽しんできてね!」夏美さんは お店の外まで出てきてくれて、2人を見送ってくれた。すると、モリケンが『Backyards』の店先から顔を出して「おーい、お二人さん。オレも後から行くぞーっ。」と声をか けた。
最近の異常気象のせいで日中は夏を思わせるほど暑かったが、夕方になり海風が辺 りの空気を冷やしてくれて、逗子海岸の突端にある『surfers』には心地よい風が吹い ていた。
ライブの開演まではまだ 時間ほどあるというのに、テラス席を含めもうかなり混ん でいた。海は通常よりは少し若めの客が多いような気がしたが、それは当たり前で『Flaming Torches』にはもうすでにコアなファンがついていて、音楽関係者からインディーズ デビューの誘いがあると陵が以前言っていた。
海は陵の姿を探したが、近くには見当たらなかった。いつもなら入口で待ち構えて、 皆んなに愛想振りまいているはずだった。チケットのモギリをしていた女性に陵のことを尋ねたら、楽屋にいるそうなので、凪沙と挨拶に行った。
裏口のストックヤードの隣に楽屋はあった。楽屋の中から色々な声が聞こえてきて、 慌しい感じがしたがライブ直前だから当たり前だと思った。
しかし、状況は違ってい た。陵は青い顔して電話をかけまくっていた。海に気づくと手を目の前に上げてゴメンと合図した。そして、隣の凪沙の姿を見つけると、急に表情がパアッと明るくなっ た。凪沙は悪い予感がした。
案の定、キーボードのアーヤンが横浜駅で具合が悪くなり、ライブに出れないとさっ き連絡入り、メンバー皆んなで後輩やら知り合いに片っ端から連絡していたところだっ た。
陵は土下座して、凪沙に今回だけ助けてくれないかと頼み込んだ。 仕方ないので、凪沙は陵の頼みをシブシブ受けることにした。 「そうと決まったら、段取りの打ち合わせだっ!」陵は急に張り切って、メンバー集 めてセトリの用紙を配ってミーティングを始めた。そして、セトリに沿って通しリハ を行った。
凪沙は楽譜があれば初見でもキーボードを弾けたし、ましてや自分が作曲した曲も あったので無難こなせる自信はあった。 ただ、ヴォーカルは自宅で曲を作る時か友達とカラオケで歌う時くらいで、こ んな人前で歌うのは初めてだったのでそこが一番不安だった。
6時30分の開演の時間になり、海は先に取っておいた 人掛けのテーブル席を他の カップルに譲り、カウンターの隅に腰かけた。ハワイのロングボード・アイランドラガーの瓶ビールをオーダーして、地元のロコみたいにビンのまま飲んだ。スッキリし ていて軽めの味、そして少しモルト感があって初夏の夕方に飲むには最適なビールだ。
モリケンが友人達とテラス席にいるのに気づいて、手を振った。モリケンは珍しく白 いコットンパンツに黒の長袖シャツを着ていた。サングラスをかけたら、ヤクザにし か見えない出立ちで、カッコつけて軽く手を上げてそれに応えた。
店内の明かりが暗くなり、ステージ上にスポットライトが落ちた。と同時に、シュ ウヘイのベースが低く響いた。
イーグルスの『One of These Nights(呪われた夜)』だ。 そこにケンちゃんのパーカッションがそっと入り、テツの力強いタイコと陵のストラ スキャスターのギターとヴォーカルが同時に鳴らされた瞬間に、店内の熱量が一気に上がった。 陵の普段の話し声は甲高くてたまに耳を塞ぎたくなるのに、歌う声は少しハスキーで 本当にドン・ヘンリーに似ていた。 演奏が終わり、拍手が鳴り止まない中、陵がマイク手に話し出した。 「ありがとうございまーす。今日は『Flaming Torches』のライブへようこそっ。」 メンバー全員が手を振った。
「 1曲目に演奏したのは、皆さんご存知のイーグルスの『呪われた夜』でしたが、実は今夜ホントに呪われていて、オリジナルメンバーのアーヤンが体調不良で来れなくなり、急遽僕らにオリジナル曲を提供してくれている地元逗子出身の凪沙ちゃんに来 てもらいましたあ、皆さん拍手!」そう言って、陵が凪沙 を紹介すると、「ナギサちゃーん!」と声がかかり、凪沙はキーボードのイスを引い て立ち上がり、ペコンと頭を下げた。 海も拍手をして凪沙に手を振り、凪沙もそれに気づいて小さく手を振りかえした。
その後、オリジナル曲を 曲、日本のカバー曲で大瀧詠一の『恋するカレン』、ユー ミンの『Wanderers』、ブレッド&バターの『Hotel Pacific』と続き、後半に凪沙の ヴォーカルパートの曲がセットされていた。
スローテンポの前奏が流れ、凪沙の歌声が店内だけではなくテラス席をも包み込んだ。 「Save me...Free me ...Oh...」開演直後はどこか不安げだったのに、細い小柄な体 に似合わない堂々とした声量、しかし、ソフトで温かみのある声だった。例えれば、 カーラ・ボノフに近い声だった。 その迫力にお店全体が静まりかえって、誰もが吸い込まれるように凪沙を見つめた。
メンバー全員もまた、その歌唱力と説得力に圧倒されていることに気づいた。 曲はリンダ・ロンシュタットの『Lose Again(またひとりぼっち)』。海もこんなに凪沙の歌声がスゴイことを知らなかった。
余韻を与える間もなく、ジャクソン・ブラウンの『Late for the sky』を続けざまに歌い、歌い終えた後、皆んなが総立ちになって割れんばかりの拍手を送った。
凪沙は少し頬を上気させて、お礼のおじぎをした。
陵がマイクを持った。
「今日はありがとうございます。次が最後の曲になります。この曲は、今歌ってくれ た凪沙ちゃんが高校生の時に作った曲だと聞いています。僕がとても気に入って、勝 手に詩をつけて僕達のオリジナルにしてしまいました。聞いてください、『潮風に逢 いに』。」
『潮風に逢いに』
タイムキーパーに見張られているような毎日
息つける場所はベットの上だけなの?
あの頃夢見てた世界はまぼろし
砂の城のように時の波に流されてしまった
帰っておいで 潮風に逢いに
君が君のままで いられる所へ
Easily come to the place you can be who you are. The gentle sea breeze will wraps you around. Feel the sea breeze, Feel the sea breeze
小さな嘘を自分について また朝を迎える
まどろむ場所は緑のない公園のベンチ
間違っちゃいない そう言い聞かせて
ため息の間を乾いた笑い声で埋めている
帰っておいで 潮風に逢いに
君が君のままで いられる所へ
Easily come to the place you can be who you are.
The gentle sea breeze will wraps you around. Touch the sea breeze, Touch the sea breeze
あの頃夢見てた世界はまぼろし
砂の城のように時の波に流されてしまった
帰っておいで 潮風に逢いに
君が君のままで いられる所へ
Easily come to the place you can be who you are. The gentle sea breeze will wraps you around. Feel the sea breeze, Feel the sea breeze
ライブは大盛況で終わった、帰って行くお客さんが皆満足そうに「あの子の歌声が良 かった」とか「次いつやるんだろう」、「YouTubeとかやってないのかな」などと 興奮気味に話していた。
最後の曲は、凪沙が海に作ったあの曲だった。陵のヤロウ、オレの曲勝手に取りや がって!と思ったが、知らないうちに感動して涙まで流してしまっていた。 「おやっ、泣くほど感動したか、俺達のライブ?」気がつくと陵が肩に手を置いてい た。
「バカッ、ピザにハバネロかけすぎただけだよ。」 「それにしても、凪沙ちゃんの歌凄かったな! 何で教えてくんなかったんだ?」 「オレも知らなかった、こんなに上手だなんて!そういやあ、ナギの親父さんは音楽 プロデューサーで、お母さんも元歌手だって言ってたな。」 「そりゃ、遺伝だ。宇多田ヒカルといっしょだ。『フラトー』に入ってくんないかな、 凪沙ちゃん。」
「アーヤンはどうすんだ、女の嫉妬は怖いぞ!」
「そりゃ、そうだ。でも、もうSNSで大変な事になってるから、周りがほっとかない ぜ。」
凪沙は少し疲れているように見えたが、それよりも自分が何をしたか分からないよ うな、初めて遊園地でジェットコースターに乗った子供みたいな表情をしていた。ヨ ロヨロと歩いてきて、海の隣の席にちょこんと座った。 海はウィルキンソンのジンジャーエール・ドライをオーダーして、凪沙の前に置いた。
「大丈夫か、ナギ?」 「うん、大丈夫。」そう言って、ジンジャーエールのグラスに口をつけた。
「ワタシ、上手くできた。」
「当たり前じゃん、お客さんの反応見たらわかるだろっ。」 「うん、なんか大きなあったかいカタマリの中を泳いでいるような、そんな感じがし た。気持ちよかったのかも。」なんか不思議ちゃんみたいなところあるんだよな、ナギはと海は思った。
店を後にして、海は凪沙を家の近くまで送って行った。並木道の木々の若葉の匂いの中に少しだけ潮風の香りが混じっていた。
それから数日後、昼過ぎにモリケンから海にメールが届いた。暇な時に『Backyards』 に寄ってほしいという内容だった。 その日の夕方、海は『Backyards』に顔を出した。 モリケンはいつものようにゴーグルをかけて、店の奥でボードをシェイプしていた。
海がドアをノックすると、それに気づいて電動ルーターのスイッチを切り、透明な防 護服を脱いでタオルで手を拭きながら店に出てきた。
「悪かったな、呼び出して。明日の朝でも良かったんだけど、早く知らせようと思っ てな。」そう前置きをして、「実は今朝アメリカのスティーブからメールがきて、この前のJPSAのバリ大会のYouTubeを見たメーカーの人が、是非海とピロに来月初め のカリフォルニアの大会に招待したいと行ってきたそうだ。海がオレのボードを使ってるから、スティーブ経由で連絡してきたらしい。どうする?」
「ス、スゴイな! それって、マリブの大会だよね? ジョンジョンやフェレイラも出るって言ってたヤツ。」
「結果次第だけど、もしかすると主催の シルバーやアンダーソンがスポンサーにつ いてくれるかもしれないぞ。」
その大会の頃には、企業面接の予定が複数入っていた。 「うーん、モリケン悪いけど少しだけ時間ちょうだい。ピロには、オレから連絡しと く、ありがとね。」モリケンにお礼を言って、店を出た。
まだモリケンに話が信じら れないでいた。世界一流のプロサーファー達のライディングが間近で見れる、もしか すると対戦できるかもしれないと思うと、スポンサーどうのこうのなんてどうでもよ くて、純粋に胸がワクワクしてきた。
自宅に着くと雪乃がキッチンで夕食の準備をしていた。ただいまと挨拶して、バッ グをローテーブルに投げ出し、ソファに体を沈めた。
「案外早かったのね。今日はタコライスにしたの。好きでしょ?」
「ありがとさん、親父今日は何時くらいに帰ってくる?」
「さあ...、でも何も言ってなかったから、 7時前には帰ると思うけど。」 このところ海が真面目に就職活動を始めたことで、雪乃の機嫌は良かった。やっと自 分の息子が真っ当な道を進んでくれると喜んでるようだった。
「わかった。夕食そん時でいいや、親父に話あるし。」
翔太は雪乃が言うように 7時過ぎに帰ってきた。雪乃から海が話があるみたいと 聞くと、先にシャワー浴びてくると浴室に向かって、しばらくして部屋着の格好でダ イニングのテーブルに着いた。冷えた缶ビールを錫のビアカップに注いで、泡を確かめながら喉に流し込んだ。
「でっ、話というのは?」海の方を向いて声をかけた。
「他でもない就職の件なんだけど。」雪乃がキッと海を見つめた。
「今 社との面接が決まってるんだけど、その内の 社の面接受けないと言ったら驚 くよね?」
「バカ言ってんじゃないの!アンタ就職を何だと思ってんの?」雪乃がテーブルに両 手を着いて椅子から立ち上がった。
それを翔太がたしなめて、海の方を向いて行った。
「ユキ、海にも何か事情があるんだよ、きっと、なっ。」
海は今日アメリカのメーカーから先日のバリ大会を見て、 月のカリフォルニアの主 催大会に招待したいと連絡があり、サッカーでいえばワールドカップの地区予選に リーグ 部のチームが入るようなもんだと説明し、ただしその期間に企業 社の面接 予定があると言った。
「ダメ、ダメ、絶対ダメだから。」雪乃は横ヤリを入れた。 「カイ、お前はどうしたいんだ?」それを制して、翔太が言った。
「オレは...カリフォルニアに行きたい。ジャイアントキリングなんて、無理なのも解っ てるけど、感じたいんだ一流選手っていうのを、まだ手の届かない先にあるものを...」 噛みしめるように海はつぶやいた。
「わかった、行ってこい。カリフォルニアでも、ハワイでもタヒチでも。なんだって 一流を目指すのは大変なことだよ。その努力に果てはないから。自分で一流だと思っ てるヤツは、もうすでに二流だ。」
「だけど、サラリーマンが一流になれないわけじゃない。どんなところにだって一流 というか、スゴいプロフェッショナルはいる。オレだって、そうなりたいと思いなが ら仕事をしてる。」今日の翔太は饒舌だった。 それに近頃は、苦労をして就活を乗り越えて会社に入っても、全体の50%以上が 2年を待たないで退社して行く現実があり、何しろあの没個性のリクルートスーツが大嫌 いだと言った。
雪乃は食事もほとんど手をつけず、プンプンして寝室へ行ってしまった。 翔太は雪乃のことは任せておけと言って、もう一本缶ビールの栓を開けた。
タコライスは 年前の家族旅行で行った沖縄で食べてから、雪乃が夕食のメニュー の一部に加えた料理だった。あれからもう家族 4人でどこにも行っていないことに翔 太は気づいた。
そして、これからももう 4人で旅行に行くこともないのかな、子供が大人になってい くとはそういうことなのかなと思うと、口をつけたビールが急に苦く感じた。
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