2-夜 疲れたよな


「ただ、いま……」


 休日出勤から帰ったマナはどんよりしていた。大丈夫か。


「にゃう」

「うん。もーやだ、お風呂ためる」


 そう言って風呂場に向かう。すぐにザアッと水音がし始めた。疲れた時にマナはお湯にどっぷりつかるが、何がいいんだか。


「まいったよー。休んだ子たちさ、あれ仮病だった、たぶん」


 けびょう。なんだそりゃ。マナは上着を脱ぎ、買ってきたビールを冷蔵庫に突っ込んだ。たまに「ちょっと高いヤツ」と言って大事に飲む缶の色。


「夕方上がりの人が彼女らのインスタ見たらさあ、ヌン活写真あげてやんの。予約取れない店」


 何を言ってるか俺にはわからないが、イラッとしているのは伝わった。


「スタッフみんな騒いじゃって。午後店長いなかったから、この問題は私が預かることになっちゃって」


 ぐあああ、とため息をついてマナはフラフラ風呂に行った。うん、さっさとリラックスしてこい。


「にゃ」


 しまった。俺のご飯を出してもらってからの方がよかったな……こういう時は長風呂だから。

 しくじった。だが仕方ない、てきとうに待つ。まあ、俺は猫だし、待てるよ。


 バシャ、と音がし、マナがあがる気配がした。そこで「あっ」と声がする。なんだなんだ。

 しばらくして顔を出したマナは裸だった。


「着替え、持ってくるの忘れたー!」


 ぷんぷんしながら出てくるが、どうせ俺しかいないんだし裸でいいだろ。


「みゃあう」

「ひゃはん、コタ、やめれ」


 スウェットを着たマナのお腹に俺はもぐりこもうとする。ゲラゲラ笑われた。

 風呂上がりでホカホカのマナはあたたかく、いい匂いで好きだ。

 俺はマナの腹に爪を立てないようにしながら、胸元に顔を出す。


「にゃ」

「何ようコタ。えっちぃな」


 言いながらマナはニヤニヤ嬉しそうだ。ふん、おまえもえっちか。

 いいだろ、裸の付き合いでも。俺だって服なんか着てない。


 だって、俺は猫だからな。

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