第3話 美しい少女、魔女と対峙する
奴隷契約書を書いて思った。日本語でも良いんだと。
言語は違えど、サインさえすれば適応されるらしい。
自分が書いた後、リーゼちゃんがサインすると、契約書は光り輝き、リーゼちゃんの胸元に赤い紋様を作った。
どうやらこれで奴隷契約は完了のようだが……なんかエッチィな。
「それでは……えーっと……お名前なんでしたっけ?」
「やっぱり順番おかしいよね」
そのおかしさは、結婚してからお付き合いしよ?って言っているようなものだ。
まあ自分から名乗ればよかったけど、タイミングが掴めなかった。
「では改めて、私は神楽舞桜。好きなように呼んで」
「はい!魔王様!」
「んー?ちょっと違うかな。『ま』『お』…だよ」
「え?魔王様ですよね?」
「んー……可愛いからいっか!」
てな訳で、これから魔王を自称したいと思いまーす。
しかし、魔女に続き魔王とな……不名誉なあだ名ばかりだぜ。
「それでこれからどうしましょうか?」
「うーん、実はここのことをよく知らなくて、まずは情報を集めたいと思うの」
情報は何よりも重要だ。
お肌の艶の維持とか、髪のキューティクルの維持、女の子を侍らせ方にしても情報がないと何も出来ない。
特に今知りたいのは…。
「リーゼちゃんって年齢はいくつ?」
「突然ですね!?もっと他の情報が良いんじゃないですか?」
「いやいや、これは物凄く重要なことだよ」
まだ出会って間もないのだから、少しでも相手と仲良くなりたい。
それにはまず相手のことをよく知ることだ。
ましてや奴隷。どう扱って良いか手探り状態だ。
そして、特別な理由はないけど、とりあえず年齢が気になって仕方なかったのだ。
そう理由はないけどね!
「じ、11になります」
「なるほど……ギリギリセーフ……か」
「何がです!?」
予想通りの年齢。
4歳差か……全然普通だな。
言わば、小学生が近所の女子高生に追いつきたいけど追いつけない焦ったい関係。
これぐらいの歳の差が1番燃えるな!
「いや、こっちの話。それでリーゼちゃんは、ここの地理について詳しかったりする?」
「はい。地図で見たい程度ですが、おおよその地形の把握はできています。ですが、ここ魔女の森だけは別です」
周囲をキョロキョロと見渡しながら言う。
「ここら辺の地形は魔女が住んで以来、一度も更新されておらず、何百年も前の情報しかありません」
「何百年!……魔女って長生きだね」
やっぱり魔女と言ったら、ヨボヨボなおばあちゃん魔女かな?
こう謎の杖をついて、三角帽子を被り、全身を覆うローブを身につけているイメージの。
白雪姫に出てくる魔女みたいな感じ。
それとも私に引けを取らない美少女魔女かも!?
私が魔女と間違われるのならありえる!
おおー!燃えてきたぞ!
あ、でも何百年も生きているんだった。
100歳越えの美少女(笑)になるのか……なしだな。
「……はぁ」
「ど、どうしましたか?わたしの説明、あまりよくなかったですか?」
「いや、むしろずっと聞いてたいくらい丁寧でわかりやすかったよ」
半分は右から左に流れていったけどな。
まあ重要な箇所はしっかりと把握した。
魔女は自身のテリトリーに侵入されるのを嫌がる傾向にあるから、絶対に見つかってはならないとのこと。
特に人間なんかは見つかり次第、魔女の手にかかってしまう。
つまり何が言いたいのか。今の私達はヤベー状況にあるってこと。
「とりあえず、リーザちゃんの来た道を戻ってみる?」
「絶対嫌です」
「あ、はい。じゃあ普通に森から抜けようか」
強く否定する彼女目からハイライトが消えた気がする。戻ることすら嫌なのか。
彼女がどれだけ被害を受けたのか想像は出来ないけど、従者を思うのも主人の役目だ。深入りはやめておく。
「でもアレだね。ここから出て何をするか何だよね」
目標すら定まっていない状態で世界を回るのは博打な気がする。
……まあ森から出ることが最優先だな。
「そのことなんですが1つ提案が」
「お!何か良い意見あるの?」
実に頼りになる従者だ。しっかりと今後の展望も考えてくれている。
でも、まずは森から出ようよ!
「まずは森から出て、どこか人が住んでない家がないか探しましょう」
「空き家を探すの?」
「厳密には捨てられた古屋を探すと言った方が良いかと」
なるほど、不動産屋が関与していない、買い取ることさえしなかった家を探すってことか。
うーん、衛生面に問題があるけど、お金がかからないって考えれば悪い選択ではない?
「ほうほう、それで?」
「そして、わたし達だけの街を……いえ、国を作りましょう!」
「なるほど!飛躍しすぎじゃないかな!?」
2人で住むって考えなら理解が出来るけど、国まで行くか……誰が統治するんだろう?
うっすら誰がするのか見当がつくけど、絶対に気づいてやらない。
「建国するにしても、人が集まるのかも疑問に思うけど」
「安心してください」
履いてますよ。
「ちゃんと考えはあります」
待ってましたと言わんばかりのドヤ顔で今後の計画を話し始める。
可愛いんだけど、移動しながら話せないものか。
「わたし達と同じように居場所をなくした人達を集めるんです。言わば、もう一つの故郷、帰る家を作るんです!」
「へぇー、すごく良いね。すごく盛る……間違えた、燃える話だ」
「えへへ」
うん、可愛いな。誘ってんのか?
冗談はさておいて、彼女の話は賛同できる。
私はアレかもしれないが、リーゼちゃんは1番良い例だろう。
まあ彼女も変人ではあるけどね。
しかし、こんな良い笑顔をする少女に残酷なお話をしなければならない。
「でも、どうやって集めるの?」
「へえ?」
私達の容姿では怖がられる可能性も無きにしも非ず。
特に私は魔女と酷似してるらしいから、人を集めたいのに逃げていくってことになりかねない。
「こう、魔王様の魔女パワー的な何かで!」
「魔女じゃないし!」
私は2人きりでも良いけど、それは少し物足りなさは出てくるだろう。
ずっとケーキばかり食べていると飽きてくるように、たまには別のものを堪能したい。
……何の話でしょう?
「だから、国を作るのは後回しにしよう。まずは人を集める。それが最・優・先!」
「……わかりました。ご主人様の指示に従います」
「お、落ち込まないで!しっかりリーゼちゃんの思いは叶えるから!」
なんかコッチが悪者みたいになっちゃった。
「後ですね、魔王様」
「はい」
「わたしのことは呼び捨てで呼んでください。ちゃんを付けられると寂しいと言いますか、少し距離を感じます」
お?やっぱり誘ってんな。
じゃなくて……そんなことを考えていたなんて、実に可愛らしいではないか。
「わかった、リーゼ。頼りにしてるよ」
「うっ……結構ドキッとしますね。顔隠してください」
「急にどうした?」
そんなに醜い顔なのかな?マジで凹む。
「そんなことよりも森から脱出を」
その時だった。
リーゼの声を遮るように爆発音が響き、背後から砂埃が襲い、私達の視界を妨げる。
「な、何?」
「あらあら、人のお家に勝手に入り込んでおいて、ただじゃあ返すわけないでしょ?」
砂埃の向こうから人の声がする。しかも、女だ!
視界が戻り、声の主を確認する。
その瞬間、頭にビビっと何かが舞い降りた。
金髪の髪に三角帽子を被り、ローブを着た、いかにも魔女ですって感じの若い女性がいた。
そして、特出すべき点はもう一つ。
その特徴に当てはまる物は一つしかなかった。
「エ、エルフだー!」
「うわ!何!」
人間を超えた速さでエルフにまとわりつく。
エルフの手が出ないように手首を掴み、頸に鼻を近づけて匂いを堪能する
「はぁ、良い匂い」
「ちょ!何してる!離しなさい!」
女性に離せと言われたら、従うのが淑女としての定め。
無理矢理は良くなかったね。同意が必要だよね。反省。
仕方ないので、大人しく耳を触ることにした。
「はぁ、この耳に一度触りたかったんだよね」
「いや…それは…ダメェ…弱いんっから」
おっと、行為中にやる触り方をしてしまった。ちょっとムラムラしてたからね。しょうがないよね。
しかし、結構色っぽい喘ぎ声だったな。
うーん……悪くないかも?
「はぁはぁはぁ……コホン、どうも初めまして。この森の魔女です」
「いやカッコつけても手遅れだよ」
乱れたローブを直しながら、何事もなかったように自己紹介をするエルフ。
意外とアホっぽいな。
「……楽しかったですか?主人様」
「い、痛いよ。リーゼ君」
何故か太ももをつねられた。もしかして、ジェラったのかな?
そうなら後で可愛がらなきゃね。
「それでこの森に何のようかしら?」
「別に要は何もないです」
「……
「ないですね」
「えっ」
膝から崩れる魔女。おもろいなこの人。
「でも!そこの女の子は私の奴隷になりたいと話していたはずよ!」
リーゼを指差す。
確かに、最初はそう言っていたね。
でも、残念ながら、彼女は誰かの奴隷になれれば良かったから…。
「あ、もう用済みです」
「へぇ!」
今度は額を地面に打ち付ける。脳でも破壊されちゃったかな?
悪いな、リーゼはもう俺のモノなんだ。的なアレだね。BSSみたいな感じかな?
これは言わざる負えない。
「残念ね。この子は私のモノなの」
「ひゃ!」
リーゼの腰に手を回し、自分に引き寄せる。
自分のものであると主張するように体に密着させる。
「クッ!もうちょっと早く来れば!」
……何となくだが、この魔女はあまり賢くない気がする。
さらに思っていたより恐怖感はない。
魔女と大それた異名なのに、彼女からはその威厳すらない。
それに髪も金髪で思っていた感じではない。
「ねぇ、リーゼ?アレが噂の魔女なの?」
「うーん、魔女自体は見たことはありませんが聞いてた容姿とは違いますね」
リーゼは魔女に近寄り、体を屈める。
そんなに近づいて大丈夫か?急に牙を剥き出してこないよね?
心配だから距離とっておこ。
「すみません。貴方は黒髪の魔女とはどう言った関係何ですか?」
「ほぇ?ああ、前ここに住んでいた魔女のことね。私は……いえ、魔女全体に言えることだけど、黒髪の魔女は皆から嫌われている存在よ」
魔女さえ嫌う魔女。一体、どんな奴だろう?
私が冤罪を喰らったのは間違いなくそいつのせいだ。許せん。
「へぇー、じゃあ何でこの森に?」
「噂の真相を確かめに来たの」
「噂ですか?」
魔女は立ち上がり、杖を取り出した。
「黒髪の魔女が失踪したって話よ」
「失踪……ですか」
「でも結局、噂は噂。黒髪の魔女は健在だったわけ。だから……ここで始末させてもらうわ!」
リーゼを引き寄せ、杖の先端をコッチに向けて光を放つ。
そして、突如として目の前に巨大な水の塊が出現する。
「行け!ウォーターブレイク!」
魔女の声を合図に水の塊が私へ襲いかかったのだ。
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