隣の空き部屋 2

 部屋は、やはり引っ越しの苦労を考えて、一階の角部屋にしました。一階には四部屋あり、隣の部屋は空き部屋で、その隣と反対側の角部屋には先住者がいました。二階の真上の部屋には人がおらず、その隣には人が住んでいました。八部屋のうち、自分を含めて四部屋が埋まっていて、四部屋が空いている状況でした。荷物を運び入れた後で、ちょっとした手土産を持って挨拶回りをしました。隣の隣に住む初老の男性は一人暮らしで、ゴミ出しの場所など色々教えてくれました。一階の端に住んでいるのは、体を悪くしてデイサービスの介護を受けている老婆でした。引っ越しをしたのは二月か三月頃、まだ寒さの残る季節で、玄関を開けてすぐのダイニングキッチンで石油ストーブを焚き、膝に犬を乗せていたと記憶しています。二階に住んでいるのは三十代ぐらいの女性で、無愛想でほとんど話もしなかったので、詳しい事は何も知りません。


 因みにですが、そのアパートは小型ならペット可の物件でした。猫が好きな自分は、もしかしたら飼う選択肢もあり、大きなポイントでした。結局、飼う機会はなかったんですけどね。ただ、引っ越した当初、アパート周辺に一匹の野良猫が住み着いていまして。事故か何かで尻尾が千切れたキジトラでした。若干、見知らぬ人 (自分) を怖がる様子も見せていましたが、元は飼い猫だったのでしょう。すぐに慣れて、手の上からエサを取って食べたり、膝の上に乗ってくるようになりました。小春日和には、縁側に腰掛けて猫と一緒に日向ぼっこをしたものです。


 自分は子供の頃から霊感が強かったようです。自分ではあまり覚えていませんが、両親や親戚には、勘の鋭い子だね、とか、霊感があるね、みたいに言われていました。実際、お婆ちゃんの霊を感じた(見たわけではない)事もありますし、その他にも心霊体験を幾つか経験しています。それも主に子供の頃の話で、二十歳を過ぎて実家を出た後は、ほぼ心霊体験というのはありませんでした。


 ――その日までは。

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