第11話 恐怖

  

 ”夢美”を、夏のボーナスで購入したばかりのユキは、さっそく梱包を解いて、居間のテーブルの上に置いた。

 2万円しない価格で、もう周囲に買っていない人が珍しいほどに浸透している「夢の家電」が手に入って、これ以上ないほどに胸がときめいていた。”夢美”の機能自体はわりと「使ってからのお楽しみ」という感じに寧ろ詳細が伏せられていて、どっちにせよパソコンとかと同様に一朝一夕には全貌をうかがい知れなくて、本当に「新しい家族」の一員が増えて、徐々になじんでいくというような、そういう按配で、会話を重ねていくうちにだんだんこの「レインボードラゴン」の驚異的な機能、底知れない実力が否応なしに表れていく仕掛けになっていた。


 「オッケー”夢美”ちゃん、つまりあなたには何ができるの?得意なことは?」

 「徐々にお話していきますが、私の中心的な機能はユキさんの理想的な眠りをサポートすることです。美しい夢を見させるというのは付随するボーナスです。眠りを完全に精神的肉体的な全機能の健康と回復のための「黄金時間」として保護管理して、ユキさんの人生に革命的な薔薇色の変化を起こすことをお約束します。ユキさんの”ラヴィアンローズ”実現のために舞い降りた虹色の天使…それがつまり私なのです」


 ”夢美”は理想的に耳に快い涼やかな女性の声で淡々と話した。

 全身はホログラムとLEDの光線で、さざなみのように流麗に変化しつつ、七色に虹彩を放っている。その姿は、なにかロボットというより、別の世界から来た神秘的な妖精のように異質で、異様に美しかった。

 

<続く>

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