第9話 危殆
”夢美”は、まずそのファンタジックで美麗この上ない外観、心憎いまでに見る者を魅了せずにおかない、芸術品のような端整なシェイプで世間の話題を攫い、で、価格も案外手ごろだったので、たちまちヒット商品の列に並んだ。
「流行」という不思議なトレンドにうまく乗ることに成功すれば、あとは一気呵成に話題が雪だるまのように膨らんでくれる。
結果、どういう機能を発揮するのかがよく呑み込めていない消費者までもが、流行の渦に巻き込まれて争って”夢美”のユーザーという、”同時代の最先端”と同義の称号を欲しがることになったのだ。
そうして、一般的なAIロボットと同様に、会話を重ねることですべて発揮すべき機能が滞りなく発揮されていくという親切設計でもあって、時日を経ずしてすっかり”夢美”は家庭の一員のように家族に認められて、素晴らしく有能な友人として歓迎されるようになる…これもアスク氏の計算通りだった。
が、そうして…SFらしいSFというものがそうであるように、話は牧歌的には決して進んでいかない。
SFの真骨頂は、つまり社会の風刺であり、科学の両面性、諸刃の剣というその恐ろしさに警鐘を鳴らすところなのである。
<続く>
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