第4話 構造
「夢を実現する」のではなくて、「見たい夢を現実に見る」…そういう内向的なベクトルの技術が、なぜかイプシロン氏には現代人に必要なものである、と思えたのだ。本当に夢を実現できる幸福な人物というのは限られたセレブだけで、大多数のその他大勢の人々は、「夢の実現」という「夢」を中途半端に与えられているだけで、その夢を錯覚とか妄想で実現するとか、VRや疑似的な意識変容空間でしか代理満足できない。今はそういう時代だ。しかし、幸福であるという幻想を与え続けなければいずれ誰も働かなくなって、厭世観にとらわれて、体制が瓦解しかねない…権力者階級には潜在的なそういう恐怖感があって当然なのだ。
アスク氏が「思い通りに甘美に陶酔できる理想的な夢の世界」を、その他大勢の人々に、安楽死させようとするかのごとくに提供しようという、そういう観念に取りつかれたのは、一種の精神的な安全装置というか、罪悪感や恐怖感の表れだったのかもしれない。
が、ともかくそれが一つの文字通りに「夢のような」計画であるのは間違いがなかった。
物事は複雑でアンビバレントで、それゆえにこそ人間らしいともいえる。
こうして「ドリームシアター計画」~誰言うともなくこう呼ばれ始めたプロジェクト~はいよいよその全容を世界中にあらわしたのだ!
<続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます