第5話 家族

私の父、大江剛は私が7歳の時、自宅で首を吊って自殺した。


祖父は子供の頃から自分の後継者である父に対して、帝王学を学ばせ、厳しく育てiiiいた。


繊細で脆い心の持ち主だった父は祖父の脅迫的欲求についていけず、心を病み、ついに自分の手で自らの命を絶った。


遺書はただ母と私に「すまない」とだけ書かれていた。


父を死に追いやった元凶の祖父は「一族の恥だ」とだけ吐き捨てるようにいい、葬式は身内だけで行い、メディアには「事故死」と報じられた。


私が祖父に殺意を抱くようになったのはこの頃だと思う。


はっきり言って大江達は人間の屑だ。


自分で財を成したわけげはなく、ただ受け継いたにすぎず、事業の大部分も部下まかで、自分に逆らう者はすぐにクビにし、本人は「一流の経営者は部下に恐れられているものだ」などと言っているが、私に言わせれば、単に嫌われているだけだ。


また人間の価値は財力だけで判断し、立場の弱い人間に対して尊大な態度を示し、支配することが何によりも好きな卑劣漢だ。


母も父が亡くなって直ぐに離縁を強要、屋敷を追い出され、それだけではなく私の養育権も祖父が権力で強引に奪い取った。


祖父と狩りに行くたびに、私は祖父を「誤射」で亡き者にしようと考えるが、実行することはできない。


気の弱いところは父親ゆずりなのだ。


こうして私は今日も祖父との拷問のような一日を終えた。




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アサルトガール 南極ぱらだいす @nakypa

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