場外ホームラン
進藤路夢
場外ホームラン
「デカチョウ、ここが現場です」
「うん、ここに死体が?」
「はい、この河川敷の見通しの良い一本道で死体が見つかりました」
「こんな広い所で」
「はい、殺されたのは山岡光郎、38歳会社員となっています」
「なっています?」
「どうも、産業スパイの可能性がありまして、そっちの線でも捜査が進行している最中です」
「と、なると動機もその線で?」
「いや、というより死に方が不自然でして」
「死に方」
「はい、この道で頭を一撃。即死です。頭蓋骨が陥没するほど一撃をくらっています」
「女性ではなかなか難しいな」
「はい、器具や機械を必要とします。加えて、この場所。目撃者がいてもおかしくありません」
「その言い方だと?」
「一昨日の日曜日、昼の14時すぎ、目撃者はいません。加えてその死因となった陥没させるほどの凶器も見つかっていません」
「氷の塊でもふってきたか」
「デカチョウ、相変わらず推理がさえてらっしゃる」
「おいおい、おべっかはやめてくれよ」
「あははは」
「はあはははは」
「そんな事より、気になる点が」
「どうした、早く行って見ろ。こちらとしては早く事件を解決したい」
「この河川敷、向こう側に野球のグラウンドがありまして」
「野球か・・・おお少年野球の試合をしているな」
「はい、当日も試合をしていました」
「この真夏の14時にか?」
「はい」
「一番、気温が高い時間帯に・・・子供達の熱中症が心配だ 」
「デカチョウ・・・それ関係ないですけど」
「すまない、つい野球の事になると」
「そうでしたね、デカチョウ、野球好きですもんね」
「すまんな。来月の課対抗戦に向けて練習していたせいで、捜査会議にも遅れてしまって、こうして崎野上君に説明してもらってるんだ」
「あ、それはかまいません。それよりその野球なんですけど、今、少年野球界で話題の垣花君というこがいまして」
「知ってるよーー将来有望だね彼は」
「あ、ご存じで」
「ああ、もちろん」
「それで、その子がその日場外にホームランを打ったと」
「もしかして、ここまで・・・」
「その可能性は」
「すごいな」
「試合中ということもあり、誰もボールを探しにこなかったと」
「うーーん、やはり垣花君はポテンシャルが高いなぁ 、打順は?」
「2番ファーストだと聞いてます」
「2番?」
「あ、今流行りの早めの打順に最強の打者を置くみたいなやつですね」
「いや、そうかもしれんが、あとの打者が難しいだろ」
「垣花君は今4年生で、上級生がクリーンアップを務めているようです」
「なるほど、まだ4年で自由にやらせてるのか・・・守備は?」
「あ、えっと、ファーストです」
「もっと、いろいろ経験させないと伸びしろが少なくなるな」
「足は速いので外野とかですかね?」
「いや、そういうものじゃなく、内野外野いろいろ経験させておいたほうがいい。特にまだ4年せいなら」
「さすがデカチョウ。見識が深い。ちなみにこれは噂段階ですが、垣花君はすでに中学、高校までは入る所が決まってるみたいです」
「早い段階でスカウトが入ってるんだな。よくある話だ。高校はどこだ?」
「北高ですね」
「北かぁ」
「デカチョウは東校ですもんね」
「そうだ。それにまだ先とはいえ、指導者と施設は東校のほうがいい」
「ほうほう」
「あとさっき言ったように様々なポジションをさせるといったチャレンジ精神もある」
「なるほど」
「ちなみに、今試合してるの垣花君のチームです」
「何? それを早く言え!」
「しかし、もしかしたら垣花君のホームランで殺人が」
「ボールはどこにある?」
「いえ、それはまだ」
「じゃぁいいじゃないか。それに東高に入ってくれればそれでいい」
「そうですかね?」
「そうだ。そのためにもいまから試合を確認しに行こう」
「行きますか?」
「よし行こう」
「はい」
場外ホームラン 進藤路夢 @niseuxenntu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます