姫川彩花と放課後

 何とか学校も終わり、姉さんと共に寮に戻る。

「やっと終わったね」

『お疲れ様。と言うわけで降りさせて』

「了解」


 みなさんはDomとSubというものを知っているだろうか。

 女性・男性とは別にある第二性。ダイナミクスと呼ばれる二つの性別。SubはDomの命令に逆らうことができない。さらにDomとSubはパートナー契約を結べばその拘束力はより強固なものとなる。それこそ、たとえ片方が死んだとしても逆らえない強固な命令ができる。


 私はDom、姉さんはSubだった。だから私は姉さんが死ぬ前、病院で眠っていたときに命令した。

「幽霊として私のそばにいて」

 だから姉さんはその命令に従って私のそばにいる。


瑠花るか姉さん、そこの人形に【降りて】」

 姉さんそっくりの人形。そこにDomの【命令】で霊を降ろし、姉さんが動けるようにする。

 命令すると姉さんが白いもやになって人形に吸い込まれる。

「やっぱり実体があると落ち着くねぇ」

 無事人形に憑依した姉さんが関節をポキポキ鳴らしている。片耳にある青いピアスが揺れている。

「じゃあ夕飯の準備するから、姉さんはストレッチしといて」

「え、今日もするの? さすが高校生だね」

「うるさい。姉さんが自分の可愛さを自覚せずに動くから悪い」

 姉さんが肩を伸ばした時に見えた白い二の腕。あの腕にまた傷つけたくなったのだ。


 今日はスーパーで揚げたてが売っていたので天ぷら蕎麦にした。

「美味しそうだね」

「姉さんも食べれたらいいのにね」

 もし姉さんが人間に憑依していれば一緒に夕飯食べれるのに…

「ねえ、ちょうどいい憑依相手いないの?」

「そう簡単に見つかるわけないじゃん」

 姉さんは人間に憑依したがっている。今は50センチほどの人形におおさまっているが、やはり都合が悪いのだろう。人に戻りたいのだろう。

「ねえ、あの子はどう? 私を祓おうとしている子」

「小林さんだっけ? 特待生で隣の部屋の子だね。なんで?」

「私は見えるってことは訳あり。ワンチャンあるよ」

 なるほど。確かに特待生に訳ありは多い。これは調べてみる価値があるな。

「そういや彼女ってDom? Sub?」

 Subだとパートナー契約を結ぶことができるので都合がいい。

 Domは何人とでもパートナー契約できるから本当に都合が良い。

「私ちょっと調べてくる」

 姉さんがそう言って逃げようとした。私はすかさずそれを止める。

「【止まれ】姉さん、逃げちゃダメだよ」

 残りのそばを食べ切る。

「ベッドに行こうか」

「優しくしてよね? 明日も腰痛とかいやだからね?」

「それは姉さんしだいだよ。姉さんが私を煽らなければ良いだけ」

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