第33話
「もう一度告げる。サーラ殿及びエマ殿は、不法滞在により高原のカフェから強制追放処置とする」
「な……なぜ私たちが追放など……。あれだけ泣いて喜んでコーヒーを飲んでくれていたではありませんか」
「泣いてなどおらぬよ。あまりにも酷い味で我慢のあまり、そう見せていたのか」
いったい、高原の三姉妹カフェでなにが起こっていたのだ⁉︎
自家製の畑で収穫して丹精込めて一杯一杯煎れる。
これは私が追い出されてからもやっていたことだとは思うのだが……。
エマお姉様はすでに放心状態のようで、身体がガタガタとしていた。
「その件でも、5,000,000ゴールドの罰金を科す。客の皆を騙し、安物の豆や茶葉を使い、高原の自家製だとメニュー表に明記し売り文句にしていた」
「な……⁉︎ お言葉ですが、そんなこと、証拠にもなりませんですわよ」
「そのために、我が国最強の味覚を持つ、王宮直属万能料理長ジャーキ殿や、商売最強の男バーバラ殿も同行させたのだ」
え、え⁉︎ ジャーキさんが王宮の万能料理長?
ジャーキさんが用意するランチの料理がものすごい評判が良かったし、まかないで用意してくれたごはんが毎回美味しかった。
だが、ジャーキさんは王宮直属の料理長だとは名乗っていなかったが……。
「料理長が私たちの高原の聖女姉妹カフェに来店されるとは聞いていたのですが……。お店を広めてくれるのではなかったのですか?」
「なにを言っている? 我が王宮の料理長は大変多忙なのだよ。味の衰えてしまった店に足を運ぶなどありえぬ」
「コーヒーや紅茶の区別なんてつくはずがないはず……」
「その発言をしながら良くもまぁカフェを営業していたものだ……。やはり、フィレーネ殿を追放して変わってしまったのだろう」
国王陛下がガッカリとしながらため息をはく。
レリック殿下が続けて、お姉様たちに持っていた書類を見せた。
「今回の件は民を騙してきただけではない。ここにいるフィレーネ殿にも重大な嘘をついている」
「え? どういうことですか?」
今度は私が疑問になってしまい、ついレリック殿下に尋ねてしまった。
というのも、お姉様たちとは完全に縁が切れたはずだ。
もう今後一切関わることなどがないと思っていたからである。
「高原の土地、誰のものだ?」
「「う……」」
お姉様たち二人とも、急にガタガタと震え出した。
レリック殿下の言葉でそんなに困るようなことでもあったのだろうか。
「正直に答えられないようだな。実はこの近辺の所有権はフィレーネ殿にある。こればかりは、フィレーネ殿たち両親の遺言が受理されて正当に相続されているもの。それを、この二人は自分たちのものだとフィレーネ殿を騙し続けていたことが調べでわかった」
「「う……」」
「え、え……? ここの土地は全てサーラお姉様とエマお姉様のもので、私に相続されたのは庭の苗や種、茶葉だと言われていましたが……」
「もう少しフィレーネ殿は疑うことを覚えたまえ……。土地の価値と比べたら対等ではないだろう……」
そう言われても、お姉様たちの言葉は絶対だと命じられてきていたため、疑ってもどうすることもできなかった。
大好きな茶葉や豆が私の所有物というだけでもありがたいと思っていたのだ。
「結論を言う。すでに家族関係の破棄は受理されている。この土地はフィレーネ殿のもの。つまり、フィレーネ殿のみがここに住む権利があり、サーラ及びエマにおいては住む権利もここで営業する権利もない!」
「そ、そんな……。ねぇフィレーネ。私たち、姉妹よね?」
サーラお姉様がこの世の終わりかのような、深刻な表情をしながら涙目で訴えてきた。
エマお姉様も続けて私に頭を下げてきた。
「わたくし、これからはフィレーネに優しくしますわ。だから、連帯責任で罰金も一緒に……」
「ふざけるでない!」
わ、びっくりした。
私の返事を待たずに、レリック殿下が今まで見たこともないような恐い表情で怒鳴った。
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