第4話 いざデート
昼休みが終わり教室に戻ると、フィーネとお昼の時間を一緒に過ごしたことを一や友人の男子にちょっとからかわれたが、それ以外は何事もなく授業を終えた。
なにやら、一緒に教室に出ようとしたら準備があるとのことで、校門前でフィーネを待っていると護衛のエルフさんを見かけたので一応声をかけておく。
「ララノアさん、話は聞いていると思いますが、お姫様をお借りしますね」
「はい……三英雄が一人シィーヤ様が護衛ならば私も安心です」
「その名で呼ばないでくださいよ……俺はこっちでは上木神矢っていう名前があるんです。だいたい俺はあいつらと一緒にいただけですから……」
ミステリアスな雰囲気をもつエルフのお姉さんでフィーネの護衛を務めているララノアの言葉に苦笑して答える。そう、彼女とは何度か魔王との戦いで一緒になったことがあるため、再会と同時に正体がばれているのだ。
やはりエルフなだけあって寿命が長いのだろう。昔あったときと全然変わらぬ若さだから不思議なものである。
「せっかく、我らが世界と交流ができたのです。あなたはもっとかつての偉業をアピールしてもいいと思いますが……例えば、我が国でならばシィーヤ様ならばハーレムだって作れますよ」
「……そういうのはちょっと……」
「今、一瞬間が空きましたね」
にやりと笑うララノア。いや、しょうがなくないか? ちょっと恋愛にはトラウマはあるが所詮男子高校生なのだ。ハーレムという言葉にはちょっと弱い。
「からかわないでくださいよ。それにこっちの世界ではただの高校生ですからね。非現実です」
「ですが、あなたは私たちの世界では英雄です。実はあなたのことを想っているって方もいるかもしれませんよ。エルフやドワーフ、竜人など寿命が長いですからね。あなたのことを知っている方々もたくさんいます」
「あはは、でもたいていはリューゲルのファンでしょう? それに俺がよくしゃべっていた女性のエルフはララノアさんくらいですよ」
残念ながらもともと女性馴れしていない俺はエルフの女性と話す機会もあまりなかった。ララノアさんと話しているのも、困っているエルフ幼女の話し相手になっていたのがきっかけに過ぎない。
そういえば彼女は今頃どうしているのだろう。
「それよりもです。フィーネには俺の正体は言ってませんよね?」
「もちろんです、私は一切言ってませんよ」
「なら、いいんです。あいつには余計なことは気にせず高校生活を楽しんでほしいですから」
まあ、フィーネとの今の関係性は心地よい。変に英雄扱いされて敬われたり緊張でもされたらちょっと寂しい。そう思うと俺もフィーネと過ごす時間を結構楽しみにしているんだなと気づく。
「神矢ーー!! ごめんなさい。待ったかしら」
「いや、別に……」
そう思って振り向くと、そこにはいつもとちがいうっすらと化粧したフィーネがいた。心なしか制服のスカートもちょっと短くなっているのは気のせいだろうか?
彼女は少し緊張していた様子だったが、俺とララノアさんをなぜか交互に見ると、不思議そうなかおをしてかわいらしく首をかしげる。
「二人で何を楽しそうに話していたのかしら?」
「あー、それはだな……」
まさか、俺の正体のことを言うわけにもいかずどうしようとララノアさんに視線で助けを求めると、彼女は任せろばかりに頷いた。
さすがは大人の女性だ、頼りになるぜ。
「てへへ、神矢様に口説かれていました。モテる女性は大変ですね」
「ララノアさん!?」
ララノアさんは無表情のまま舌をペロッと出してそんなことをいいやがった。いや、この人マジで何言ってんの?
嫌な予感をしながら、フィーネを見つめると、一瞬目を見開いた後に不満そうに唇を尖らせた。怒りを示すかのように耳がぴくぴくと激しく動いている。
「ふーん、神矢は昔っから年上の女性が好きだものね」
「いや、昔って……お前と会ったのは高校だろ……」
「ではでは、あとはお若いお二人でお過ごしください」
好き勝手場を荒らしたララノアさんがさっていき、俺のつっこみには答えずにフィーネがエルフ語でぼそりとつぶやいた。
『私だって大人っぽく見えるように頑張ったのに、神矢の馬鹿!!』
「あー、その……フィーネさん怒ってます?」
「別に……人の護衛にデレデレしてだらしないっていっただけよ」
本音と全然違うじゃん……などと言ってはいけない。まあ、でも確かに今の彼女はいつもよりも大人びているのは事実だ。
俺と放課後遊びにいくのに気合を入れてくれたのならば正直嬉しい。
「今のフィーネも大人っぽくてきれいだと思うぞ」
「はいはい、ありがと」
「おい、待てって」
どうでもいいとでもいいたげな口調で彼女は先に行ってしまう。だけど、耳がぴくぴくと可愛らしく動いており、『えへへ、褒められた』とエルフ語で可愛らしくつぶやいていたのはちょっとちょろいけど萌えた。
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