第3話見たかったもの
「それで心当たりって…。」
「今からじゃ嶋崎くんに迷惑かけちゃうけど…それでもいいの?」申し訳なさそうな顔で彼の顔色を伺うように覗き込む。
「うん…大丈夫だよ」
彼はユーレイになった私にも優しい。こんなにカッコよくて性格よくて、、今にもこの身果ててしまいそうな程、彼のことを見る度に身体が火照る。
「あのね、嶋崎くんと…映画見たい……」
「…え?」
嶋崎くんは鳩が豆鉄砲を食ったように驚いているけどそれもそう、実は1回映画に彼を誘ったことがあった。
それは最近のことで一ヶ月前程のことで、
「歯医者あるから…来週は習い事で…」とことごとく断られたことがあったから私は成仏出来ていないんじゃないか!…と!
あの頃はほんとにつらかったよ…逆恨みすらしそうになったし…
考えていることがすぐに表情にでる私の顔を彼はじっと見つめていた。それに気付いた私が嶋崎くんの顔を不思議そうに見つめると顔を背けられる。
「やっぱり…気にしてるんだねあの時のこと。ごめん。」
「あ、いや!…まあ気にしてはいる…けど」
嶋崎くんは申し訳なさで潰れそうで深刻そうな顔をしていた。
「……じゃあ、行こ!嶋崎くんと見たかった映画あるからさ!」
私の様子を見て驚いているけれど嶋崎くんはすぐにふふっと小さな笑い声をあげて
「うん…」と優しく返事をした。
街の小さな小さな映画館。スクリーンも小さくて学生は誰も行かないようなレトロな映画館に2人は足を運んだ。
今のような朝方に開いている映画館といえばここしかなかった。受付にいる眉間にシワがよって、頑固そうな顔のおじいちゃんはここら辺の高校の制服を見て不思議そうな表情をしていた。
「そこのあんちゃん。なに見んだい。」
「えっと…なにみよっか…?」
小さな声で私に問いかけ、その問いに答えようと受付にあるラインナップから私はじっくりと見ていく。
「1ヶ月前に公開された「運命の恋」っていう映画観たいの…けど、なさそう…?」
「1ヶ月前…か…」
彼もまたオンボロな映画館には合わない妙に真新しいポスターを見つめているけれど、不思議そうな表情をしたまま悩んでいた。
「あんた、ちょっといいかい。」
見かねたおじいちゃんは受付から出て来て、
こっちだ、と言わんばかりに手招きする。
私たちは顔を見合せ2人で
そこにいた受付のおじいちゃんは嶋崎くんを見てこの歳にしては珍しいふさふさな髪の毛をポリポリと指でかき、「変なやつだ」と言いたげな表情をした。
君と一緒にいきたい 閃めぐる @rinne_227
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