正体

「おやおや、とうとう気が狂ったか。この私が魔王オディウムの生まれ変わりだと?」


 ゲオルクは嘲笑を浮かべる。だが、その眼は決して笑っていなかった。


 レインはまったく動じずに答える。


「そうよ。あなたこそがこの世界を混沌へと陥れている元凶。あちこちで混沌をもたらして、自身の肉体を復活させようとしている」


「さすがに子供でも思いつかないレベルの創作だ。何を根拠にそのような世迷言を思いつくのか」


「まだ気付かないの?」


「は……?」


 レインが冷たい眼でゲオルクを見つめる。


「私は一度闘った相手は決して忘れない。たとえその相手が、どれだけ姿形を変えていたとしても」


 ゲオルクの眼が暗くなっていく。


 足元の影から、グロテスクなツタが生え始めた。


「おやおや。まさか、貴様とこんなところで再会するとはな」


 ゲオルクが邪悪な笑みを浮かべ、その顔つきはみるみる険しくなっていく。


「ええ。私たちはなかなかの腐れ縁みたいよ」


「初めて気が合ったな。私も貴様だけには会いたくなかった」


「運命の神様のいたずらってやつかもね」


「ほざけ。ともかく、これですべてが腑に落ちた。なぜなら、お前は……」


「そう。私は、あなたの天敵――ティム・モルフェウス生まれ変わりよ」

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