回想7

 ――世界が白くなっていく。


 魔王オディウム。クソったれなバケモノ。


 お前も今日でその命を終える。


 この技は俺の命と引き換えに、途轍もない爆発を生み出す。星ごと爆発しかねないエネルギーをこの半径数百メートルの範囲に凝縮するんだから、お前でも消滅は免れない。


 時が止まる。


 死に際の世界っていうのは、こんなにも静かなものなのか。


 エリス――すまない。どうやら俺は、帰って来ることができないらしい。


 俺がいなくなっても、エリックがいる。


 そもそもはエリックの方が君に相応しい男のはずだ。なにせエリックは未来の皇帝だからな。


 ああ、でも俺の物語も終わりか。


 長かったとか、切なかったとか、色々な想いが出てくるな。


 だが、総じて言えば、俺は幸せだったよ。


 あのままスラムで生きていれば、人生に何の目標も無く、ただ無為に自分の手をくだらない罪で染め上げていただけだろう。


 そうならなかったのは、お前たちがいてくれたからだ。


 世界を救う云々よりも、仲間と何かを成し遂げようとすることに、今までにない達成感を感じた。


 お前たちは俺に生きる意味を与えてくれた。


 最高の仲間だ。


 最後の最後までそれは照れくさくて言えなかったけど、本当に会えて良かった。


 ――だからこそ、お前たちには生きていてほしい。


 他の誰でもなく、人生を救ってもらった俺がそう思うんだ。だからお前達は本当に生き延びるべきなんだ。


 俺だって死にたくない。


 だけど、オディウムを倒すには禁断の魔法であるサクリファイス・プロージョンを使うほかない。


 魔導書の最後には、「愛する者を守るための最後の手段として使いなさい」と書いてあった。もっともそのページは、お前たちに見られる前に破り捨てたんだけどな。


 オディウムが断末魔の声を上げている。


 いよいよ俺の人生も終わりを遂げるようだ。


 生まれ変わったら会いに行くよ。そんなものがあればの話だけどな。


 ああ、もう少し早くエリスと結ばれていればな。


 後悔しても仕方がない。


 次は賢くて、見目麗しい女にでも生まれよう。


 そうすれば奥手な俺でもモテまくって求婚されまくるだろうから、きっと幸せに生きられるだろう。


 それじゃあ元気でな。


 エリック。


 エリスをどうか頼む。お前なら彼女を幸せにできると思っている。


 エリス。


 お前は俺のことなんかさっさと忘れて、幸せに生きてくれ。


 ……だけど、綺麗さっぱり忘れられるのも寂しいから、時々は思い出してくれ。それだけで俺は浮かばれる。


 それじゃあな。

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