散想刹那
Danzig
第1話
花よ
私の目の前に咲く
薄墨(うすずみ)の花びらよ
お前は私とよく似ている
風に爆(は)ぜて、花弁を散らし
まるで狂(くる)うたかのように
空に舞い上がる花びらよ
今のお前の
その瞳に写るものが
もしも、悉(ことごと)く
幻(まぼろし)だったとしても
それでも尚
風に抱かれて舞い上がるがいい
春の宵の月が
朧(おぼろ)げに漏(も)らす光の中に
淡きその色を匂わせるかのように
優雅に風と戯(たわむ)れる
お前のその姿は
まるで
命が常に巡(めぐ)り返し
この世の次でも
何処(いずこ)の春に
また花を咲かせることを
なんの疑いもなく
夢見ているようだ
けれど
お前が夢にみるような
例えば、
私達の生まれる前に
誰かの世界があったとしても
仮にも
次の世界に永遠の
何かがあったとしても
今のこの世で
その身に抱(いだ)いた、
夢や、
想いや、
この温(ぬく)もり達を
次に継(つ)げぬという無常があるのならば
この世に生き、
花を咲かせ
そして舞い散っていく、
この命は
きっと
悠久の時の中では
まるで塵(ちり)と等しいのだろう・・・
されど泣くな、花びらよ
それでも尚
花弁を散らし
狂うように舞い上がるがいい
天空(そら)に向かい、
その身を晒(さら)す
そんな運命(さだめ)を持って
この世に生まれたのなら
命を散らしていく、その姿さえも
私達の生きた証なのだと
私は思う
花びらよ
私の目の前に咲く、薄墨(うすずみ)の花びらよ
お前はまるで私のようだ
紅色(べにいろ)の衣(ころも)を、纏(まと)う
小さな夢さえも
叶わぬままに終えてしまう
薄墨の花だと嘆(なげ)いたとしても
たとえ
明日には落ちてしまう花の命と
知っていたとしても
それでも私達は
尚も凛々(りり)しく
薄墨色をあえかに染める
そんな徒花(あだばな)として
咲いていようじゃないか
もしも
私達が生きた証(あかし)が
時の流れに消えてゆき
私達が生きていた事さえも
無かったと同じになったとしても
誰かに託すこの想いが
無常にも、消えてしまう運命(さだめ)だと
知っていたとしても
それでも
この身の
この想いを
全て燃やし尽くして咲くのであれば
この命の散りゆく
その刹那には
天空(そら)に向い
微笑みを飾ってやろうじゃないか
花びらよ
風に爆(は)ぜる、花びらよ
狂うがごとくに空に舞い上がれ
この胸の鼓動を掻き立てろ
我が世たれそ常ならん
散想刹那 Danzig @Danzig999
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