第6曲目 エンカウントアルバイター!

「いらっしゃいませェ、メニューはこちらになります。お決まりになりましたらこちらのベルでお呼び下さい」


今僕が居るのは桜ヶ丘Magic roomの隣のカフェー。そう、僕がいつもライブ前に立ち寄るちょっとお高めのオシャレなカフェーだ。

実は今日僕がここに居る理由は隣でライブをやっているからではない。


ピンポーン


「はァい、少々お待ちください。お待たせしましたご注文はお決まりですか?」


僕はここでバイトをしているのだ。(シフトが違うお陰でありがたい事にこの前のギョッとした女性店員と出勤の曜日が被らない)


勿論ここで働く時は女装をしていない。


ここは僕みたいな高校生が来るには財布に痛い店だが、バイトとして働く分には時給が1200円という高待遇こうたいぐう過ぎる店だ。


本来今日は僕のシフトは休みだったのだけどもう1人のバイトが新型コロナウィルスの濃厚接触者になってしまったので急遽きゅうきょ臨時のウェイターとして入る事になったのだ。


「柏木くーん、ちょっといィ?」

「何ですか店長?」

「いやァね、向こうの席に座ってる女の子に向こうに居たウェイターさんを呼んでくれないかって言われちゃってね。アンタ何かやらかしたの?」

「そんな事は無いと思うんですけど…」


本当に何のことかわからない。僕はずっと店の右側のお客さんの相手をしていたせいで店長の言う“向こうのお客さん”との関わりが無いのだから。


店長の指さす方には帽子を目深まぶかに被りグラサンとマスクで顔を徹底的に隠した女性客が1人で座っていた。


「お客様、僕に何か御用でしょうか?」


近づくとその人の帽子に隠れた髪がチロリとこぼれて見えた。綺麗なクリィム色でまるで…


遊馬ゆうまくんだよね!」


急に手を握られた。


この声は!それにユウマって…?


その人が顔からグラサンとマスクを剥がし取る。


「3ヶ月ずっとライブ来てくれなかったけど何かあったの?それとももう私たちに飽きちゃった…?」


ミユきゅん!?


「す、すみません。今はバイトちゅうなんで話はとりあえず30分後で良いですか?」

「そ、そうだよね…ゴメンね」

「謝らないでくださいよ」


一旦僕はミユきゅんの席を離れた。


本当にどう言うことなんだ!?

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