邂逅

顔を逸らせて答える。

流石にこの赤くなった顔を見られたくない。

「誰?同じクラス?」

「あ、いや、そうじゃない」

「じゃあ別のクラスの奴か」

「あ・・・」

今更ながらに「いる」と答えた事に後悔していた。

まさか先生の事は言えない。

と、言っても他にどう答えよう。

って言うか何でいきなりこんな事を。

どうでもいいじゃない。

仕方ない、適当に知ってる女子の名前でも出して・・・そうだ、3組の中地さんなんかいいかも。

彼女はモデル体型で顔も悪くない。

好きだと言っても違和感ないだろう、

「清水先生か?」

「え?」

中地さんの名前を出そうと思っていたまさにその時に思いがけなく出てきた名前に、一瞬意味が分からずキョトンとしてしまった。

「いや・・・清水先生は別に」

「そうか・・・なら良かった」

「それ、どういう意味?」

「ゴメン、変なことばかり言ってるな。俺、ちょっと寄るところがあるからこっちから行くわ。じゃあな、おやすみ」

「う、うん。おやすみ」

何なんだろ、今の言葉は。

遠ざかる雄馬の背中を見ながら、あんな背中だっけ、と不思議さを感じたが、ほっとため息をつくと頭を切り替えることにした。

今は雄馬の事を考えても仕方ない。

それより、ようやく先生のところに行ける。

そう思うと、さっきまでの雄馬とのやり取りも気にならなくなってくる。

先生と会うのはあの花火の時以来か。

自然に浮かんでくる笑みを慌てて引っ込める。

だめだめ、先生は熱で苦しんでる。

遊びに行くわけじゃ無い。

あくまでも看病しに行くだけ。

ラインをしてから行こうかとも思ったけど、体調悪いなら見る余裕も無いだろう。

そう思い、そのまま先生のアパートまで行くことにした。

場所は前回でしっかり覚えている。

電車を乗り継ぎアパートのある駅を降りると、アパートの近くのコンビニでお粥や清涼飲料水を買っていく。

念のため冷却ジェルも。

まだ必要な気もするけど、後は必要なのがあったらまたそろえれば良い。

今は少しでも早く様子を見に行きたい。

先生の驚く顔を思い浮かべると、駄目だと思いながらもまた顔がニヤけてしまう。

そうこう考えているうちにアパートが見えてきたので、足早に向かっているとふと階段の所に女性の人影が見えた。

最初は住人かと思ったが、すぐに人影の主が誰か分かり足が止まった。

血の気がサッと引いていくのが分かる。

「清水先生・・・」

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