第4話 顔の判別は素人にはムリ!
「到着~っと、なんか
「アホか! いいから、さっさと下ろしてくれ」
「分かったよ、タロ伏せ」
『ワフ!』
あれから、タロに思いっ切り走ってもらうこと数分で王都の門の前へと降り立てば、その眼前にはちょっと前に見たばかりの光景が広がり思わず「
「まったく……おい! そこの兄さん、すまんが手を貸してくれ」
「……」
「お前だよ! お前! 聞こえているんだろ。心配しなくてもコイツはお前達を襲ったりはしないから、早く手を貸してくれ!」
「……あ、はい! って、ガイル様?」
「ああ、そうだよ。ガイルだ。いいから、早く!」
「こ、これは失礼しました……」
「ああもう、だからそういうのはいいから、早く手を貸せって!」
「あ、はい!」
門の前で検閲の順番待ちをしていた行商人や冒険者風の人達、貴族用の通用門に並んでいた人達、そして衛兵までもその場で腰を抜かしタロを指差してアワアワしているのを見て「
そしてガイルさんが自分で説明した方が早いだろうとタロから降りようとするが、体格のせいもありすんなりと降りることが出来ないために近くで呆けている若い衛兵に声を掛けるがタロの動向が気になるのか、なかなかガイルさんの方を見てくれない。
ガイルさんがタロは心配ないからと言えば、その若い衛兵は漸く立ち上がりガイルさんの元へと向かうが、今度はガイルさんの顔を認めるなりその場で平伏してしまう。ガイルさんは早く降りたいのに「またか」とうんざりするが、今はそれどころじゃないと早く手を貸すようにと半ば叱責するように若い衛兵に頼んでやっと地面へと降り立つ。
すると他の衛兵も先程の
「はっ!」
「すまないが誰か兄に
「はっ、分かりました! おい!」
「はい、すぐに!」
ガイルさんがお兄さんである王様へと言伝を頼むと一人の若者が馬車に乗り込み走り出す。
「ん~普通なら、早馬なんだろうけど……ドワーフの人達じゃ難しいか」
「おい、聞こえているぞ」
「あ、ゴメンね。でもさ、車があればいいと思わない?」
「……ああ、お前の言いたいことも分かる」
「それにさ、車じゃなくても
「そうだな。それに関してはお前の知識に感謝だ」
「うんうん、だよね。でさ、出来たら俺も一つ欲しいんだけど、いいよね?」
「……」
「何?」
「いや、確かにコータの知識とカリナの発明が形になればコータ達に一台用意するくらいは容易いことだと思うぞ」
「なら「だから、それは兄が『うん』と言ったらの話だ」……えぇ!」
『
車が出来れば、次は
「まあ、そう心配するな。兄も王とは言えドワーフだ。イヤと言いたくても言えないだろうよ」
「そうならいいけどね」
「イヤに含みがあるな」
「だって、仲はよくないんでしょ」
「ぐっ……それを言われてしまうとツラいな。だが、任せろ。悪いようにはしないから」
「まあ、いいよ。ガイルさんがダメでもカリナがいるから、別に『
「コータ、それはないだろ」
「そう、思うのならちゃんとしてよね」
「……分かった」
ガイルさんには国王とケンカせずに作刀、車の作成が出来る様に頑張ってねとお願いするが、俺はふと不思議に思ったことを聞いてみる。
「ねえ、ここの人達ってさガイルさんを見て、すぐに『王弟』だ、『ガイル様』だって分かったよね」
「それがどうした? 当たり前だろうが! こんなイケオジを見て誰と間違うと言うんだ?」
「「「……」」」
「ん? どうした?」
「あのね……」
ガイルさんをガイルさんだと直ぐに認識出来るドワーフの人達って凄いなと思った。だってガイルさんは俺達の側にいるからガイルさんだって認識出来るけど、今ガイルさんを裸にして他のドワーフの人達の中に放り込んだら見付けられない自信がある。それは俺だけかなくアオイやカリナも同意見らしい。タロだけは匂いで判別が着くかもしれないが、『嗅ぎたくない!』と一蹴してしまった。
「おいおい、何を不思議そうな顔をしている。俺を見分けるのなんて簡単だろうが」
「ごめん、ガイルさん。俺にはムリ!」
「俺もだ。すまんな」
「私もムリかなぁ~」
『……嗅いでもムリかも』
「お前ら! それでも仲間かよ! 大体、カリナだってそうだろうが! エルフの中に埋もれたら俺だって見付けられない自信はあるぞ! ふん!」
「あ、確かに」
「ほれ、見ろ」
「コータ、ウソだろ」
「いや、だってさ……」
俺達がガイルさんの顔を判別出来ないと言えば、ガイルさんは俺達に「仲間じゃないか!」と訴えるが、どう言われようとムリなモノはムリだと答えれば、今度はカリナに対し「エルフだって同じじゃないか」と訴えるので、俺はそうかもとガイルさんの考えに乗っかればカリナが愕然とする。
だって、会話したエルフってまだ三人だし。その内、二人はエミリーさんとカリナの姉妹で残り一人は最初の街で会ったケリーさんだ。あの容姿って今、思えばエルフなんだよね。もしかしたら三人とも身内で三姉妹だったりしてね。
『肯定します』
マジか!
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