第2話 ナルシスト参上!!
「おい、おい、また遅刻かい?まったく、毎度の如く、それは美しくは無いねぇ」
「いや、オメェには言われたくねーよ。この自惚れナルシストめ。」
「ノンノン、私は決してナルシストではない。私の名はクライシスだ。次からはキチンとクライシスとそろそろ呼んでくれてもよいぞ?」
「あっそ。クラなんとか」
このナルシスト気味のやつは自称クライシスと名乗っている。しかし、あくまでも自称なので本当の名前は知らない。と、いうか誰もクライシスとは呼んでない。こいつの呼び名は気がついたら、クラなんとかと呼ばれることになっていた。
まあ、扱いはテキトーだ。だが、まあ悪いやつじゃ無い。ただナルシストすぎるだけで。
そして、授業を真面目に受けようとしていたところ、クラなんとかが俺の背中をポンポンと叩く。
正直言おう。あまり振り返りたく無いモノだと。何故ならこの後の展開が毎度の如く、俺にはわかるからね。
「あ、まずい。たまたまペンを家に忘れて来てしまった。ねぇアル、どうか友人の私に筆箱を貸してくれないか。」
やっぱりそうか。そう言えば、説明し忘れていたがこいつは何故か絶対に筆箱を持ってこない。すなわち、人から借りてコイツの単位は成り立っているわけである。
「心配しなくて良い。授業を終えたのちに、私がノートを見せてあげようでも無いか。」
自分は授業中に悠々と書いて、俺には休み時間死ぬ気でやれと言っているのかコイツは。そんな条件で飲むこむバカはいないと思うんだがな。
「なんで、俺が休み時間に寂しく書かないといけないんだよ。普通そう言うのって提案するなら明らかに逆だろう。」
「ふふふ」
うわっ、、、笑い方がちょっと......アレだな。ね?
「冗談さ。真に捉えないでくれ。」
和かで、尚且つグーで思いっきり殴りたくなる顔でクラなんとかはコチラを見つめてくる。
「それにしてもおまえ、筆箱いつ持ってくるんだ。無かったら結構困るだろ。提出物点にも響くしさ。」
「ふっ、いつもって来るかって?そんなの聞かなくても分かると思っただけどね。勿論、あしたさ。」
まるでキメかの雰囲気を醸し出しながらクラなんとかは、いつもの凛々しい表情でコチラを見つめてくる。
正直言ってキショい。
是非、俺をそちらの世界に巻き込まないで欲しいものだ。
ただ、俺は少し良い事を思いついた。
「そんなに貸して欲しいなら俺とゲームで勝負して賭けをしよう。」
「か、賭けだと?何の賭けなんだい?」
「ブラックジャックだ。」
「ブ、ブラックジャック!?」
ブラックジャックという言葉が、コイツのキャラに似合っている為、クラなんとかは思った以上に良い反応をしていた。
左手を顔に当てて、見ていられないようなナルシストさを発動させている。
「ふむ、なるほど。この私に賭け事を挑んでくるなんて。いいだろう。受けようその勝負。」
「因みに、お前が負けたら食堂のキツネうどんを奢ってもらうからな。それも、300円の大盛りをな。」
俺がそう言った瞬間、クラなんとかの表情が少し苦いものへと変わった。それもそのはず、コイツはこんな見た目でこんなキャラなのにも関わらず、万年金欠男なのだ。寧ろ金に余裕がある所を俺は見た事が無い。
おそらくコイツのことだから所持金も300円くらいな筈だ。だから、それをぜひ奪いたいものだ。
さらに言うと、コイツは賭け事が死ぬ程弱い。正直言ってセンスがないと思う。熱くなるとか、それ以前に何処か変な運を持っているようで、基本惜しい負け方をするのだ。養分だ。
「ふふふ、良かろう。私が負けるはずがない。やろうではないか。ブラックジャックを」
俺はトランプを机から取り出して完全に混ざるようにシャッフルする。そして、2枚を裏側にし、お互いの目の前へと置いた。
「私から見させてもらおう。」
くらなんとかはそう言いながらカードを2枚同時に勢いよく捲る。
「ふっはっはっ、きた。きたぞぉ。」
「くっ。」
クラなんとかが引いたカードは10とKだ。これを合わせると出目は20となる。21ピッタリが最強な訳だから実質的にはこの出目が二番目あたりに強いことになる。初手にしては厄介な手札を引きやがった。
「みろぉ、このクライシスは20だ!!どうだ、怖気付いたか?この平民め!!」
「ふん、だからどうした?寧ろ、そんな出目のままで大丈夫か?」
「なにっ?」
クライシスは明らかに動揺した声を上げた。てっきりそれで俺が焦るとでも思ったのだろう。しかし、俺は根拠のない自信に満ち溢れていた。今日は何となくツキが来ている気がする。
「ヒット!これで終わりだ。俺のカードはこれだ!!」
「.........」
「.........」
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