第10話 推しと手料理
会社でデスマーチから帰った夜。美来たんは約束通りに俺の家の前で待っていてくれた。
それが嬉しくて疲れなんて吹き飛んでしまうくらいに嬉しかった。それと同時に、こんな寒空の下で待たせてしまって申し訳なくなった。そうして今、家の中へ上げた美来たんにお風呂を貸し、今に至り、念願だった、美来たんからの手料理を作ってもらうことになった。
「さあ、夕食作っちゃうね!」
「うん、よろしく。俺は何をしたらいい?」
何か手伝った方がいいのか訊いてみる。
「佐藤さんは、適当に、くつろいでいて、ちょっと時間が掛かるからさー!」
「うん、わかった」
酔いが回ったのか、未来たんは少し陽気になつていた。可愛いな。
未来たんからの手料理、楽しみだなー!
未来たんはフラフラとした足取りでキッチンに向かい立ち調理を始める。大丈夫かな?
今夜は、俺のリクエスト通りに肉じゃがを作ってくれている。楽しみだ。具材を切ったりなど、下準備に取り掛かっていた。
俺は、スマホをポケットから取り出し、時間潰しに、WEB小説を読むことにした。
小説を読もうとするも推しが自宅で料理するこの嬉し恥ずかしこの状況で全然、集中できなかった。
キッチンでは、スエット姿の未来たんがキッチンで俺の為に手料理を作っている。
この状況はまるで、彼女が出来たみたいだった。推しが彼女になったみたいで、キュンキュンする。
しばらく経つと、キッチンの方から声がする。「あらかた調理は終わったよ。あとは落とし蓋をして、煮崩れしないように様子を見ながら、弱めの中火で、十〜十二分煮たら完成だから」未来たんは酔いが回った為、タメ口になっていた。
新鮮で、親しみを感じて嬉しかった。未来たんは煮ている最中、一、二回ほど、上下に具を返したりしていた。火のお通りを均一にしているのだろうか?
はい、できましたよ!」完成したのは、ホカホカと湯気が立ち上る肉じゃがだった。美味しそうだ。
「いただきます!」
俺は、お腹がペコペコだった。夜に会社で残業して夕食を抜いていたからな。もう、全開放だった。
「はい、いただきましょう」
まずは、ホクホクのじゃがいもから。を箸で割いて口に運ぶ人参、豚肉もいい味だ。シラタキにも味がよく沁みていい。ゆっくり咀嚼して味わう。しょうゆとみりん、砂糖が合わさって王道の甘辛しょうゆ味で味の黄金比率になっていて美味しい。
そうそう、コレコレ。やっぱり肉じゃがといったらこの味だよなー。白米がすすむすすむ。
おっと、一人食レポをしてしまったが未来たんを見るとどこか、ソワソワして俺の様子を伺っている。ああそうか。美味しいのは実際に、声に出して伝えてあげないとな。
「未来たん、美味しいよ。ありがとう」
心からの感想と感謝を告げる。
「よかった、お口に合って。男の子の胃袋を掴むには肉じゃがは鉄板だよね!」
未来たんは嬉しそうに微笑む。その笑顔がアイドルの時に見せる笑顔でなくて
素の彼女の笑顔で、ステージの上や握手会の時の彼女もいいけど、今目の前で
俺にだけ微笑む未来たんがすごく魅力的だった。
「はい、掴まれました」
やっぱり、好きな子から手料理を作って貰うのは嬉しい。
お昼に春風から作って貰った弁当を余裕で追い抜きベスト1になった。
でも、一つ、疑問が残る。そのモヤモヤを解明しないとこの優しやをどう受け取っていいか分からない。
「ところで未来たん、どうして俺に料理を作ってくれたりして優しくしてくれるの?」
それは、友達だからか、それとも……」
アパートに訪問してきて
夕食を作って貰うなど、まるで恋人のようだった。
でも、俺と未来たんは、友達のはず。こんな気持ちになるのは、いけないことだ。
「いいんです…わたしが佐藤さんに作ってあげたいからするんですよ」
「そ、そうなんだね」
正直、答えにはなってなかったけど、未来たんが俺の為にしたいって言うならいいか。
「でも、本当は……」
未来たんは、恥ずかしそうに、一生懸命言葉を紡ごうとしている。俺は彼女の言葉をゆっくり待って
「本当は?」と優しく言葉を返す。
さっきのは本音を濁して言っていたのかな?
「本当は、アナタが好きだから。電車で痴漢から助けて貰った時から好きでした…だから、わたしと…結婚してください!」
「え?」聞き間違いかな?付き合ってくださいじゃなくて?あと、プロポーズの言葉って
普通は男からしないかな?順を追って事を進めるなら、友達の次はお付き合いのはず。
これじゃあ、一から十まで吹っ飛んだみたいだ。この子は実は天然だったのか?!
「え?」
(今、なんて言ったっけ?ちゃんと付き合ってくださいって言ったよね?え…いや、まさか!)
「ごめんね!今のは言い間違いで、ほんとは……」
「いいですよ…俺を幸せにしてください。」
未来たんと結婚できれば、例え仕事が辛くても、アフター5は薔薇色で満たされる事だろう。
だから、俺を幸せにして欲しい。
「いいの?ていうか、それはこっちのセリフだよ」
「ごめん、間違えた、言い直させてくれ。俺が未来たんを幸せにするから俺と結婚してくれ!」
こうして俺たちは両想いの気持ちを伝え合った。
心臓が跳ねて暴れ出す鼓動がうるさかった。
***
わたしは、高校生の頃は、コミュ障で、人見知りの引きこもりだった。
毎日、自宅のパソコンで、アイドルのMVを観ては煌びやかなアイドルに憧れた。
こんな自分を変えたくて、憧れのアイドルグループ【⠀放課後シスターズ】
わたしも真凜たんみたいな、あんなアイドルになりたくて大手アイドルグループオーディションに応募した。結果は、落ちてしまった。そこで、諦めないで、色々オーディションでを受けていった。そんな時、放課後シスターズの追加メンバーオーディションの知らせを知った。運命だと思った。わたしは速攻、放シスのオーディションに応募して、見事合格した。
そして、わたしは、末っ子キャラの妹系アイドルになった。アイドルは、弱い自分を守る鎧。ステージ上では、ファンを魅了して陽キャなアイドルでいれた。
そんな恋を知らないわたしにも春がきた。
痴漢から佐藤さんが助けてくれた時、一目惚れしてこの人しかいないと思った。この人となら幸せな家庭を築いてみたいと思った。
あの時から抱いていた想いを佐藤さんに伝えることが出来た。告白するはずが意図せず、プロポーズしてしまった!酔いが回っていたせいだ!
絶対、バカだと思われたよーー!
でも、言葉にしたことは今更取り消せない。
次に佐藤さんに会ったらなんて顔したらいいんだろう。でも、佐藤さんの方からもプロポーズを返してくれて格好よかったなー。とベットの上で、ジタバタと悶えるのだった。
***
読んでくれてありがとうございます。
面白い、佐藤と未来たんの、これからの展開が気になると思いましたら連載版も読みにきてくださいよろしくお願いします。応援や★★★の評価されると励みになります
痴漢されている美少女を助けたら推しのアイドルだったー短編版ー 高月夢叶 @takatuki
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