第9話 社畜とデスマーチ

今夜は、未来たんが夕食を作りに来てくれるそれなのに定時の就業時間近くになってトラブルが発生した。明日、取引先に発注する資料に不備が発見されてチーム総出で修正作業に移ることになった。


「さ、佐藤くん、この後…残れる?」俺のデスクにチームリーダーの天城あまぎ先輩が

残業デスマーチの通達にきた。申し訳なさそうに確認を取ってきても彼女が死の宣告にくる死神に見える……

天城先輩は、俺の元、教育係で同じ部署の上司だ。


チームリーダーなのに人と関わるのが苦手なコミュ障なところがある人だ。濃紺のロングはヘアーを後ろでハーフポニーテールに束ねている大人なヘアースタイルだ。俺は、グイグイくる春風より好感を抱いてる。


なんせ、俺は、以前は、天城先輩のことを……いやこれはまた別の話だ。


「あの、これから大事な用があるのですが、どうしても残らないとですか?」

出来れば早く帰って未来たんのところへ向かいたい。

「え……どうしてもダメ、かな……」


おいおい、そんな悲しい顔をしないでくれよ!

そんなの断れるわけないだろ。

「わ、わかりました。残ります」

「やった!ありがとう、佐藤くん!」

天城先輩は嬉しそうに微笑む。笑うと可愛いなこの先輩。

「い、いいですよ別に、皆が頑張ってるのに俺だけ直帰することなんてできないですから。」


本当は帰りたくて仕方ないのを我慢して言う。


「っ~~今度、何かお礼するね!」

そう満面の笑みを残し天城先輩は去っていった。


「先輩、チョロっ!」

「うるさい、春風!早く仕事を片ずけるぞ!」

どうやら簡単に家には帰してくれないらしい。出口の見えない暗闇を進むしかない俺は、必死で仕事に取りかかった。


夕食なんて食べる暇もなく空腹に耐えながら必死に業務をこなした結果、定時を三時間も過ぎて二十時頃やっと仕事が終わった。


と、そこで、気付いた。む未来たんに仕事で遅れることを伝え忘れていた。


俺は、急いで未来たんにメッセージを送ると職場を飛び出し、自宅へと走った。


電車に乗り最寄駅で降りるも未来たんからの返信は無かった。俺は、必死で走った。怒って帰ってしまったんだろうか?こんなに待たせれば無理ないか。でも、もし、俺の帰りをずっと待っていてくれていたとしたら?


一月末でも寒さはまだ厳しい、雪こそ降っていないが外気は冷たい。俺は、帰路を急いだ。


自宅へ着く頃には二十一時近くになっていた。俺は、2階へ続く階段を登り、二〇二号室自室の前まで来ると、そこには扉の前で体育座りをして居眠りしている未来たんが居た。きっと、深部体温が下がり眠くなってしまったんだろう。こんなところで寝たら風邪を引く。足元には、今夜作ってくれるのであろう食材の入ったスーパーの袋が置いてあった。白いコート下はグレーのミニスカートだったことから純白のパンツがチラ見していた。男の性で三秒間釘付けになってしまい、被りを振って視線を逸らす。未来たんの肩に手を置き、優しく揺すってて起こす。



「未来たん、起きて。こんなところで寝たら風邪を引くよ。」



彼女はうっすらと瞳を開けてトロンとした眼差しで俺を見る。琥珀色の瞳に吸い込まれそうになる。



「お帰りなさい。佐藤さん、お腹空いてるでしょう?今すぐご飯作ってあげますから」


「遅れてごめん。仕事が長引いちゃってさ、こんなことなら事前に合鍵を渡しておくべきだったよ」


未来たんに寒い思いをさせてしまった。きっとお腹も空いていることだろう。俺は、未来たんを伴ってアパートの部屋へと入れた。


部屋は、1LDKになっていて生活にストレスを感じないように少しいい部屋にしてある。

「未来たん寒かったでしょ?すぐお風呂沸かすから温まって。風呂にする?それともご飯にする?」

早く、体を温めないと風邪を引いてしまう。


散らかっているリビングに通すが、こんな事ならもう少し、掃除しておくべきだったと後悔する。


「佐藤さん、それ、新妻のセリフですよ。わたしのセリフ取らないで!」


「いや、そういうつもりじゃなくて!風邪を引くと悪いから!いいから入って!」

俺のせいで、風邪を引かれたら申し訳ない。

「そ、そうですか?それなら遠慮なくお風呂頂きますね」

そう言うと未来たんは、脱衣所へと消えていった。


お風呂からシャワーの音が聞こえてくる。今、浴室で、未来たんが一糸纏わぬ姿になってると思うとドキドキする。推しの子が俺の家でシャワーを浴びているなんて、気が動転しそうだ。


「未来たん、俺のスエットだけど、着替え置いておくよ!」


「うーん、ありがとー佐藤さん!」と浴室からくぐもった声が聞こえる。

なんだか彼女をお風呂に入れているみたいでドキドキした。

「お風呂ありがとうね、いい湯だったよ!」



「未来たん風呂上がりの一杯は、ジュースがいい?それとも缶ビールがいい?」か聞いたら即答で、ビールと返ってきた。俺は、冷蔵庫から常備してあるYUUHIの缶ビールを差し出す。



「プハーやっぱりコレだね!」湯上りの缶ビールプルタブをプシュっと気持ちのいい音をたて開け、ビールを呷り、いい飲みっぷりにそう言う。

未来たんは、二十歳なのに中学生のように幼い顔立ちでその姿は未成年が飲酒しているようで、事案だ。まるで呑んべぇみたいだ。未来たんは、ビールをゴクゴクと喉を鳴らして飲むその度に彼女の胸元のお山が上下してこっちはドキドキして目のやり場に困る。のだった。























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