番外編3 和馬さんもう一度サンタになりたい

 「今年もクリスマスがやってきましたね、葵さん」


 「今年も来るだろうと思ってたけど、まさか下半身丸出しでやってくるとはね、性犯罪者さん」


 性犯罪者ではありません、サンタです。カズサンタです。


 今年もこの時期がやってきました。そう、クリスマスです。


 聖夜と書いて性夜と読むアレです。男の股間に着いているトナカイの角でズッコンバッコンするアレです。


 天気は晴れ。もう夜だけど、今夜は夜空に浮かぶ星星が綺麗に見えるほど雲一つ無かった。


 で、サンタコスした俺は愛している彼女たちのためにプレゼントを配りに来たのだが、なぜか葵さんの部屋で正座している。


 下半身丸出しの状態で。


 葵さんが冷えた目でカズサンタを見てくる。ちなみに彼女は寝間着姿だ。露出は大して無いんだけど、出るとこ出るスタイルだからエロスを感じてしまう。


 「ねぇ、カズ君ってクリスマス知ってる?」


 「それはもちろん。カップルがイチャイチャしまくって甘いひと時を過ごす日のことですよね」


 「うん。じゃあ二十四日の夜中に、私の部屋に忍び込んできたカズ君は何してたの?」


 「ですから、葵さんが寝ている間にプレゼントを、と......」


 葵さんは目が全く笑ってない笑みを浮かべていた。そこには少なからず怒りの色があるのは言うまでもない。


 「へぇ。カズ君は寝ている女性に精液をぶっかけたことを、“プレゼントを配る”と言い張るんだ」


 「......。」


 そう言った彼女は顔や髪に付着したドロドロの精液を、苛立ちながらティッシュで拭き取るのであった。



 *****



 「おはようございま〜す」


 時は遡ること、夜更け過ぎに俺が葵さんの部屋を訪れたときのことだ。


 俺はサンタのコスプレをしていた。世のイメージに違わず、真っ赤な衣装を身にまとっている。股間は常にトナカイの角が着いているから、一人二役って感じだけど。


 で、俺が事前に中村家ご夫妻の許しを得て、なぜここにやってきたのかというと、愛しい彼女たちにプレゼントを配るためだ。


 今年の葵さんへのプレゼントは電マだ。


 え、セクハラじゃないよ。よく肩こりをする彼女を思ってのプレゼントだよ。他意は無いよ。


 でも彼女にはこの小芥子みたいな物を和馬さんだと思って使ってほしい。ナニに、とは言わないけど。


 「すぅ......すぅ......」


 部屋に入ると、案の定というべきか、葵さんはちゃんと寝ていた。


 俺はそんな彼女が寝ているベッドの上に、できるだけ邪魔にならないところに電マの入った箱を置いた。その箱はプレゼント用にリボンが結ばれているだけで、特に包装なんてしてないのだが......。


 「すぅ......すぅ......」


 「......。」


 電マを使っている葵さんを想像すると......。


 そこで俺は気づいてしまう。股間のトナカイがいつの間にか角を硬くしていたことに。


 俺はズボンを抜いだ。


 そしてトナカイの角を擦った。


 んで、真っ白な初雪を思わせるサンタ汁をどぴゅった。



 *****



 「ということでして......」


 「いや全然意味分かんないよ!」


 「え? どこがです?」


 「全部だよ! 全部! なんの言い訳が始まるかな、と思ったら、ただただ衝動的にシコってたたけじゃん!」


 美女の口からシコるなんてお言葉をいただけるとは。


 正座している俺は反省しながら、トナカイの角をピコピコさせた。葵さんがその様を見てドン引きしていた。


 「な、なんでピコピコさせてるの」


 「まだ出し足りないな、と」


 「っ?!」


 葵さんはブチギレて、枕を俺に叩きつけた。


 「いた」


 「ほんっと信じられない! 全然反省してないじゃん! もういい!」


 それから彼女はこの部屋を出ていこうと、出入り口の方へ向かっていった。


 「あ、葵さん?」


 「お風呂! イカ臭くて仕方ないよ! 私が戻ってくるまでそこで正座してて!」


 「あ、ちょ」


 バタンッ。部屋を閉められてしまった。


 なんか怒らせちゃったな......。プレゼントが気に入らなかったのかな。


 「はぁ。ちゃんと反省しないとな。......よし、次行くか」


 ということで、カズサンタは次の部屋に向かうことにした。



 *****



 「おはようございま~す」


 「あ、兄さん」


 次にやってきたのは千沙の部屋だ。


 千沙は案の定というべきか寝てなかった。


 ふっつーにゲームしてた。千沙ちゃんは寝間着姿で、床に女の子座りして、ヘッドセットを着用して、テレビゲームをしていた。


 おかしいな。良い子は寝ている時間なんだけどな。


 千沙は俺が入ってきても驚いた様子を見せなかった。すごいな、こいつ。部屋にサンタ服着て下半身にチョッ○ー、じゃなくてトナカイの角を生やした男が来たのに動じないなんて。


 千沙がヘッドセットを外して俺の方へ向き直る。彼女の視線は俺のトナカイの角に向けられていた。


 「何しにきたんですか」


 「いや、この格好見ればわかるでしょ。俺、サンタじゃん」


 「性犯罪者にしか見えないです」


 うん。トナカイの角って言張るのそろそろキツくなってきたと思うよ。


 俺は白い大きな麻袋の中からとある箱を取り出し、千沙に差し出した。


 「?」


 「プレゼントだよ」


 「え、なぜ???」


 ん? なぜとは???


 あ、そうだ。思い出した。こいつ、この歳になってもサンタさんを信じちゃうタイプの人間だった。千沙のベッドの端にかけてある大きな靴下がそれを思い出させてくれた。


 ま、マジか。この調子だと、来年も信じてそうだぞ、こいつ......。


 俺は本気で訳わからないと言った様子の千沙に対して、なんと返答すればいいか迷い、挙げ句、正直に現実を語ることにした。


 「あのな、千沙。サンタさんは居ないんだよ。大体は一家のパパさんがサンタさんなの。今年は俺がサンタなの。カズサンタ」


 「はは。兄さんって偶に変な冗談を言いますよね」


 「いやだから......」


 「そもそも、サンタさんが下半身丸出しで、電マを堂々とプレゼントしてくるわけないじゃないですか」


 それはそう。俺は下半身丸出しだし、プレゼント用にラッピングされていない電マの入った箱を彼女に面と向かって渡そうとしている。


 どう考えたってサンタからかけ離れた行為をしちゃってるよ。


 千沙はカズサンタとの会話に飽きたのか、再びヘッドセットを付けてゲームの続きをした。


 俺は溜め息しつつ、千沙がサンタからプレゼントを受け取る用に用意していた靴下の中にプレゼントを押し込んだ。


 ちなみに葵さんと同じ電マだ。千沙も偶に肩こるって言ってたし、彼女によってプレゼントを分けるのはどうかなって思ったので、俺は葵さんに贈った物と同じ物を用意したのだ。


 「? あれは......」


 すると俺はこの部屋にある机の上に置かれていた物を発見して、動きを止めてしまった。


 それは一日分の洋服一式だ。綺麗に折りたたまれているから、たぶん洗濯した洋服だろう。そしてその積み重ねられた服の上には真っ黒な下着が。


 俺はおパンティを手にとって、広げて部屋の明かりに透かして見た。


 お尻の裾部分にレースがついているタイプだ。黒色だけど、こうしてみると透け透けだな。


 千沙め、こんなえっろい下着を身に着けていたなんて。けしからん。


 シュッシュッ。俺はいつの間にかトナカイの角を擦っていた。


 が、千沙に全く気づいた様子は無い。ゲームに夢中になっているところ悪いけど、お前のお兄ちゃん、お前のパンツでトナカイの角を硬くしてるよ。


 「すぅはぁ......すぅはぁ............う゛」


 そして俺は洗濯物を増やしてしまった......。



 *****



 「おはようございま~す」


 最後にやってきたのは中村家三姉妹の末っ子、陽菜が居る部屋だ。


 部屋の明かりは点けっぱで、陽菜はまだ置きているのかと思ったが、彼女はベッドの上で寝ていた。


 「っ?!」


 が、どこか陽菜の様子はおかしかった。


 なんせ陽菜は寝巻き姿......というか、透け透けのランジェリーを着ていて、ベッドに対して人は縦になって寝なければならないところを、横になって寝ていたのだ。


 自然と小柄な陽菜でもベッドから身体がはみ出てしまうかたちになる。はみ出ているのは頭だ。陽菜は仰向けになっているため、頭が下がっている状態になる。


 が、彼女は口を開けて寝ていたのだ。


 いや、もはや“寝ている”なんてレベルじゃない。


 こいつ......起きてやがる。


 「......起きてたのか」


 「起きてたのはあんたのトナカイ......むにゃむにゃ」


 「......。」


 いや、その寝言はさすがにキツイって。


 が、陽菜がちょうど良い高さに頭を下げた状態で寝ているので、彼女のえっろい服装も手伝ってか、俺のトナカイの角は完全にホーン○イントしていた。


 陽菜、絶対誘ってるよな......。俺が今年も来るって信じてたのか。


 俺は無言で麻袋の中から陽菜に渡すプレゼントを取り出し、その箱の中から電マを取り出して電源をオンにした。


 ブブブ、ブブブという心地良い振動を感じながら、俺は陽菜へと迫るのであった。


 もう肩こり解消のために彼女たちに電マをプレゼントするなんて、烏滸がましいにも程がある言い訳はしない。


 「メリークリスマス......」


 余談だが、後日、三姉妹から「あの電マ、気持ちよかった」という感想をもらうのだが、何に使ったのかまでは敢えて聞かないように努めるのであった。

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