第63話 共闘して倒すのはラスボス???

 「さぁ! 生徒会チーム、退場したメンバーの代役を補充して試合再開となりました! 桃花さん、この状況をどう見ますか?」


 「カオスの一言に突きますね。誰が予想できますか、高校の球技大会にJD二人が乱入するって」


 「ですがそのお二方は超絶美女のため、会場は歓喜で満たされております! どちゃシコ案件です! 私もどちゃシコです!」


 「先生、ここに不審者が居ま〜す」


 などと、実況二人がマイクを通して、不適切な発言を校内に居る者たちの耳に届ける。


 そう、俺ら生徒会チームは怪我をしたヨシヨシと保健室の先生である田所先生の二名の退場により、メンバーを補充して試合を続行することになった。


 補充したメンバーはなんとこの高校の生徒でも先生でもない。


 JDだ。


 どうゆうこと?


 西園寺 美咲さんと中村 葵さんという超絶美少女の二人組である。


 前者は去年の生徒会長だが、後者は我が校と全く関係が無い。陽菜の姉という点くらいだろう。


 葵さんがバツの悪そうな顔つきで言う。


 「ね、ねぇ。本当に私がやっていいの? こういうのって普通、在校生とかじゃない?」


 「そうなんですけど......周りを見てください」


 「え?」


 葵さんが俺に言われて試合会場を見回す。


 「うおぉぉお! 美女がバレーボールをプレイするなんて!」


 「しかも去年の生徒会長の西園寺さんが出るなんて展開熱すぎるだろッ!」


 「もう一人の女性もすっごい美人だわ!」


 「絶対!」


 「ああ、二人とも!」


 これら数々の声を聞いて、葵さんはなんとも言えない表情をしていた。


 自分が出ることに不満を持つ者が誰一人としていないのだ。それどころか、最後のやつなんて何が揺れるかを楽しみにしていた。


 いや、ナニが揺れるんですけどね。


 そんでもって敵チームのサトシも拳を固めて、独り言を呟いていた。


 「くッ! 俺には百合川さんがッ。しかしあの謎の美女も手に入れたい! いや、高橋の妹と思しき美少女も......」


 「ねぇ、カズ君、この学校にはまともな人居ないの?」


 「居ませんね」


 「即答......」


 ちなみに千沙は陽菜の隣で、陽菜と一緒に生徒会チームを応援してくれていた。


 「兄さん、頑張ってくださーい」


 「くそ! 高橋にあんな可愛い妹が居るなんてッ」


 「殺すッ」


 「俺のサーブで顔面狙ってやる!!」


 違った。敵に塩を送るクソ野郎であった。


 そしてチャラ谷がいつの間にか、葵さんの前に来て、彼女に詰め寄っていた。


 「ちっす。俺っち、赤谷って言うんすけど、よかったらこの後、打ち上げとか行きません? もちろん俺持ちで」


 「え゛」


 おい、人の女を目の前でナンパすんな。


 俺はすぐにチャラ谷の後ろに行き、奴のひょろっちい肩を掴む。


 にこにこと笑みを浮かべているが、俺の目は全く笑ってない。ドスの効いた声で告げる。


 「おいこら、葵さんは俺の女だぞ」


 「え?! たっきゃしさんの?!」


 「ちょ、カズ君、声大きいって!」


 葵さんは顔を赤くしながら、小声で俺に言ってきたが、チャラ谷が一歩身を引いて、頭を深々と勢いよく下げた。


 「さ、さーせん! たっきゃしさんの女とは知らず! 金輪際手を出さないと誓うっす!」


 「次、葵さんに近づいたらぶち殺すからな」


 「気をつけますッ」


 チャラ谷とは思えない誠意の籠もった返事である。


 それから美咲さんが俺の肩をちょんちょんと突いて言ってきた。


 「ねぇ、試合始めようよ。いい加減にさ」


 「......。」


 ということで、部外者に催促されてバレーボールの試合は再開した。


 幸いにも美咲さんと葵さんは普段着だが、スカートや露出の多い服装ではないので、動きにくいが参戦できる模様。室内用の運動靴は女子生徒からサイズの合う物を借りたみたいだ。


 サーブは相手から。しかもバレーボール経験者と来た。そいつはジャンプサーブで俺を狙ってきた。


 「生徒会長! 俺に妹さんをくださいッ!」


 などと、挨拶も込めてきて。


 俺は普通にレシーブした。


 「やらんッ」


 「会長、あげます!!」


 「ん」


 俺が副会長に繋げると、彼女は癖なのか、元生徒会長である美咲さんに向かって、慣れ親しんだ呼び方をしながら、そのボールをトスした。


 美咲さんはジャンプして、それを空中で捉えてスパイクを相手陣地に叩き込む。


 ボールは綺麗なV字を描いて、奥の観客席の方へと飛んでいった。


 ブザー音が鳴り響く。ほぼ同時に試合会場が沸き立った。


 「うおおお! さすがミス・パーフェクト!!」


 「すごいわ! 経験者相手に触らせないなんてッ!」


 「めっちゃ揺れたしな!」


 たかが一点だが、この盛り上がり様。そんでもって美咲さんのプレイにより盛大に揺れる巨乳を見て歓喜する、致し方無いオスども。


 当の本人は気にした様子も無く、副会長とハイタッチしていた。


 「いいトスだったよ。あとワタシはもう生徒会長じゃないから」


 「私の中では永遠に生徒会長ですッ」


 俺の前でなに言ってんだ、こいつ。


 そして今度はこちらがサーブをする番となった。


 葵さんである。


 彼女は苦笑しながら、投げられたバレーボールを受け取った。


 「う、うーん。私、あまり得意じゃないんだけど......」


 「カボチャだと思って思って打っていいですよ」


 「そ、そんなイメージで打てるようになるわけないじゃん」


 農家の娘に対して農家ジョークをすると、彼女は落ち着いた様子でツッコんでくれたので、どうやらそこまで緊張はしていないようだ。


 葵さんがボールをふわりと投げて、パシンッと平手打ちする。


 「えいッ」


 「「「「「かわいッ」」」」」


 くぅ! 本当可愛いな、このJD!


 葵さんが打ったボールは威力は弱かったが、普通に相手陣地に入った。


 そのことに満足したのか、彼女は「やった! 入った!」などと可愛らしくもガッツポーズをするものだから、たわたに実った彼女の巨乳がたぷんたぷん揺れる。


 それを見ていた男どもは、選手だろうと観客だろうと関係無く、葵さんに注目してしまった。


 だからか、相手は葵さんの弱々サーブに反応することができず、硬直してしまい、ボールが体育館の床を小突くのを許してしまう。


 少し遅れてブザー音が鳴り響いた。


 「「「「「あ」」」」」


 そして相手チームが漏らす間の抜けた声。


 「よっしゃぁぁぁあ! 葵さんナイスぅ!!」


 「え?! え?! なんで?! 取れそうなボールじゃなかった?!」


 「さっすが、たっきゃしさんの彼女〜」


 「すごい揺れてた......」


 「ほ、本当にこの高校の男どもは......」


 「さ、あと一本だ。気を引き締めていこう」


 ちなみに我が校の球技大会のバレーボール競技は、本来のバレーボールとルールが異なり、一言で言ってしまえば縮小版である。


 勝敗を決めるのは、どちらのチームが先に十五点を取るかだ。そんでもって二点差リードする必要の無いワンセットゲームである。


 こっちは十四点。


 相手は十四点。


 そう、泣いても笑っても次がラストである。


 葵さんが今更ながら、そのことを聞かされて驚いていた。


 「ちょ、え、これって十五点先手にゃの?!」


 あ、噛んだ。可愛い。


 「そうですよ、葵さんがミスしたら終わりですね」


 「責任重大じゃん! やっぱ間違えてるよ?! 部外者の私がゲームの勝敗を握っているなんておかしい!」


 「いや、仮にミスしたとしても、葵さんならおっぱい揺らせばワンチャンくれますよ」


 「やだよッ。彼女に何をさせる気なの!」


 うるせぇ。男を悦ばせるために生まれてきたような身体しといて文句言うなッ!!


 ということで、エキシビションマッチはラストプレイを迎えるのであった。


 

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