第27話 和馬さんはW巨乳JKに襲われた
「お兄さんの馬鹿ッ! 赤ちゃんデキちゃったじゃん!」
『ドッタンバッタンダダダ......ガチャッ』
「おいてめこら!! 三股彼氏の家の前で洒落にならんこと言うな!!」
「自分で三股って大声で言うのもどうかと思うよ」
俺は玄関で我が家にやってきたJKに怒鳴り散らした。
天気は晴れ。珍しく一人で学校から帰宅した俺は、本日の彼女当番である陽菜を伴っていなかった。
なんでも、友達と学校に残ってお勉強会するとのこと。
それで陽菜の帰りを待っていた俺だが、まさかの予期せぬ来訪者である。
「マジでやめてくれない?あんなこと人んちの前で叫ぶの」
「あはは」
「あははじゃなくて」
あられもない事を俺の家の前で叫んだのは、制服姿の桃花ちゃん。陽菜の親友だ。
この子はこうやって男が焦る言葉を、周りに居る人たちに聞こえるよう叫んでくるヤバい子である。
通称、“桃花爆弾”。爆弾を投下して俺の反応を楽しんでいるのだ。
マジでぶん殴ってやりたい。
この巨乳JKがッ!って言って、彼女のおっぱいをビンタしてやりたい。
おっぱい関係無かった。
「普通にインターホン鳴らしてくれよ」
「だってお兄さん、私が遊びに来たら居留守するでしょ?」
「するよ。お前、うちに来たらろくなことしないじゃん」
「インターホン鳴らしても結局出てきてくれないなら、出てこさせようとするのが米倉家の信条ですよ〜」
どんな信条? 一歩間違えれば警察沙汰だぞ。
JK孕ませたなんて、ヤリチンクソクズ野郎に磨きをかけるから、マジでやめてほしい。
とまぁ、桃花ちゃんはこうして、俺んちの前であられもないことを叫べば、家に入れてくれるとわかっているのである。
実際、俺もこれ以上目立ちたくないから、彼女の首根っこを掴んで家の中へ放り込んだ訳だし。
「で、何しに来たの? 今日は陽菜と学校に残って勉強するって聞いてたけど」
俺は陽菜から聞いていたことを、目の前の巨乳JKに問い質した。
「陽菜がさ、勉強しすぎて気絶しちゃったんだよね」
「勉強してて?」
「勉強してて」
さもいつものことのように、頷き返す桃花ちゃん。うちの彼女、そんなに勉強嫌いだったのね。
「でさでさ、全然起きてくれないから、陽菜をお兄さんの家まで送り届けに来たの」
「な、なるほど」
と、桃花ちゃんは言うが、彼女は自身のスクールバッグ以外何も持っていない。
未だニコニコと楽しげな笑みを浮かべている彼女は、言葉を続けてくれない。
陽菜を送り届けに来てくれたのに、陽菜がどこにも居ないんですけど。
「えっと、陽菜は?」
「運ぶの重たかったから、道中で代わりの人に持たせた」
「ふぁ?!」
ちょ、うちの彼女を荷物みたいに扱うなよ!
いや、実際荷物かもしれないけど!
「大丈夫だよ。安心して? お兄さんも知っている人に預けたから」
「え、誰?」
「悠莉」
俺は彼女の口から発せられた名前を聞いて、全力疾走で家から飛び出した。
百合川 悠莉。別名、レズ川 レズ。
絶対に彼女の身柄を任せたくない人ランキング一位の子だ。
何されるかわかったもんじゃない。
ちょ、マジでやめてよ。こんなかたちで寝取られとか嫌なんですけど。
俺のそんな心配を他所に、後ろからついてきた桃花ちゃんが声を掛けてきた。
「ま、待ってって。大丈夫だって、本当に。悠莉もそんな見境無い子じゃないから」
「んなわけあるか! あいつ、女の子の皮をかぶった和馬さんだぞ!!」
「それ自分で言うんだ」
自己分析は大切だからな。
が、そんな俺らの下へ、とある女の子が息を荒らげながらやって来た。
「ハァハァ......せん、ぱい。お届け、もの......です」
悠莉ちゃんである。
彼女は自身が背負っている人物を、乱暴に俺に預けてきた。
その人物とやらは陽菜である。具合悪そうにぐったりしていた。
「おま、大丈夫かよ......」
俺が陽菜にそう呼びかけると、彼女は顔色を青くしながら答えた。
「あ、安心して......勉強しなくても、和馬のお嫁さんになれるから......」
どこも安心できる要素ないよ。どんな訴え方してんだ。気持ちは嬉しいけど。
俺は陽菜を背負って我が家へ戻ることにした。
その際、疲れ切った様子の悠莉ちゃんと、相変わらず楽しげな笑みを浮かべている桃花ちゃんも伴うことになった。
W巨乳JK、帰ってくれないかな。
俺がそんなことを考えていると、桃花ちゃんが悠莉ちゃんに気になったことを聞いた。
「悠莉、弱ってる陽菜をよく襲わなかったね?」
その聞き方だと、さっき言ってた『安心して』が矛盾することになる。
そんな疑問を抱くくらいには、お前も悠莉ちゃんのことレズ野郎だと思ってんじゃねーか。
でも意外。俺も悠莉ちゃんなら陽菜を襲うと思ってたが、さっきの彼女の様子を見るに、普通に陽菜を運んでいただけで、特に陽菜の制服が乱れた様子は見受けられなかった。
「いや、襲いましたよ? 普通に」
襲ったんかい。
が、悠莉ちゃんは自身の片頬を指差して続けた。
彼女の頬は少しだけ赤く腫れていた。
「殴られました」
「「......。」」
レズ野郎、ちゃんとレズしてた件。これには思わず、俺と桃花ちゃんも黙り込んでしまった。
女の子の頬を殴る陽菜を責める気すら起こらない清々しさである。
「殴られたって、何したの?」
「“ひっぱい”を揉んだだけです。女子同士の軽いスキンシップですのに」
「悠莉のは軽くないからね」
女子同士はキャッキャウフフで軽い感じがするけど、それを悠莉ちゃんがやると、どうしても中年おっさんが息を切らしながらやるそれのようにしか思えない。
てか、ひっぱいって......。
「おま、陽菜に向かって“ひっぱい”とか言ったら、更に怒られるぞ」
「? “ひっぱい”は陽菜ちゃんのおっぱい、略して“ひっぱい”ですよ。貧乳のひじゃないです」
「......。」
マジか。こいつもそんな略し方してたのか。俺以外でそんな風に言うやつ居るとは思わなかったぞ。
さすが女の子の皮をかぶった和馬さんだ。
マジでこいつを野放しにしてると、いつか世の女性に迷惑をかけそうである。
俺はリビングに辿り着いた後、陽菜をソファーに寝かせて、W巨乳JKたちにお茶とお菓子を出した。
ぐったりしている陽菜には、俺が先程、ベランダから取り込んだTシャツを渡しておく。
陽菜はそれをぐったりしながらも、自身の鼻に当てて思いっきりスメルしていた。
まるでヤバい薬物を接種したかのようなアヘ顔っぷりである。
「「うわ......」」
そんな陽菜と俺のやり取りに、巨乳JKたちがドン引きしていた。
まぁ、うん、そう思うよね。わかる。俺も二人が居る手前、Tシャツを陽菜に渡そうか躊躇ったけど、こうすると陽菜はすぐに元気になるのだ。
原理はわからないけど、変態って何が燃料になるのか本当にわからないから。
「で、それ食って飲んだら帰ってくれるんだよね?」
俺が素っ気なくそう言うと、巨乳JKたちから猛反発を食らった。
「そんな! わざわざここまで来たのに、それはあんまりですよ!」
「そうだよそうだよ! せっかくお兄さんの家まで来たのに、何もしないで帰らせるなんて酷い!」
「いや、酷い目に合うのは、どう考えてもこっちなんだ」
「こんな可愛いJK二人を前に、そんな哀しい感想しか出てこないんですか」
「これはお兄さんが抱く私たちの印象を変えないといけないね!」
「正直に言おうか。帰ってくれ。頼むから」
俺がそう懇願しても、彼女たちは肩を組んで断ってきた。
こいつら、本当に仲良いな。厄介すぎて嫌になっちゃう。
そして桃花ちゃんが口を開いた。
「聞いたよ。この前、悠莉と陽菜でお料理対決したんだって? 卵焼き対決!」
「あの勝負は惜しかったですね〜」
俺は悠莉ちゃんのこの一言を聞いて、彼女をぶん殴ろうか葛藤した。
何が、惜しかったですね、だ。
どう考えてもお前の負けだわ。
二つの卵焼きを食べ比べして、味でどっちが作ったかを当てる勝負で、なんで食った人が気絶すんだよ。保健室に運ばれんだよ。
勝負にすらならなかったわ。
「そんな面白そうな対決、なんで私を呼んでくれなかったの!」
と、桃花ちゃんが俺に抱き着いてきて、当時の勝負の場に同席できなかったことを悔やんできた。
知らんし、くっつくな。胸押し付けてくんな。わかっててやってんだろ、お前。
勃起しちゃうから、シンプルにやめて。
「で、ですね。今日はせっかくですから、あの日の勝負を、今度は桃花ちゃんと私でしようと思いまして」
「っ?!」
俺は悠莉ちゃんの一言に絶句した。
マジか。こいつ、あの日の出来事覚えてねぇのか。俺がなんで保健室に運ばれたのかを覚えてねぇのか。
俺は桃花ちゃんを自身から引き剥がすことをそっち退けで、悠莉ちゃんの申し出を全力で拒否しようとした。
が、
「大丈夫、大丈夫。今日はちゃんと勝負になるよう、陽菜からレシピを授かってきたから」
「レシピ?」
え、陽菜から? なんで?
ソファーで未だに横になっている陽菜を見やると、彼女は親指をグッと立てていた。
どうやら桃花ちゃんの話は本当らしい。
「今から陽菜に教えてもらったレシピで料理するから、悠莉と私のどっちがその料理を美味しく作れたか審査してよ!」
などと、大きな胸を張って、決定事項のように宣言する桃花ちゃん。
斯くして、俺の意見は完全に無視されて、W巨乳JKによる料理対決が始まった。
あの、陽菜のレシピ通りに作って勝敗決めるってどういうことですかね......。結果、陽菜の腕の良さが示されるだけだろ。
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