第15話 目元にクマ。昨夜は何をシてましたか?

 「千沙ちゃん、お外が明るくなってきたよ」


 「?」


 「一時間だけでもいいから寝かしてくれない?」


 「すみません。日本語で話してください」


 「......。」


 天気は晴れ。俺が居る部屋の窓から見える外の景色は、薄っすらと明るくなり始めている。日の出を迎えたのだろう。


 そう、俺は今の今まで起きていたのだ。


 このクソ妹と一緒に。


 正確には寝かせてくれなかったという表現が正しいわけだが。


 千沙の部屋のベッドの上に二人で座り、テレビに向き直ってゲームばっかしている。男女がベッドの上に居たら、することは他にもあるでしょうに。


 日付が変わってしまったが、俺は昨晩、中村家で夕食をいただいた後、そのままこの家に泊まらせてもらった。


 いつものことだ。


 ちなみに夕食をいただいた家は南の方にある一軒家で、真由美さんや葵さんたちは普段はそっちで私生活を送っている。


 で、中村家にはもう一軒家あり、方角としては東に当たるのが、俺と千沙が居るこの家だ。


 元々は千沙が夜遅くまで起きてて、ゲームやら音楽の垂れ流しやらがうるさいから、南の家ではなく東の家に移動させられたのだが、今となってはアルバイトで来ている俺もこの家を使わせてもらっていた。


 バイト野郎は土曜日と日曜日の二日間、働かせてもらってるからな。優しい優しい中村家が、このままうちに泊まってけばいいじゃんと提案してくれたのだ。


 故に男女がひとつ屋根の下。こんなシチュ、どう足掻いたってパコる未来しか視えないのに、俺と千沙ちゃんは周りの人からそういう風に見られない。


 だって俺の相手が千沙ちゃんだから。


 たったその一言だけで尽きちゃう理由なのである。


 それにこれは千沙と交際関係になる前から続けてきたことだ。付き合い始めても周囲から浴びせられる視線は変わらなかった。


 『GAME OVER』


 「あ、兄さんのせいで終わっちゃったじゃないですか。また最初からやり直しですよ」


 「......。」


 若干一名、優しさを著しく欠いた妹は居るが、中村家は総じて優しい家庭なのである。


 無論、泊まり込みでバイトするからには、中村家での農業アルバイトは朝が早い。


 故にあと少しでバイト時間がやってくる。


 「なぁ、千沙。俺は中村家にアルバイトしに来ているんだぞ」


 「はい。知ってます」


 「お前とこんな徹夜してまで遊んでる場合じゃねぇんだ」


 「? 私はもう少ししたら寝ますよ?」


 俺が寝れねぇって話してんのよ。


 ほんっと道徳ねぇな、うちの妹。


 俺が不満そうにしていると、千沙がやれやれといった様子で言ってきた。


 「あのですね、兄さん。こんな完璧美少女である妹と翌朝まで過ごせるんですよ? 何が不満なんですか。喜んで付き合ってくださいよ」


 「......。」


 などと、妹は神かなんかだと思い込んでいる千沙ちゃんは、自分がどれだけ有り難い存在かを俺に説いてきた。


 そりゃあ俺だってこんな可愛い子と付き合えたのは素直に嬉しいよ。


 目元にクマができたって、辛うじて幸せだと言えるくらにはさ。


 でもこうも兄を蔑ろにするのはちょっとなぁ......。


 「はぁ......」


 「......。」


 俺が不満そうに溜息を吐くと、


 「えい」


 「うお?!」


 千沙が隣に居る俺を押し倒してきた。


 咄嗟の出来事で身構えることもできなかった俺だが、押し倒された先は彼女が普段使っているベッドなので痛みは無い。


 「ち、千沙?」


 何事かと彼女を問い質そうとしたが、それよりも早く千沙が俺の上に乗ってきてキスをしてきた。


 「ん」


 「っ?!」


 急にキスされたので、俺は目を見開いてしまう。


 数秒間、軽いキスをしてきた彼女は俺からそっと離れて言う。


 その表情はいつもの仏頂面とは一変して恍惚としている。それにどこか朱に染まって見えた。


 「、そうと言ってくださいよ」


 なにやら不穏な言葉が飛んできた。


 溜まってたって......アレのことですかね? 玉々に溜まっちゃうアレ。


 それに“兄さんも”って......。


 「言ってくれれば、ゲームなんかそっち退けで相手しましたのに」


 「あの、千沙さ――んぐ?!」


 「ん」


 俺が千沙を呼びかけると、彼女は再度、俺の唇に自身のを重ねてきた。


 今度は数秒間重ねるだけの軽いキスじゃない。激しくする方の重たいキスだ。


 千沙が舌を入れてきたので、俺はほぼ無意識に口を開けて彼女の舌が侵入してくるのを許してしまった。


 俺の上に居る彼女はその位置関係からか、舌を通じて彼女の唾液が微量ながらも入ってくる。


 美少女の唾液、いったいその市場価値はどれほどのものだろうか。


 そんな馬鹿なことを考えている俺は、息継ぎのために一旦離れた千沙が取った次の行動に驚愕する。


 「っ?!」


 千沙が俺の股間をパンツ越しに擦ってきたのである。


 「あ。兄さんの、もうおっきくなってますね♡」


 「ちょ、何してんの?!」


 「何って、これを期待していたのでしょう?」


 「俺は寝たいって言ってんだけど!!」


 「兄さんの兄さんは起きてますけど。ギンギンに♡」


 駄目だ。千沙ちゃん、さっきのキスでその気になってらっしゃる。


 バイト始まるまで時間はもうそこまでない。


 このまま千沙とエッチなことシちゃったら、絶対にヘトヘトなままバイトしなきゃいけなくなる。


 なんとかして彼女を鎮めねば。


 「はむ」


 「あぅ!」


 が、しかし、どういうことだろう。


 俺の下半身は脱いだはずがないのに、パンツを纏っていない真っ裸であった。


 彼女が脱がしたのだ、この一瞬で。なんて恐ろしい子......。


 そしてなんの防護結界も無い我が息子は、妹の柔らかな口の中に収まってしまっている。


 彼女の温かい口の中のぬくもりに当てられて、息子はガッチガチのバッキバキになっていた。


 「ま、待ってくれ」


 「? ふぇはよりフェラよりへへふぉふっはふぉうふぁふぃふぃでふは、手で擦った方が良いですか?」


 「咥えたまま喋らないでぇ!」


 千沙が愚息を咥えたまま喋るもんだから、その不規則な刺激で息子には大ダメージが入ってしまう。


 このダメージ量が一定数超えてしまうと、愚息はザー汁を放出しちゃうのであまり悠長なことしてられない。


 「千沙、一旦止まって!」


 「ふぁふぇなぜ?」


 「おふッ」


 情けなくもそんな声が漏れてしまう兄である。


 別に千沙とこういうことするのは初めてじゃないし、彼女が当番の日は割と頻繁に行われている性行為だ。


 ディープなキスとかフェラチオは珍しくないが、問題はこの先だ。


 このまま進んでっちゃって、俺があっさりと童貞を捨ててしまうという虞である。


 そこだけは超えないようにと、今日を生きてきた三股彼氏だ。


 守りたい貞操ではないが、それでもこんな彼女のエロに負けて捨ててしまうのは、あまりにも軽すぎるのではなかろうか。


 高橋 和馬。彼女たちを平等に愛する男である。


 「んッ......んッ......」


 「ふぐッ!」


 が、今は妹に好き勝手され放題の情けない兄と化していた。


 日に日に彼女のテクが上がってきて、ザー汁が男根の管の中を駆け上がっていく感覚を覚えてしまう。


 そしてついに――。



*****



 「はぁはぁ......やっと倒したか。手こずらせ、はぁはぁ......やがって」


 「あぅ......もう......らめ、です......」


 どれくらい時間が経っただろうか。


 性行為に走った俺は、千沙を満足させるまで必死に彼女の弱点を攻めまくった。


 彼女はというと、ベッドの上で情けなくもM字に開いた美脚をガクガクと震わせて、気絶しかけていた。


 セッ○スしていないのに、完全に事後の光景そのものだ。


 おかげで部屋の中は乱れた男女が放つエロ臭で満たされていた。


 「ああ、もう朝じゃないか......」


 俺は窓の外を見て、日が昇っている様を前に、独り絶望するのであった。

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