閑話 私の彼氏は・・・ 3

 「彼氏と最近どう?......と言われても、別に普通かなぁ」


 私、中村 葵は大学の友人とスマホで通話をしながら、家業に勤しんでいた。


 私の家は農家で、妹二人と父と母の五人家族だ。いつも賑やかな生活を送っているけど、最近は......いや、正確に言えば、二年前からそこに一人加わったことで、もっと賑やかな家庭になった。


 その加わった人物とは、私の彼氏である。


 彼より二つ年上の私は、今年の春で大学二年生になる。進学を目指す彼は今年受験生になるわけで、きっと忙しい一年になるに違いない。


 そんな私の彼氏は、なんと農家であるうちをバイト先に選んで、二年前からずっと働いてくれている。


 別にうちはアルバイトを募集してたわけじゃないんだけど、彼がうちで働きたいってお願いしてきたから、成り行きでバイトしてもらっていた。


 で、元々賑やかだった家庭が、彼のおかげで更に充実した生活を過ごせるようになったのである。


 それでいつの間にか、二つ年下の彼を好きになってしまって、交際関係を築いてしまった。


 「ふふ」


 なんだろ。まだ二年しか月日は経っていないのに、彼との日々を色々と思い出しちゃって笑ってしまった。


 ちなみに今、私が作業しているのはカブの収穫である。


 大きさは不揃いだけど、それでもまん丸で瑞々しいカブを収穫できたことに、私は満足していた。


 今は収穫したばかりで泥が付いているけど、水で洗い流せば、きっと真っ白なカブになるだろう。


 そんな日課のような家業に勤しんでいたら、暇を持て余していた友人から電話がかかってきたのである。


 私から何か面白い話が聞けると思ったのか、いきなり最近の交際状況を聞いてきた。


 でも特にこれといって話のネタにできるようなことは無いのだから、必然的に私の返答もつまらないものとなる。


 そんな中、相手からさらなる話題が飛んできた。


 「彼氏のどこが好き?」


 思わずそう聞き返してしまった私である。


 「う、うーん。格好良いところ......かな?」


 私がそう答えると、電話の向こうから舌打ちが聞こえてきた。


 そして、結局は葵も男は見た目で選んでいるのね〜、と言われてしまった。


 あ、あっちから聞いてきたのに、なんでイライラしているの......。


 「もちろん見た目も格好良いよ? ただ彼はそこだけじゃなくて......。何かに一所懸命打ち込んでいる様子とか、私が辛くて仕方がないときに頼ると力になってくれるところとか」


 私は続けた。


 「また、そこまで自分は真面目な人間じゃないって隠そうとする面も可愛くて......。上手く言えないけど、この人が私の彼氏なんだって自慢したいくらい、すごく......好きだよ。大好き」


 友人だからか、私は自分でも引いてしまうぐらい、正直に交際相手への思いを伝えてしまった。


 もう彼無しじゃ私は駄目かも、そんなことを再確認させられるような言葉を紡いだ気分である。


 そんな甘ったるい話を、私が止まるまで口にしたからか、先方はうぷっと吐き気を催したみたい。


 そ、その、なんかごめんなさい。


 そして最後に私は言った。


 「あ、あと、咥えきれないくらい、す、すごく長いところも......好き」


 電話の先で、相手が頭上に“?”を浮かべている様子が伝わってきた。こいつは何を言っているんだと言わんばかりだ。


 ま、まぁ、その、何がとは言えないけど、彼はナニが長いのである。

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