出会い
僕は案内された窓側の席に座る。元から何かを頼む気もなかったが倫理的なことも考えると1つくらい注文しておかないと気が引ける。立てかけてあったメニュー表の中を見ても特に飲みたいものも見つからない。僕はメニュー表の下の方に書いてあったフレンチトーストを注文した。普段からお弁当しか食べていない僕の舌にはあまり合わなかった。ほのかに香る甘さ、柔らかな食感。その全てがまるで店内で自分だけを孤立させるような感覚がする。昔から孤立してきた僕にとって慣れているはずなのにどうしてか心が痛んだ。雨模様も無くなり、フレンチトーストを食べ終えた僕は一目散にその店内から出ようとした。途中、担当してくれた店員とすれ違った。一瞬、珈琲の匂いが僕の鼻に入る。その時に気がついた。このお店に入った時に感じたあの匂いはお店に広がる珈琲のものではなく接客してくれた彼女の香水のものだと。そんな彼女をどこか魅力的に感じていたのだろう。それからしばらくの間ふと彼女のことを思い出す、そんな時がたまに訪れようになった。
いつものように僕は1週間分の食べ物を買いにコンビニへ来た。最近配信の調子も良くなくお金が足りなくなってきている。目に留まった張り紙にはコンビニバイトの募集のことが書かれていた。必要な書類をレジ袋の中のお弁当と一緒に持って帰った。氏名、学歴、理由の欄を記入してそのままレジ袋に囲まれた布団の中で横になった。
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